マコモタケの苗を知り合いから分けてもらえたので、1反ほどの湿田で栽培をはじめてみました。
いろいろと栽培のコツや課題も見えてきたので、今後も面積を少し広げて栽培したいと思っています。
ただ、一つだけ大きな問題があります。それはカルガモの大群やサギ類(コサギ、アオサギ)による食害で、苗を植え付けた後に、伸び始めた若い葉っぱを食われたり、葉が大きく茂って株元が太り始めた頃に、株元あたりを食いちぎられたりしました。
そのため、3分の1ほどの苗が育たず、また育った株も半分近くが株元の食害を受けてしまいました。
知り合いの農家のアドバイスを聞いて、途中から田んぼの中に篠竹を立てて、テグスを株の並びに沿って1.5m間隔で張ってみました。
当初こそ、効果が見られたものの、その後は竹の支柱が倒されたりして、効果が長く続きませんでした。
そこで、マコモタケの鳥害を防ぐにはどうしたら良いか教えていただけないでしょうか。
(長野県・柳沢孝浩さん/仮名・50代)
西嶋政和
マコモタケ専門家
マコモタケの植え付け時期を遅らせてみてはいかがでしょうか?
稲と同じように、マコモタケも植えつけた後の新芽が食害にあうことがあります。
しかし、私の住む三重県や台湾などでもカモやサギはいますが、食害を受けたと聞いたことはあまりありません。
ただ、苗を植えた時に、周辺に水稲などの美味しい食べ物が何もないと、マコモタケが集中的に攻撃され、新芽を食べられてしまう場合があります。
空から接近するカラスなどの大きな鳥に対しては、広がった羽の幅でテグスを張ることが有効なのですが、サギなどは水の中に入ることもいとわないため、畦の周りにも電柵のように、ポリプロピレン製のPPテープを張ることで食害を軽減できると思います。
ただし、カモなどの小型の水性鳥類は防ぎようがありませんから、生産者が小まめに追い払うしかなさそうです。
最近、岩手県農業研究センターが水田に飛来するウミネコやスズメを追い払う実証実験を行いました。大きさ20cmくらいの小型ドローンを、1日8回程度、水田上に定期的に飛ばしたところ、鳥の数が減り、欠株が減るなどの効果が見られました。一方で、超音波や爆音、目玉風船などに対しては、すぐ慣れてしまうようです。
とはいえ、誰もがドローンを持っているわけではありませんよね。
そこで、ご提案したいのは、マコモタケの植付け時期を遅らせて田植えが終わった後、周辺に食べ物が豊富にある時期に植え付けてみるという方法はどうでしょうか?
そのためには、前年の生産株の新芽が伸びた時に掘り取って苗を作るのではなく、前年の生産株の芽が動く前に掘り取って、土が乾いた後に、分割して苗代で作った苗を植え付ける方法です。(文末参照)
ただし、ひとつ注意があります。
ご相談者さんの圃場では、葉が大きく茂って株元が太り出した頃に食いちぎられたことで、3分の1ほどが欠損し、それ以外の株でも、半分近くが株元の食害を受けたということですが、株元が太りだした頃に株元あたりが食いちぎられるのは鳥害ではなく、サルやハクビシンなどの野生獣によるものと思われます。
三重県の山間部でも、サルに食べられたことがあります。野生獣は収穫時にも湛水しておくと防ぐことができます。
上左:新芽が動く前に掘り取って分割しやすいように土を乾かす。
上右:株を分割する。
下左:苗代にばらまき水を張って発芽させる。
下右:植え付け前の苗の様子。