数年前からときどきニュースなどでヤギやヒツジを草刈りに活用する試みを見かけます。
なんでも、彼らに任せれば勝手に下草を食べつくしてくれて、人手も薬剤も使わずに「エコ除草」ができるのだとか。
うちは傾斜地と平地が混在する山間で観光農園(りんご、柿、栗)をやっているのですが、ヤギもヒツジも癒し系なので、お客さんがいる間に働いて(下草を食べて)もらっても大丈夫そうですし、導入するのもいいなーと考えています。
また下草を食べるなら餌代もかからなそうだし、ヤギはヤギ乳、ヒツジは羊毛が採れたりして、副産物も魅力的。
そこで、もしうちの観光農園で導入するなら、ヤギとヒツジどちらが適しているか教えてください。
デメリットも知りたいです。
(群馬県・黒田さん/仮名・40代)
実盛忠義
岡山県赤磐市・岡中山間地域振興組合、熊山農産物直売センター
果樹園の下草を食べさせたいなら、地表面に近いところから食べるヒツジがおすすめです
私たち「岡中山間地域振興組合」では、組合が管理する放牧地や休耕田などにヒツジまたはヤギを放して草を食べさせています。
どちらを放すかは主に土地の形状に基づいて判断しており、ヒツジの場合は平地に、ヤギの場合は傾斜地に放すことが多いです。
またヒツジとヤギとでは、同じ草を食べる場合でも食べ方が異なっていて、ヒツジは地表面に近いところから食べるのに対して、ヤギは地表面から遠い部分を好んで食べるという特徴があります。
相談者は果樹園の下草を食べさせたいとのことですね。
ヤギは高いところにある餌でも後ろ足で立ち上がり首を伸ばして食べようとしますし、最近の果樹はわい化で小さく仕立てていることも多くあります。
したがって、果樹園に放した場合、下草だけでなく果樹の葉や木の皮なども食べられてしまうことが考えられますので、ヤギの放牧は向いていないでしょう。
つまり果樹園で使うのであれば、ヤギよりもヒツジの方が良いと思います。
肝心の効果のほどですが、私たちの組合ではヒツジやヤギを導入してから、草刈りは彼らの食べ残しを年1回刈るだけで済んでいます。
飼育する際の注意点については、ヒツジは年に1度、春先に毛刈りが必要です。
毛刈りをしないと病気になったり、雨に濡れた際に毛が重くて立てなくなったりすることもあります。
刈り取った毛はいわゆるウールですから、加工製品の原料として使用することができます。
そこで私たちの組合では、良質な毛がたくさん取れるコリデール種を導入して、組合員やその家族で加工・製品化し、直売所で販売しています。
ただし、放牧すると毛の中に雑草の種が多く混ざってしまうため、それを手作業で取らなければならないのがネックではあります。
ヒツジの管理は、意外と手間がかかりません。日中はひたすら放牧地の草を食べていますので、餌やりは栄養補給的な位置付けで1日1回(私たちの場合は夕方)、ひと握り程度の配合飼料(米ヌカを混ぜると良い)を与えます。
こうした餌やりによって人に馴れさせるほうが良いと思います。