ほうれん草、小松菜、春菊、チンゲン菜、水菜などの葉物野菜を中心に、大根、にんじん、ショウガなどにも力を入れて育てています。
これまでは野菜を真面目に栽培することのみ考えてやってきましたが、息子が後を継いでくれることが決まったので、これからは新しいことにも挑戦したいです。
最近は息子の助言で、すべての畑で有機JAS認証を取得し、そのおかげで新しい販路が生まれました。
また、いままでは余計な手間がかかるからと敬遠していたのですが、ネット販売にも挑戦していこうと取り組んでいるところです。
ネット販売ではできるだけ野菜の品質を落とさずにお客さまの手元に届けたいので、最大限の工夫をしたいと考えています。
そこで鮮度を維持する方法について質問です。
出荷前にいったん冷蔵庫で温度調整して出荷すると、鮮度が落ちにくいという話を聞きました。
夕方に収穫した野菜を冷蔵庫で寝かすことで野菜の熱が抜け、品質が落ちにくくなるらしいということなのですが、これまでは摘み取ったら、すぐに出荷することばかり考えていたので、正直、驚いています。
出荷前の野菜の冷蔵保存に関する方法や、温度設定などのコツを詳しく教えてください。
(宮崎県・井上さん/仮名・50代)
蛇岩真一
株式会社AGRIER・中小企業診断士
野菜の冷蔵保存は、「適した作物」と、「適していない作物」があるので注意しましょう!
北海道の上富良野で、農業ベンチャー企業の支援をしながら、自分でもにんにくを中心に作物を作って、生産者と消費者をつなげる「やさいバス」という事業展開に関わっているアグリエの蛇岩です。
最近は、産直サイトやスーパーの産直コーナーで野菜を購入する方が増えていますから、生産者がネット販売に挑戦することは、新たな販売先を開拓し、従来の販路よりも高単価で販売できることが多いので、とても良い挑戦ですね。
手間はかかりますが、同時にやりがいも感じられると思います。
その反面、産直サイトで販売する生産者が増えていますので、何かで差別化することが重要になっています。
そのひとつに、「朝採れ」など、できる限り新鮮な状態でお客さまのもとにお届けすることが、商品価値の向上につながります。
野菜は、収穫した後も生きて呼吸を続けていますので、それが品質劣化につながる一因になっています。
特に、ほうれん草などの葉物や、アスパラガス、スイートコーン、ブロッコリーなどは呼吸量が多いので、できるだけ呼吸量を抑えないと品質が落ちてしまいます。
そのため、予冷による品質保持が必要になってきます。
予冷せずに出荷用の段ボール箱に入れてチルド便で冷蔵車に載せても、ダンボールで保温されてしまうので、チルド便の意味がなくなってしまいます。
また、野菜が呼吸することでエチレンガスが発生しますが、これも品質劣化につながるので、予冷と合わせて対策が必要です。
例えば、鮮度保持袋は、野菜から発生するエチレンガスを吸着して品質劣化を抑える効果があります。
呼吸によって野菜の水分が失われることも軽減できますので、発送単位ごとに鮮度保持袋に入れてから予冷した方が良いでしょう。
鮮度保持袋は包装資材屋さんから入手できますが、JAさんや通販、百均でも簡単に手に入ります。
包装資材屋さんの場合、販売単位が何千枚以上などと大きくなることがあるので、最初は少ない単位で買えるところを探した方が良いと思います。
それから、野菜によっては冷やすと逆に傷みやすいものがありますので、注意してください。
ご相談者さんも栽培されているのでおわかりかと思いますが、ショウガは冷やすとぬめりが出て腐りが早くなります。
そのほか、カボチャ、ナス、キュウリなども冷やすと低温障害で劣化が進みます。
そのため、野菜セットで販売する場合は、予冷するものとしないものを分け、梱包する時も野菜同士が触れて冷気や熱が伝わらないようにしてみてください。
「新鮮なままお届けしたい」という想いは、きっとリピーターの増加につながると思います。