実家が農家で子どもの頃から家業を手伝ってきました。大学を卒業した後も5年ほど手伝っていたのですが、父親は昔から続けている作業のスタイルを変えようとせず、意見が衝突することが増えていきました。
最後は「ならば、お前一人でやってみろ!」という父からの言葉もあり、独立しました。
まだ独立して2年目ですが、小さいながらもハウスで中玉トマトを中心に育てています。他にはカラフルなミニトマト、大玉トマトなどが中心です。
父とはいろいろな面でぶつかっていたのですが、そのなかでもトマトの残渣の処理の考え方が180度違っていました。
父は病気の発生を防ぐという理由で、すべての残渣の処理を民間リサイクル施設に自己搬入していました。
しかし私はなんとかして残渣を再資源として有効活用したいので、すき込んだ方がいいと感じています。
独立した年には鋤き込みに挑戦できませんでしたが、今年は研究して、父にも胸を張って結果を見せたいと考えています。
トマトのすき込みのコツや注意点を教えてください。
(茨城県・菊池さん/仮名・20代)
北川清生
北川トマト
トマトの残渣を乾燥させ、粉砕機で細かく粉砕してすき込みましょう
トマトの残渣の処理は循環がベストな方法だと思っています。なぜならトマトを育てた養分が残渣に含まれているからです。
だから残渣は土にすき込むといいです。
ただし、トマトの残渣をハウスでカラカラに乾燥したものを鋤き込むには、粉砕機で細かく粉砕する必要があります。もし粉砕機をお持ちでなければ、レンタルも可能です。ぜひ試してみてください。
乾燥させるのではなく、生のトマト残渣を積み込んで堆肥にすることも方法の一つです。これは手間暇がかかります。
堆肥舎のスペース、切り返しをするショベルなどの装備が必要です。
どんなことでもそうですが、1〜2年で100%のことはできないので、できることから始めてください。自分を信じ、自分の描いたトマトづくりに励んでください。
吉田俊道
農業法人(株)菌ちゃんふぁーむ 代表取締役
有用微生物いっぱいの土壌作りを意識することが残渣活用のコツです
もし病気が出ていたら、その残渣を戻そうと戻すまいと、菌は1年以上休眠して残っているので、別の科の野菜を植えるしかありません。
病気が出ていなかったら、その残渣を元の場所に戻すことで、その場所のミネラル等の変化をやわらげることができます。
畑の地力は人間の腸内環境(フローラ)と同じです。
同じ食べ物でも、よく噛んで唾液としっかり混ぜて食べるといい便が出やすいですが、あまり噛まずに唾液の代わりに汁もので流し込むと、臭い便が出ます。
それと同じで、同じトマト残渣でも、それが畑の中で腐敗しないように手を加えてから畑に入れるのです。
私たちは残渣を乳酸発酵(漬け物)させてから土に戻しております。残渣を数十cm程度に荒く切って、米ぬかボカシと混ぜていったん密封させることで漬け物という腐る可能性がほとんどないものにしてから耕うんする方法です。
余力がないのであれば、ハンマーナイフモアを地上部すれすれに走らせて切り刻み、米ぬかボカシなどをふりかけてからトラクターで浅くすき込みます。深く耕すと腐敗しやすくなり、分解も遅くなります。
なによりも病気の発生を少なくするためには、有用微生物いっぱいの土作りを徹底することの方がとても重要です。
ミネラルも微生物も少ない土壌は、土壌消毒などをやらない限り、次第に病気が発生するようになります。その土壌消毒も緊急の対症療法でしかありません。
土壌消毒を繰り返していると、効果はなくなってきます。まずは有用微生物いっぱいの土壌作りを意識し、その上で残渣を元に戻し、有用菌だらけの土にしていってください。