山形県ではお正月やお祝い事以外でも、お餅をよく食べる文化が残っています。
これまで、うるち米を中心に作ってきましたが、数年前に親戚や家族に勧められて「もち米」の生産を試験的に始めたところ、お赤飯やおこわを炊くのに美味しいと好評です。
収穫量はまだまだですが、他の米農家と差別化を図るためにも、将来的には幻のもち米「女鶴(めづる)」にも挑戦したいと考えています。
一方で、お恥ずかしいですが、うるち米との違いに戸惑うことも多いです。
なかでも、去年、買ってくれた知り合いから「お餅にしたときに蒸しムラができて、加工しづらかった」と苦情を受けた時はショックでした。
自分のところで作っている「つや姫」を持っていってお詫びしたのですが、これから少量ずつ売っていこうと考えていた矢先だったし、代々続いた米農家としての自負もあったので、結構凹みました。
父に相談したところ、「(玄米内部に亀裂が入る)胴割が起きているんじゃないか?もち米はやめておけば?」と言われました。
確かにもち米は、うるち米より不透明なので、わかりにくいのですが、精米時にどんなことを気をつけたらいいのでしょうか?
胴割れ検査機ではわからないものなのでしょうか?
(山形県・大林輝樹さん/仮名・40代)
久保敬輔
株式会社ケツト科学研究所
もち米の亀裂はうるち米より難しいです。携帯型の胴割透視器がおすすめ
米の「胴割」は、一般的に刈り遅れや、乾燥させすぎなどが原因で発生するといわれています。
収穫直後は透明な外観をしていても、もち米を乾燥させる過程で水分を失って、白く不透明になる変化は「りょく化(ハゼる)」といいます。これは、もち米特有の現象ですが、「りょく化」させることに重点をおいて乾燥させすぎると、胴割粒や砕粒が発生するケースがあります。
胴割米を減らすためには、刈り取り時期や乾燥調製に注意していただくのが良いでしょう。
ご相談者さまがおっしゃる通り、もち米はうるち米と比べて不透明なので、蛍光灯などの光では胴割の判別が難しいです。
うるち米の検査手法はすでに確立されていますが、もち米については長年ありませんでした。
そこで、ケツト科学研究所では、農研機構食品総合研究所が考案したハロゲンランプと光学フィルターを使った検知システムをもとに、携帯型の「もち米胴割粒透視器TX-300」を開発しました。
もち米1粒ごとに、緑色高輝度LED光を当てることで、従来は難しかった亀裂が目ではっきりと確認できる判別キットです。本体に搭載しているルーペを通して見ると、より容易に判別できます。