父の代から農業を始めて、60年近く農家を営んでいます。
効率性を考え、30年程前からヘリコプターを使って防除を行なってきました。
今まで一度もクレームを受けることはなかったのですが、最近畑の近くに新しいアパートがたち、そこの住民から「朝からヘリコプターの音がうるさい」とクレームが寄せられるようになりました。
ヘリコプターでの防除は農林水産省の許可が必要で、厳しいチェックのなかで許可をもらって散布しています。
また、散布するときは風の状況を見て実行するかどうか判断しなければならず、農水省のガイドラインでも、危険や被害の防止に配慮して早朝などの時間帯に行なうことと指導されています。
アパートの住民に対しては、何度も挨拶や説明に訪れて、ほとんどの方にはご理解いただけましたが、一部の住民は「自分たちが留守の時にやれ」の一点張りで、ヘリコプター利用を理解してもらうことが厳しい状況です。
近所同士で揉めたくないと思いつつも、今までクレームもなく農薬散布ができていたのに、後から引っ越してきた住人が自分勝手なことばかり言って来ることにいい加減腹が立ってきました。
どのように折り合いをつけたら良いのでしょうか?
(山形県・後藤肇 さん/仮名・50代)
糸野隆雄
株式会社セキド 営業2部 農業ドローン担当
静音性が高いドローンなら騒音だけでなくメンテナンス費用も安くなります
産業用無人ヘリコプターの騒音問題は、近年かなり話題に上がるようになりました。
私はドローンを扱う会社に勤めていますが、相談者さんと同じように産業用無人ヘリコプター利用時の騒音クレームで頭を抱えているお客さまが相談に来られたことがあります。
毎年、産業用無人ヘリコプターを利用して散布代行業を行っていたのですが、近隣住民からの騒音クレームにより作業を中断せざるを得ない経験をされたのです。
そのお客さまは、共同防除ということもあり、農協の方や最終的には警察の方から近隣住民へ説得してまわって最終的には納得いただけたものの、説得まで丸一日かかってしまって、防除計画が大きくずれ込んでしまったとのことでした。
そのため、今年は産業用無人ヘリではなく農薬散布ドローンを使った防除に置き換えることに。その結果、騒音についてのクレームが起きなかったと感謝のお言葉をいただきました。
住宅地が近接している圃場などは特に騒音についての配慮が必要で頭を悩ませますが、そのような場所での農薬散布については、ドローンへの置き換えはある程度効果的なようです。
DJI製ドローンの場合は、プロペラやモータが独自の静穏設計になっているため、産業用無人ヘリに比べるとかなり音が静かになっています。
と言っても、完全に無音で飛行することはできませんので、近隣住民に理解して頂けるようコミュニケーションを取りつつ、最大限の配慮を行っている姿勢を示されることが大切だと思われます。
農業用ドローンは、静音性以外にもメンテナンスが簡単なので、年間にかかるメンテナンス費用がコストカットできます。また、精度が高い自動航行機能を持っているので、空散作業の完全自動化ができ、散布作業の大幅な軽減も可能です。
ともあれ、腹が立つ思いは充分に理解できます。その思いをバネに、ご自身の作業がより楽になる方法を実現しつつ、近隣住民の方への配慮も行えるドローンへのお置き換えについてぜひご検討いただければ幸いです。