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稲にいもち病が発生しました。対処法について教えてください

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稲にいもち病が発生しました。対処法について教えてください

福島県のオリジナル品種「福、笑い」を生産しています。しかし、いもち病が発生して葉が枯れてしまいました。

農薬の散布を検討していますが、何の農薬を散布すればいいのかわかりません。

今のところ、殺菌剤の「ブラシンフロアブル」や「カスミン液剤」などの散布を考えています。

また、現在では50株ほどにいもち病の症状が出ているため、刈り取った後で周辺にも散布しようと考えていますが、この方法は適切でしょうか。
それとも、刈り取りまでは不要なのでしょうか?
(福島県・池永享さん/仮名・30代)

佐々木茂安

日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント

いもち病対策は、予防か発生初期が肝心です

いもち病の発生は、生産者にとって、とりわけ東北地域では重要な課題です。

病害対策は、予防か発生初期に対処してください。

ご相談者さんが例示している「ブラシン剤」と「カスミン剤」には、病原体が1種類の薬剤に耐性を獲得すると、似たような構造をした別の農薬も効きにくくなる「交差耐性(交叉耐性とも)」があります。

そこで、「ブラシン剤」が効かない菌に対しては、「カスミン剤」で抑制し、反対に「カスミン剤」で効果がない病原菌に対しては「ブラシン剤」が効果を発揮します。

このほかにも、いもち病が発生してから、蔓延しないよう抑制効果が期待できる薬剤があります。

予防的効果が期待できるものに、「抵抗性誘導剤」という薬剤があります。

これは、植物に本来備わっている病原菌に対する免疫抵抗システムを活性化させる農薬で、薬剤耐性がつきにくいと言われています。

そもそも、いもち病は窒素肥料を使いすぎると、稲の抵抗力が弱まって発生リスクが高まります。

窒素過多以外の原因として、毎年同じように栽培していても、日照不足や、発根が良すぎたケースのほか、緩効性肥料の効果が現れた時の気温状況、ケイ酸成分の不足などによって、病気が発生しやすくなります。

「フジワン剤(イソプロチオラン乳剤)」は育苗期に根の活力を高める効果などで知られますが、いもち病に対しては予防的に使う防除薬剤なので、すでに病気が発生してしまった後は、使用を避けます。

先ほどの抵抗性誘導剤を別にして、毎年、いもち防除剤を使っている場合は、薬剤耐性がつきやすくなるため、同じ種類の農薬を連続で使わないようにしてください。

例えば、病原菌が植物の細胞に侵入しにくくさせる「メラニン生合成阻害剤」や抗生物質などは、薬剤耐性が心配されます。

過去には、「ストロビルリン系殺菌剤(Qoi剤)」の耐性獲得が問題となりました。

次年度以降の作り方として、肥料は、窒素・リン酸・カリウムの含有成分率が30%を超える高度化成肥料は避けるようにして、均一散布を心がけます。

さらに、もともと地力の高いところでは施肥量を抑えるようにし、土づくりはケイ酸成分を多めにして行うようにしてください。

いもち病がひんぱんに発生する常発地では、育苗箱施用剤の使用を検討してください。

なお、有機栽培の場合は、苗の段階から病気を持ち込まないように気を付け、発生したら食酢1%の濃度の酢酸を試してみてください。

食酢の効果は約1週間でなくなりますのでご注意を。

一方でいもち病が多発している場合は、次から次と感染する恐れがあります。

まずは、葉緑体など葉に含まれる窒素量を示す葉身窒素が3.3%を超えないように管理しましょう。

葉身窒素の確認には専門の計測器「葉身窒素測定器」を使うのが簡単です。

特に、価格が30万円前後と高価ですが、サタケ社製の「アグリエキスパート(CCN60001)」は、葉を傷つけずに、はさむだけで葉身窒素量が測定でき、施肥診断できるので便利です。

お持ちでないならば、「NDVI(植生指標)」と言って人工衛星のデータや、ドローンに取り付けた「マルチスペクトラルカメラ」でとらえたデータを使って、植物の光の反射率から、農作物の生育状況を把握する方法があります。

別売のNDVIカメラもありますので、アグリエキスパートに比べると、パソコンで処理する作業にかかるタイムラグはありますが、撮影後数時間以内に判定することも可能です。

アグリエキスパートをはじめとする窒素測定器は単葉測定、NDVIカメラは群落測定になりますから、所要時間を比較すると圃場で時間がかかるのは窒素測定器による測定、データ処理に時間がかかるのは、NDVIになります。

ですが、タブレットに解析ソフトをダウンロードすることで、現地でも結果が出せますから、圃場の状態を見るならNDVIカメラの方がおすすめです。

正確に分析するのであれば、両方で調べてみて誤差を比較すれば、より確かなデータになるでしょう。

参考までに佐々木農業研究会で測定しているドローンによるNDVI処理画像をご紹介しますね。

いもちの病原菌は、収穫した後の圃場で越冬はできませんが、稲わらを雨がかからない軒下などに保管したままだと、そこから感染する恐れがあります。

いもち病が発生した圃場の稲わらやもみ殻などは、圃場外へ持ち出さないようにしてください。

ただし稲わらやもみ殻を焼く必要はありません。

佐々木農業研究会

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