広島県三原市北部で5反ほどの広さのじゃがいも農家を営んでおり、春作で男爵イモを栽培しています。
農地の周囲は山間部にあり、周辺には田んぼや耕作放棄地が広がっている場所です。
気候変動の影響かわかりませんが、これまで山から降りてこなかったシカやイノシシが大量に出てくるようになり、農作物が掘り返され荒らされてしまっています。また、区画分けで設置していた柵も破壊されてしまいました。
これまでタヌキなどの被害はあったので、防獣ネットなど簡単な対策はしてきましたが、電気柵みたいな鹿や猪を対象としたものは、やったことがありません。
予算もそこまで出せないので、お金をあまりかけずにできる対策方法を教えてください。
(広島県・鈴木さん/仮名・30歳前半)
小川晴那
株式会社うぃるこ
長期的な目線でイノシシ対策について検討しましょう
イノシシから農地を守りたいのであれば、防護柵を設置することが確実です。また、防護柵を設置する際には市町村から補助を受けられる場合もあります。
例えば三原市では、受益者1人が申請をすれば防護策の設置に必要な資材費の半額以内(上限あり)の補助が受けられたり、受益者3戸以上の共同申請で上限額10万円までの補助などがあるようです。
お住いの市町村ごとで補助金などの制度は変わりますので、一度調べてみると良いでしょう。
また、集落内に受益者が3戸以上いる場合は、国の鳥獣被害防止総合対策交付金を使うと集落で共同申請することで資材費全額が補助されます。
ただし、国の補助金はそのまま何年間か使用しなければいけないなどいくつかのルールもあります。
どの補助金を使用するかは、お住まいの地域の鳥獣被害担当者にご相談するのが良いでしょう。
相談者さまが以前設置していた柵は破壊されてしまったという事を聞くと、ワイヤーメッシュの柵かトタンの柵かと想定いたします。
こういった触っても痛くない、イノシシにとって怖くない柵は、イノシシが何度もアタックできるという弱点があります。
動物のエサへの執着は私たち人間の想像をはるかに超えるものです。
そのため、私たち人間側も、毎日柵を点検して少しでも隙間やへこみができていたらすぐに修復する必要があります。
なるべく出費を抑えたいのであれば、今ある柵を修復して毎日の点検修復を行うことを徹底して使うのがいいのではないでしょうか。
使用している柵が電気柵の場合もチェックは必要です。毎日電圧をチェックし、電気柵がしっかり機能しているかの点検が要となります。
次は、「鹿や猪が大量に発生するように」なったという悩みについて解説いたします。
環境省のイノシシの分布図を見たところ、東広島市や安芸高田市では2000年よりも前にイノシシが確認されており、三原市には2010年代くらいから分布を拡大していました。
イノシシが最近になって出てくるようになった要因としては、イノシシの繁殖力と狩猟者の減少、中山間地の衰退等、さまざまなものが考えられます。
私たちのいる新潟県でも同様にイノシシ被害が拡大している真っ最中です。
特に相談者さまの山間部の耕作放棄地に囲まれている農地はイノシシの大好きな場所です。
残念ながら突然イノシシが消えることはないので、今の土地で農業を続けていくにはイノシシ対策が必須になると思います。
長期的な目線でイノシシ対策についてご検討いただけると幸いです。