宮崎県のいちご農家です。いちご一筋で30年。
50代になっても元気に働いております。
一年を通して年明けから6月頃までは観光いちご園の経営がメイン。
秋口から年末にかけては洋菓子店出荷用のいちご栽培に力を入れています。
いちご栽培はハダニやアブラムシなどの害虫対策が大きな課題です。
農薬を使わずに大事に目配せしながら育てるのがポリシーなので、いろいろと工夫を続け、新しい方法も常に取り入れる努力をしてきました。
ハダニは紫外光照射を取り入れ、天敵のカブリダニによって抑制できています。
しかし、アブラムシはなかなか思うように駆除できません。
非常に繁殖力が強くて駆除も手間がかかりますし、なによりも植物の汁を吸われてしまうので、いちごの品質自体も悪くなってしまい困っています。
やはり農薬の助けを借りようかと思っていたところ、「飛ばないテントウムシ」が開発?され、最近では通販で購入できることを知りました。
また、羽を一定期間だけ固定したテントウムシが考案されたという話も耳にしました。とても興味があります。
できれば自分でテントウムシを繁殖させたいとも考えています。
ぜひテントウムシの詳しい活用法や繁殖方法などを教えてほしいです。
(宮崎県・河野淑江さん/仮名・50代)
世古智一
農研機構 植物防疫研究部門
対策として、飛ばないテントウムシや生物農薬「テントップ」が販売されています
テントウムシにもいろいろな種類があります。アブラムシ対策には、肉食系のテントウムシでなければ効果がありません。日本全国に生息する「ナミテントウ」なら、施設野菜の病害虫であるアブラムシをたくさん食べる能力があります。
しかし、昆虫ですからハウス内に放しても、飛び去ってしまいます。そこで、農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)が自然界に存在するさまざまな個体から、飛翔能力が低いナミテントウを探しだし、30世代にわたって交配することで遺伝的に飛べないテントウムシの育成に成功しました。
さらに、餌などを工夫することで、効率的に飛べないテントウムシを増殖させる技術を開発し、2014年からは「生物農薬」として「テントップ」という商品名で販売されています。
飛べないテントウムシは、イチゴで発生するアブラムシにも有効だと利用されています。しかし、利用する際には注意が必要です。
1、必ずアブラムシが発生している株の上で放す(アブラムシがいないところでは有効に機能しない)
2、コレマンアブラバチと併用するのがおすすめ。先にコレマンアブラバチを放して圃場全体のアブラムシの発生を抑え、それでもアブラムシの発生が抑えられない時に飛ばないテントウムシを1平方メートルあたり10頭ほど放して防除する
3、アブラムシが増えすぎてから放しても(株あたりアブラムシ数が50頭以上が目安) 効果が期待できません。その場合、飛ばないテントウムシに影響が小ない「気門封鎖型殺虫剤(害虫の空気の出入り口をふさぐことで、窒息死させる薬剤のこと)」を散布してアブラムシ密度を低下させてから、飛ばないテントウムシを使用
4、飛ばないテントウムシなどの定着を促進させるために「天敵用餌ひも」「アブラバチ用バンカー」「アフィバンク」を用意する
5、他の病害虫防除のための殺虫剤については、飛ばないテントウムシやコレマンアブラバチに影響が小さいものを使用する
最後になりましたが、飛ばないテントウムシは昆虫ですが「生物農薬」です。農薬として位置づけられていますので、法律により自家増殖はできません。くれぐれも自分で増殖することはしないでください。