乳牛を120頭ほど飼育しています。
オーチャードグラスを栽培していた約6haの牧草地を、数年前に更新してチモシーを播種しました。
ところが、均一にチモシーが生えずに、ところどころチモシーによく似たシバムギなどのイネ科の雑草や、エゾノギシギシなどが生えて広がってしまいました。
エゾノギシギシは除草剤が効きやすいので絶やすことはできると思いますが、イネ科の雑草は地下茎で増えるので、除草剤で絶やすのは簡単ではありません。
こうした雑草を駆逐して牧草(チモシー)の密度を上げるために、何かよい方法はないでしょうか?
(北海道・山本金太郎さん/仮名・40代)
谷津英樹
雪印種苗株式会社 千葉研究農場 牧草飼料作物研究Ⅱグループ 兼 植物機能性研究Ⅱグループ
草地を作り直す更新時の耕運前の対策がポイント
北海道の牧草地では、ご相談内容のとおり「シバムギ」や「リードカナリーグラス」等の地下茎型イネ科雑草が問題となっていますが、牧草地において特定のイネ科雑草を選択的に枯殺する除草剤はありません。
そのため、草地を作り直す更新時に、いかにこれらイネ科雑草を枯殺するか?がポイントになります。
シバムギは、種子繁殖は殆どなく、地下茎での繁殖が主体です。
そのため、草地更新時の耕起前に「ラウンドアップマックスロード(日産化学)」等のほとんどの雑草の防除に効果がある非選択性除草剤を、農薬登録上の最大濃度(希釈濃度参考:https://www.roundupjp.com/products/maxload/weed/)で散布し、シバムギの地下茎を完全に枯殺させる必要があります(これを「耕起前除草剤処理」といいます)。
この場合、除草剤散布のタイミングが重要となりますが、詳しくは私が2019年に『牧草と園芸(第67巻第4号)』で執筆した「除草剤を上手に利用した草地更新・維持管理方法(北海道・東北地域向け)」の記事でご紹介していますので、ご参照ください。
一方、リードカナリーグラスは、種子および地下茎の双方で繁殖します。
そのため、草地更新時の耕起前に除草剤で地下茎を完全に枯殺した場合でも、耕起後、牧草播種時にリードカナリーグラス種子(草地で結実→落下した種子由来)からの発芽個体が発生します。
これら種子由来雑草の防除方法は「播種前除草剤処理」といい、この方法についても、上記の記事で紹介しておりますので、ご参照頂けると幸いです。