ミルキークイーンをメインに稲作を行っています。
水や肥料にもこだわり、酵母や乳酸菌などの微生物も取り入れながら、元気なお米を作っています。
いままでは大丈夫だったのですが、昨年ウンカによる坪枯れを起こしてしまいました。
ウンカを甘く見ていたせいもあるのですが、最終的には4割程度の収量減となりました。
農薬を使うのは本意ではないのですが、昨年まではエクシード剤を中心に、最小限の散布を行っていました。
今年も被害に遭うわけにはいかないので、田植え時から効き目が長く持続する農薬を使おうと考えています。
しかし、最近はウンカの抵抗力もアップしていると聞いています。
去年は5月後半にやってきたのですが、ウンカ(トビイロウンカ、セジロウンカ)の飛来も早まってきているように感じます。
ウンカ対策の薬剤や散布タイミングについて教えてください!
(三重県・中川さん/仮名・40代)
佐能正剛
大阪府環境農林水産部 農政室推進課 病害虫防除グループ
ウンカ対策はできるだけ新しく登録された薬剤を使うことを心がけましょう
ウンカは針状になっている口で稲の株元から養分を吸って生育不良を起こします。
主にトビイロウンカとセジロウンカ、ヒメトビウンカの3種類が被害を及ぼしますが、トビイロウンカとセジロウンカは越冬できないので、毎年6月下旬から7月上旬の梅雨時期に飛来します。
そのうちの偶然水田に着地したウンカだけが、株元に住み着いて産卵し、孵化した幼虫が第一世代、その孫が第二世代、ひ孫が第三世代として増殖していきます。
収穫期にあたる9月から10月には、大量に増殖した第三世代が吸汁しながら分散していきます。
ウンカの移動と共に、稲が同心円状に枯れる「坪枯れ」の被害が進むと、水田全体が枯死する最悪の事態に至ります。
ウンカの飛来は年によって変動しますから予測がつきにくいものです。
都道府県の病害虫防除所や農の普及課、JAなど関係機関が発信する情報に注意して、早め早めの対処をしてください。
農薬は育苗箱に施用する「箱施用剤」と水田に施用する「本田施用剤」の二種類があります。
飛来数が少ない年は「箱施用剤」だけでも十分ですが、飛来数が多かったり、飛来期間が長期に渡る場合は、「本田施用剤」も必要になります。
ご相談者さまは三重県ということで、大阪より田植えが1カ月ほど早いと思われます。
これまで本田施用剤のエクシード剤を使っていたのでしたら、田植え時に育苗箱に箱施用剤を施用することで害虫を長期間防除できます。
殺菌剤の混合剤を使うことで病害も同時防除することができますから、省力化にもつながります。
薬剤は地域によって取り扱いのない製品もあります。
大阪府では近年農薬登録された「トリフルメゾピリム成分」や「フルピリミン成分」を含む箱施用剤は薬剤抵抗性の報告もないので、高い効果が期待できるとおすすめしています。
具体的には、殺虫殺菌剤ならば「フルスロットル箱粒剤」や「ブイゲットフェルテラゼクサロンL粒剤」「サンスパイク箱粒剤」、殺虫剤なら「フェルテラゼクセロン箱粒剤」「リディア箱粒剤」などになります。
本田施用剤については、新しい有効成分として「フルピリミン」と「ベンズピリモキサン」を含む農薬も認可されました。
これらも推奨しております。
ウンカの発生源であるベトナム北部では二期作を行なっていることから、抵抗性を獲得して農薬が効きにくい世代が生まれています。
すでにイミダクロプリドや、チアメトキサム、クロチアニジン、ブプロフェジンなどの成分に対しては抵抗性が発達しています。
できるだけ新しく登録された殺虫剤を使うよう心がける必要があります。