ぶどう(ピオーネ、シャインマスカット)と梨(幸水、豊水、新高など)を栽培している果樹農家です。
2年前からピオーネの一部で環状剥離(果樹の樹皮を狭い幅で環状に取り除く栽培技術)を試していて、着実に着色促進の効果が得られています。
そこで、環状剥離をまだ行なっていない樹でも試してみようと考えています。
まだ梨では試したことはないのですが、梨でも環状剥離を行なうと品質向上など何らかの効果を得ることはできるでしょうか?
効果があるとすれば、主幹か成り枝か、どちらで行うのがよいでしょうか?
(山梨県・望月健太郎さん/仮名・40代)
橋本哲弥
橋本梨園
梨にも環状剥皮で一定の効果を得られるが、デメリットもあります
日本梨にも環状剥皮の技術は存在し、一定の効果は得られます。
ただ、いまだ広く用いられていない印象です。
ご存知のとおり果樹の環状剥皮には、
・側枝の花芽分化促進
・果実の着色・肥大の促進
・果実糖度の上昇……などの効果があります。
ブドウ以外にも、キウイフルーツや柿などでも用いられ、収量増や果実品質の向上に広く用いられています。
ただ日本梨では現場で用いられている事例をあまり見たことがありませんし、生産者同士でも話題にあがったことはほとんどありません。
見たことがあるのは、試験場や先進農家の圃場で、あくまで調査のために行われているものでした。
実際に研究・調査のほうは全国的にさまざまな品種で行われており、農業雑誌などでも紹介されています。
下記に記事へのリンクをいくつかはっておきますので、よろしければご覧になってください。
▼「日本ナシ”あきづき"の環状による側枝更新法」/宮城県農業・園芸総合研究所
▼「環状剥皮による‘なつひめ’の収穫時期の前進化」/鳥取県西部農業改良普及所果
▼「ナシ幼木に対する環状剥皮によるナシ萎縮病の腐朽長の抑制」/千葉農林総研研報報(CAFRC Res. Bull.) 11:23-28 (2019)
▼「なし「にっこり」トップブランド安定生産技術の実証」/栃木県農政部下都賀農業振興事務所
記事内容を見るとメリットもあればデメリットもあります。
(例)
・病気を抑制できたが、樹勢も抑制された
・果実の糖度は高まったが、肥大は抑制され、果実障害の発生率は上がった
・側枝基部からの新梢発生が期待できるが、処理時期が摘果の繁忙期と重なる
さらにあくまでも特定の品種に関する研究であって、全国の梨産地に適応するものかわかりません。個人的な印象ですが、他の果樹のように普遍的な技術ではないように思います。
以上のような理由から、環状剥皮を自園で行うならば試験的に導入することをおすすめいたします。
リンク先の記事や地元の普及員などのアドバイスを参考に、まずはお試しで実践してはいかがでしょうか?