黒毛和種の繁殖飼育をしています。
冬場を除いて放牧を行っていますが、放牧場にできたぬかるみや、雨が降った後にできたぬかるみを牛が踏みつけ、どんどん深く広くなってきています。
大雨が降った時には牛がぬかるみの泥にはまり、動けなくなっていることもありますし、以前、ぬかるみにはまって足を捻挫した牛もいます。
放牧地があるのは、ほぼ傾斜のない平らな場所です。
借地なので、大掛かりな排水溝などをつくるわけにもいきません。
簡単にできる排水対策があれば教えてください。
(群馬県・中島浩市さん/仮名・50代)
梨木 守
一般社団法人 日本草地畜産種子協会 放牧アドバイザー
ウォーターカップを設置してみてはいかがでしょうか?
放牧場内に設置されている飲⽔場周辺がグチャグチャに泥濘化しているものと想像しますが、こうした状態は他でもよく⽣じている問題です。
フロートが付いていても飲⽔容器から降⾬や⽜の水飲みによって⽔が漏れ出していること、また30アールの広さで上記の頭数では⽜の密度が⾼いこともあり、⼟が乾くことがなく、⽔⽥跡地で排⽔不良もあることから、泥濘化が助⻑されていると思われます。
しかも、湿った⼟を牛が常時こねている状態となって泥濘化してしまい、衛⽣⾯や⽜の安全性の点でも、物理的に歩⾏障害や四肢にダメージを与えるようなことが起こりかねないことを懸念します。
飼養頭数から考えると、対策としては⼀定の⽔圧がある⽔道⽔が使えるようなので、ウォーターカップ(カップ内のベロを⽜が押すと⽔が出てくるタイプの給水設備)を設置されるのがよいのではないでしょうか。
⽜が⽔を飲むときだけ⽔が出ますので、⽔のオーバーフローが防げます。
現在の飼育頭数からすると、複数個設置していただくのがよいと思います。
本体は 1個1万円前後です。
同じくウォーターカップの一種ですが、寒冷地でも凍らず、⽔漏れもしない不凍給⽔器は丈夫で、多頭飼育にも対応します。本体は10万円ほどですが、設置にはしっかりした⽔道⼯事が必要となります。
また、⽔を積んだ軽トラで給⽔したり、給⽔パイプで飲⽔場を移動できるようにしたりして、⽜が一箇所に集中しないようにするなども泥濘化に効果があります。
ただ、今回のケースでは30アールという狭い⼟地にしては飼育頭数が多すぎることから、おすすめできません。
さらに、飲⽔場に⽊製あるいは合成樹脂 のスノコを敷いたり、⾵化したカキ殻を敷いたりする⽅法が畜産関連の研究機関で開発されています。
ただし、屋外では効果が限定されること、また経費や耐久性、放牧圧の高さを考えると適⽤はできないでしょう。
たとえ飲⽔場周辺をコンクリートで固めたとしても、今度はコンクリート周辺が泥濘化するだけのことになるため、これらの方法もおすすめできません。
以上のようなことから、補助飼料を簡易⽜舎内で与えているとのことですので、30アールの圃場に隣接する⾬の当たらない⽜舎内に、ウォーターカップを設置されれば⼀番効果が⾼いと思います。
⽜舎内が狭くなったり、糞尿処理の問題が新たに出てきたりする可能性もありますが、検討されてみてもよいのではないでしょうか。