埼玉県秩父で旬の野菜を露地栽培で育てています。
自然が豊かで非常に良い環境ですが、寒暖差が激しい地域でもあります。
昨年、深谷市でオクラを栽培している農家が多いと耳にし、私もオクラ作りに挑戦しています。
栽培方法は一般的な慣行栽培ですが、5月初旬以降に種まきを行い、9月前半までに収穫を終えています。
しかし、時期によっては葉が黄色くなったり、「曲がり」などの変形が出てきてしまうことが少なくありません。
土壌に大きな問題はないので、寒暖差による温度低下をうまくコントロールできていないのが原因だと考えています。
オクラの露地栽培では、温度低下をどうコントロールすれば良いのでしょうか?
(埼玉県・森さん/仮名・30代)
五十嵐大造
東京農業大学国際食料情報学部 国際食料情報学部(前教授)
オクラの露地栽培にこだわるならば、生育に影響がない範囲で灌水を少なめにすることが考えられます
オクラは高温性で好光性のまさに夏の野菜です。したがって気温・地温ともに低温下では十分な生育が望めません。
露地栽培での温度低下にどのように対処するかという質問ですが、本題に行く前に地温がどうして上昇するかについて考えてみたいと思います。
地温を上昇させるにはまず、日射が十分差し込むことです。
これは誰でも容易に理解できると思います。わらを敷くと土に差し込む日射が遮られるので地温上昇が抑えられます。
次に土壌に含まれる水分が多いと、水分を蒸発させるためのエネルギーを消費するため、土壌水分が多いと地温の上昇は抑えられます。気化熱と似た仕組みですね。
後者についてはあまり実感がないかもしれません。薄っぺらなビニールで土壌表面を覆う(マルチする)と、土の温度は露地よりも圧倒的に上昇します。
この理由は、マルチによって土壌水分が蒸発することができなくなるからです。すなわち土壌水分を蒸発させるためのエネルギーが必要ないので、その分、地温の上昇に使われるからです。
土壌水分を蒸発させるために使われるエネルギーがいかに大きいかがわかります。
したがって、ご相談者さんの悩みには、できればマルチを敷くのが一番良い方法、と言いたいところですが、露地栽培にこだわるならば、日中はオクラの生育に影響がない範囲で灌水を少なめにすることが考えられます。
ただ生育初期の段階ですと、慎重に灌水しなければならないのは言うまでもありません。
気温についても触れておきたいと思います。空気は地表面から熱が伝えられます。したがって夏ならば地表に近いほど暑いですし、冬ならば逆に冷たくなります。空気そのものは直接的には温まりにくいものです。
気温についても地表温度に左右されますから地温上昇について述べたところを参考にしてください。ただし、風の影響により常に空気は移動しますから、単純ではありません。
5月になりますとかなり高温になってきます。相談者の方は関東地方ということで、5月になればオクラにとって十分な気温・地温になってくると思われます。
葉が黄色くなり、曲がった果実ができるということから、おそらく肥料不足が生じているように感じられます。露地栽培にこだわるのでしたら、施肥管理を見直した上で、5月過ぎに定植されてみたらどうでしょうか。