IT関連の仕事をしていましたが、地元に帰り農家へ転身して5年ほどになります。
露地栽培で多品目の野菜を作っており、規模は大きくありませんが、稲作もやっています。
いまは充実した日々を過ごしながら、育てた野菜や米を地元スーパーや道の駅などに出荷しています。
しかし最近、大きな悩みがひとつあります。
うちの集落では、動物による被害が多発しています。150センチほどの高さのフェンスと電柵を使って防いでいるのですが、サルなどが隙間から入ってきてしまいます。
小動物は地道にフェンスを確認して入り込まないように対処していくしかないのですが、さらに困っているのがヌートリアです。
ヌートリアはフェンスで防ぐことができず、雑草をできるだけ減らし、箱罠をしかけています。
しかし、被害が減らないどころか、ここ数年は急激に食害が増えてきた印象です。
もはや個人ではなく、仲間と力を合わせて用水路から徹底的に駆除するしかないような気がしています。
ヌートリアをなんとか駆除する方法があれば、教えてください。
(島根県・沢口さん/仮名・40代)
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
ヌートリアの対策には、侵入経路を特定して箱罠を仕掛けましょう
ヌートリアはネズミの仲間である齧歯類(げっしるい)で、年2〜3回、平均して3〜4頭の子を産む極めて繁殖力の高い動物です。
基本的に水辺にある巣穴を拠点に半径1km範囲で行動する動物ですので、水辺に近い場所で農作物の被害が出始めたら、まずはヌートリアがどこから侵入しているのか痕跡を探してみてください。
水かきのある足跡の間に尻尾を引きずったような線があれば、それがヌートリアの足跡です。
多くの場合、用水路や小川の側面に直径20〜30cm程度の横穴が見つかります。河川から上がる登り口を見つけたら、そこから畑にやってくる侵入経路に箱罠を設置するようにしてください。
罠に使う餌は畑で最も被害に遭うニンジンなどの野菜でいいと思います。
ご相談者様は畑をフェンスと電気柵で囲っているとおっしゃっていますが、もしかしたら大型動物用の仕様になっているのではないでしょうか?
ヌートリアは地面に近い低い体勢で移動します。電気柵の最下部が地面から離れていると、わずか20センチの隙間からでも侵入可能です。
そこで対策にオススメなのが、埼玉県の鳥獣害防除チームで開発した「楽落(らくらく)くん」(写真参照)という中型動物向けの侵入防止柵です。
畑の周りに支柱を埋め、その間を地面から33cm程度の高さまでネットを張り巡らし、さらにその上部5cm程度の位置に通電線(電気柵)を張ることで、ヌートリアだけでなくアライグマやハクビシンなどの侵入も防ぎます。
ただ、箱罠と侵入防止ネットの2つの方法は、集落全体に野生動物の餌になる農作物が片付けられていることが前提です。
まずは集落内に有害動物の餌になりうる食べ物(果樹や野菜)がないかを確認してください。
また、ヌートリアが水辺の巣穴から畑付近までトンネルを掘って地下を移動している場合は厄介です。
私たち専門家は、このトンネルのことを「ハッチ」と呼んでいます。
もし、相談者様の畑であまりにも被害が頻繁な場合は、「ハッチ」が作られていることを疑ってみてください。その場合は、地下から地上に出る上り口を埋める必要があります。