漁協が運営する直売所で働いています。
売り場に出るだけでなく、最初は不慣れでしたが、魚をさばき調理もしています。
新鮮な魚を求めて地元の方はもちろん、遠方からもお客さんがいらっしゃる、活気のあるお店です。
最近、テレビや雑誌で取り上げられる機会が増えた影響か「活け締め」や「神経締め」についての質問をいただくようになりました。
魚の鮮度を保つために有効な技術ですが、特に、遠くからお越しになる方から質問される機会が多いです。
頭では理解しているつもりですが、私も実際に漁師さんが締めるところは見たことはないので、正しい知識を持っているわけではありません。
手間のかかる作業だと思いますが、どのような技術なのでしょうか?
(静岡県・鈴木翔太さん/仮名・34歳)
本間俊輔
株式会社水土舎主任研究員
魚を獲ってすぐに殺すのが「活け締め」や「神経締め」。手間はかかるが利点も多いです
「活け締め」「神経締め」は、より長い間、おいしく食べるために魚を殺す方法のひとつです。
一般的に、獲った魚は魚艙(ぎょそう)という貯蔵庫やカゴ、氷入りの箱などに入れられ、窒息や冷却により息絶えます。これは「野締(のじ)め)」や「氷締め」と言われる方法で、スーパーや鮮魚店の魚のほとんどは野締めです。
一方で、獲ってすぐに殺すのが「活け締め」や「神経締め」です。具体的には、刃物などで生きた魚の脳などを破壊し脳死状態にしてから、動脈を切って血を抜き、脊髄に針金やワイヤーを通して神経を破壊します。高圧水流や空気で神経を抜く方法もあります。
その後は冷却し、保管します。一般的には、脳を破壊し血を抜くまでを「活け締め」、ここから神経を抜く処理を「神経締め」と呼びます。写真や動画入りの書籍や動画サイトで手順が見られますので、ご覧になってはいかがでしょうか。
活け締めや神経締めは、魚の身にある「アデノシン三リン酸=ATP」という物質(※生物のエネルギー源となる物質で、うまみ成分のもとになる)の分解を抑えられます。
これにより、野締めよりも長期間鮮度を保てて、生臭さを抑えつつうまみを増やせたりします。これらは昔から日本にある技術とされ、遠洋マグロ漁船で普及し、近年は和食文化とともに国外でも注目されるようになりました。
漁協直売所の活け締めや神経締めであれば、漁師さんが船上で締める方法と、活魚で販売し購入後に締める方法が考えられます。
後者なら、手間がかかり漁師さんの協力も欠かせませんが、お客の希望を細かに聞き入れられます。とはいえ、その価値が知られ、高値で売れるようになるまでには地道な取り組みとなるでしょう。まずは、漁師さんに相談することをおすすめします。