長崎県で養殖業をしていて、主に、サバやアジを養殖しています。
テレビで食中毒の原因として、時々、話題になるアニサキスについて悩んでおります。
アニサキスが寄生した魚を食べると、アニサキス症と呼ばれる激しい腹痛に襲われます。
このアニサキスは、天然魚だけでなく養殖魚の中にも寄生していて、割合としては特別多いわけではありませんが、10万匹に数十匹ぐらいの割合で寄生しています。
アジやサバ、カツオ、イカなどに寄生しやすいといわれていて、まさに私たちが養殖している魚がアジやサバですので、できる限り解決したい問題の一つです。
また、長崎県周辺では、アジやサバを刺身として生で食べるため、消費者の体調面、そして生魚で食べる文化を残していくためにも食中毒は防がなければいけません。
加熱するか、マイナス20度で24時間以上冷凍することで死滅することは知っていますが、冷凍すると魚の鮮度が落ちるので、できれば冷凍したくありません。
そこで、アニサキス発生の原因や予防策、また、殺傷できるエサや効果的な対策があれば教えてほしいです。
(長崎県・上村弘樹さん/仮名・40代)
吉江由美子
東洋大学 食環境科学部食環境科学科 教授
「アニサキス」対策には加熱処理されたペレットなどをエサにしましょう!
アニサキスの寄生場所は海洋哺乳類(イルカ、クジラなど)です。
これらの体内でアニサキスは産卵し、増殖していくわけですが、海洋哺乳類の排せつ物などを経由してサバやアジのエサとなるオキアミに住み着き、オキアミからサバやアジに住み着いていくという経路になります。
天然魚は生息している海域に海洋哺乳類が多く生息していると、そこでアニサキスをもらってきてしまうということです(いろいろ経由しますが)。
養殖魚はエサが加熱処理されているペレットなどであれば、エサ経由でのアニサキスの入り込み(卵か幼虫)は少なくなります。
一方、生のエサを与えていると、アニサキスは入り込む可能性があります。
そのため、対策としてはエサを加熱処理されているものに限るというのがひとつの案です。
すでに加熱処理されたエサのみを与えているのにアニサキスが多いというのであれば、養殖海面のエリアがイルカやクジラが多く見受けられるエリアであるため、これ以上の対応は難しいと思います(海に膜を張って小さな生き物の通過を防ぐことはできないので)。