北海道西部で、叔父夫婦が持っている10haの畑で大豆やじゃがいも、かぼちゃなどを作っています。
自分はサラリーマン家庭で育ちましたが、叔父さんにはあとつぎがいないので、自分と妻の二人で手伝っているうちに、最近では「お前に継いでもらいたい」と言われるようになりました。
自分は農業を始めてまだ数年と経験不足ですが、会社員勤めよりも合っているような気がしますし、何よりもこれまでの働きぶり認められたようで嬉しいです。
頼りにされていることは自信につながるものの、その反面、叔父も70近くなって体力が落ちてきていますし、叔父のサポートや見習いというこれまでの立場とは違うと思うと、もっと経営者としての自覚を持たなければ思うようになってきました。
というのも、数年前に叔父が病気で入院していた夏に、大豆畑でセンチュウが発生して、圃場の一部が丸くくり抜いたように葉の色が茶色くなり、収穫に影響を出してしまったからです。
その頃は、自分も農業を手伝い始めたばかりで経験が浅かったから仕方ないよ、と慰めてもらいましたが、このことがずっと心に残っています。
のちに被害の原因がセンチュウだとわかりましたが、うちはじゃがいもも作っているので心配です。
インターネットで調べたところ、センチュウ被害は数年に一度発生するということですが、土中に何年も生きていて、なかなか発見できない特徴があると知りました。
あんな思いをしたくないので、日頃からよく畑を観察するように心がけていますが、限界もあります。
また、センチュウには悪さをするものばかりではないことも知りました。
実は、将来的にあとを継いだら、今より農薬の使用を押さえた生産方法を試してみようと考えています。
どうやって予防対策を取ればいいのか教えてください。
(北海道・30代・小山仁さん/仮名)
豊田剛己
東京農工大学 農学研究院 生物システム科学部門 教授
線虫害の可能性が考えられる植物体の根を引きぬいて観察しましょう
まず「圃場の一部が丸くくり抜いたように葉の色が茶色くなり」との症状ですが、これはおそらくダイズシストセンチュウの被害です。
また、農薬の使用を押さえた農法を目指すということ、とても大切なことだと思います。
ダイズシストセンチュウはダイズやアズキ以外の作物を輪作することで、密度が減少しやすいので、連作せず、輪作することが線虫予防につながります。
アカクローバーやクリムソンクローバーは特にダイズシストセンチュウ密度低減効果の高い緑肥ですので、こうした緑肥を導入することで予防的な効果が高まります。
緑肥は、地力の向上や化学肥料の削減につながりますので、この点でも推奨されます。
ジャガイモも栽培しているとのことで、北海道ではジャガイモシストセンチュウが広く生息していますので、ジャガイモでも線虫被害が発生するかもしれません。
ジャガイモシストセンチュウはダイズシストセンチュウと異なり、輪作ではなかなか密度が減りませんので、線虫害がみられたら、「花標津」「ベニアカリ」「キタアカリ」といった抵抗性のジャガイモ品種を栽培する必要があります。
線虫害がみられなくても、抵抗性品種を時々栽培しておけば、予防につながります。
早期発見方法は、1か月あるいは2か月といった栽培の途中で、生育の良くない、あるいは、葉の黄化など、線虫害の可能性が考えられる植物体の根を引きぬいて、よく観察することです。
収穫期では、線虫のシストが褐変化して土壌になじんでしまうため、シストが形成されていても、肉眼で認識できないことがあるからです。その点、生育途中であれば、シストがついていれば、確実に肉眼で見ることができます。