新潟県で無農薬のお米や野菜を育てています。野菜は十数種類を露地で栽培してます。
基本的には自然の仲間である野生の動物たちとも共存共栄でいきたいのですが、あいつぐモグラの被害には堪忍袋の緒が切れました。
野菜の根は切ってしまうし、モグラが掘った穴のせいでネズミが縦横無尽に出没するようになっています。
いままでに音や振動、ニオイでモグラを撃退をしようと試みてきましたが、効果は一時的なもの。
数が多いわけではないので、根本的に捕獲して退治するしかないと考えています。市販のモグラ取り器などもありますが、うまく捕獲する道具やコツを教えてください。
(新潟県・長谷川さん/仮名・40代)
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
モグラ退治は長期戦。根気よく採食用の穴を潰していくことが重要です
モグラは身近な存在ですが、対策が難しい動物です。田畑に影響を与えるモグラは、東日本ではアズマモグラ、西日本はコウベモグラが中心となります。
それぞれの生息域の境界は、静岡県と神奈川県の県境、内陸では長野県の中部あたりです。
コウベモグラの方がアズマモグラよりも若干大柄といった体格の違いはありますが、見た目も似ているので、両者の対策は変わりません。
モグラはミミズや昆虫などをエサとする肉食動物なので、農作物への被害は間接的なものです。
よく「モグラに根をがじられた」などの問い合わせがありますが、ご相談者さんもおっしゃるとおり、モグラの掘った穴から侵入したネズミの仕業であることがほとんど。
このような穴は、地表面から比較的浅い場所につくられます。多くの方がモグラのトンネルとして認識している採食用の穴です。
採食用の穴は作物の株元を浮かして生育に悪影響を及ぼすうえ、ネズミの侵入を容易にしますから、見つけたらすぐに潰さなくてはなりません。
とはいえ、堆肥などの有機質を入れた土壌など、ミミズが多く生息している場所ですと、潰してもまたすぐに侵入されてしまいます。
なぜかというと、採食用の穴はモグラの本道ではなく、あくまでも仮設道だからです。モグラにとっては、採食用の穴を潰されても一向に困らないのです。
ただ、ひんぱんに潰されると、その圃場はエサ場としての優先順位がだんだん低くなっていきますから、モグラは新たに穴を掘らなくてはなりません。
モグラの立場に立って考えてみれば、地面の表層近くの柔らかい場所であっても、掘るのは重労働です。
したがって長期戦にはなりますが、採食用の穴を見つけたら根気よく潰し続けること。これでモグラの侵入を抑えることができます。
ご相談者さんは音や振動、ニオイで撃退しようと試みてきたようですが、やはりモグラ対策は簡単には解決しません。
さて、モグラにとって最も重要な本道についてお話しします。本道の深さは土壌条件によって変わりますが、礫層や岩盤が深い場所では2メートル近い深さまで掘られている場合もあります。
ですから、仮に1度でも本道をつくられてしまうと、モグラにその道を使えなくさせるのは至難の業です。いくら地表の穴を潰しても、本道がある限り、採食用の穴が無くなることはありません。
侵入が繰り返されるだけですから、こうなってしまうと、いよいよモグラの捕獲に本腰を入れる必要があります。
頭の痛い問題ではありますが、縄張り意識の強いモグラは、ひとつの穴を複数のモグラが共有することはありませんから、1頭捕獲するだけで被害が止まる場合があります。
モグラを捕まえるには、採食用の穴に筒状の捕獲機を仕掛ける方法が一般的です。
この場合、土を掘りやすい柔らかい場所より、若干硬めの場所に掘られた穴の方が向いています。なぜなら柔らかい場所に捕獲機を仕掛けても、そこを避けて新たな道をつくってしまうからです。
もうひとつの裏技として、モグラがひんぱんに通っている穴にコンパネ(コンクリート型枠用合板)などの板を置く方法があります。しばらく置いておくと、板と地面の間に道ができますので、板を退かすと道がはっきりと見えるようになるはずです。
この道に捕獲機を仕掛ければ周辺土壌にあまり触れずに罠を設置することができます。
この方法ですと、臭いや形状の変化に敏感なモグラを捕獲しやすくなります。しかし、せっかく捕獲しても新たな個体が入ってきます。
すでに本道が作られている場合は、比較的早いタイミングで新しい住人が決まります。モグラ退治は非常に厄介ですが、根気強く続けていくことが大事です。