山梨県で、冷涼な気候を活かしてレタス、白菜、キャベツ、ブロッコリー、グリーンリーフなど、多彩な高原野菜を育てています。
とくに高原レタスは、新鮮なまま朝採りで出荷するのが自慢です。
ただ、どうしても梅雨や秋雨の時期になると腐敗病が発生してしまいます。ここ数年は被害も大きくなってきているのが悩みです。
もちろん強風になりそうな時など、作物が痛みやすい状況には気を配っています。トンネルを使うときにも、換気に気をつけています。しかし、なかなか完全な防除は難しいです。
予防として銅剤を散布していますが、イチから防除を徹底的に見直していきたいと考えています。
レタスの腐敗病を防ぐ方法を教えてください。
(山梨県・田中さん/仮名・30代)
五十嵐大造
東京農業大学国際食料情報学部 国際食料情報学部(前教授)
レタスの腐敗病対策は育苗から定植まで苗が傷つかないように扱い、予防的に銅剤を使うこともおすすめです
腐敗病は夏から秋にかけてだけでなく、冬季でも発生します。
その原因は「シュードモナス・チコリ(Pseudomonas cichorii)」「シュードモナス・マージナリス(Pseudomonas marginalis)」「シュードモナス・ビリディフラバ(Pseudomonas viridiflava)」など「シュードモナス属」の細菌です。
私も神奈川県園芸試験場で研究員だった頃に、冬季のキャベツで発生した腐敗病の防除の研究に関わったことがありますが、病原菌の正体は「シュードモナス属」の「ビリディフラバ」と「マージナリス」でした。
冬の低温にさらされたことが原因の凍害によって、キャベツの結球葉の細胞が損傷した部分に病原菌が侵入・繁殖して、腐敗病に至ることがわかりました。
一方で、健全な葉に病原菌を処理しても、ほとんどの場合、病気が発生しないままでいることも明らかになりました。
ご相談者さんとは、レタスとキャベツの違いはありますが、腐敗病のメカニズムは共通しているものがあろうかと思います。
夏の高原レタスの場合、凍害ではありませんが、目に見えないほどの物理的な傷など細胞が損傷している可能性は大きいと思われます。
菌が侵入すると、被覆しているトンネル内の高温や多湿状況によって病気の進行が早まります。
そこで対策ですが、まず育苗から定植にかけての工程で、苗が傷つかないよう丁寧に扱うことに注意し、結球開始前から予防処置として銅剤の薬剤散布を試してみてはいかがでしょうか?
銅剤は細菌に対する予防効果が見込める可能性があります。あわせて地元の防除歴も参考にしたうえで、夏季の高温多湿を防ぐために換気に気をつけてください。