5年ほど前から、有機農法で30種類ほどの季節野菜を育てている農家です。
ここ数年、収穫前の地中のサツマイモや、袋詰めする前の保存蔵にある作物をネズミが食い散らかす被害が続いており、とても困っています。
試しに罠をしかけてみたところ「ハタネズミ」がかかりました。
どうも、ワラや落ち葉を微生物が分解するときに発生する熱を利用して育苗する「踏み込み温床」が保育場になってしまっているようなのです。
見た目はかわいらしいハタネズミですが、このままでは衛生的にも問題があると思うので、なんとか被害を食い止めたいのですが、どんな対策が効果的でしょうか。
近所には小さいお子さんや地域で可愛がっているネコもいて、畑や保存蔵で遊んでいることがあるため、誤食の心配がある殺鼠剤は使えません。
また、トラクターで耕したり、野焼きをしたりといった、直接殺すような手段は取りたくありません。
(千葉県・林さん/仮名・40代)
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
繁殖場所をなくした上で、モグラの穴を埋めて、箱罠を仕掛けましょう
相談者さんはハタネズミによる被害であると名指ししていますが、これは確定でしょうか?だとすると、ハタネズミは自ら穴を掘って移動しますから少々やっかいです。
ただ、穴の深さは30cm程度までとそれほど深くないので、踏み込み温床の囲いに沿って長さ50cm程度の障害物を垂直に埋め込んでおけば、侵入できなくなって繁殖場所をなくすことができると思います。
もしもアカネズミが犯人であれば、作物の直下に掘られたモグラの穴(通り道)を利用して移動するので、それを埋めることで被害を軽減することができます。
加害している個体を駆除するためには、小型の箱罠を仕掛けて捕獲するしかないでしょう。
捕獲する際に入れておく餌は、現在被害に遭っている作物(今回のケースであればサツマイモ)が効果的です。
また、箱罠を使用するときには、箱罠に仕掛けてある作物以外の餌を食べられない状態にしておかなければなりません。
ハタネズミにかぎらず、ネズミの仲間は環境が整うと周辺からの流入が激しくなります。
そうなると捕獲するだけでは追い付かなくなる可能性がありますので、被害の拡大を防ぐためには保存蔵内の作物の置き場所を再検討する必要もあるかもしれません。
山川 理
山川アグリコンサルツ代表、農学博士
踏み込み温床の周りをネットでしっかりと囲って防御しましょう
野ネズミはドブネズミ(イエネズミ)より小さくてかわいいのですが、農家にとっては大敵です。
サツマイモに対する野ネズミの被害は特に深刻ですよね。私も、葉を使った踏み込み温床を3年ほど経験した後、苗床に侵入した野ネズミに種芋をすべて食べられてしまった苦い経験があります。
それがきっかけとなって、以降は踏み込み温床を作ることは止めました。ただし、相談者のケースでしたら、苗床の周りをネットでしっかりと囲えば被害を防げるかもしれません。
野ネズミはモグラの穴を住みかとして、地中の浅いところにある作物を食べますので、サツマイモは地上から見えないよう畦の中に隠しておいてください。
私は落花生を収穫して畑に干している間に食べられたこともあります。なお、モグラは肉食ですので、サツマイモも落花生も食べません。