北関東で野菜農家を営んでいます。
葉物の路地栽培をしているのですが、毎年冬になると野鳥の食害が増えて困っています。
これまで防鳥ネットを設置していましたが、効果は限定的です。
そんなとき、鷹による鳥獣対策というものを知りました。
鳥の天敵となる猛禽類で肉食性の鷹(たか)を鷹匠(たかじょう)という人が操り、実績を上げているようです。
鳥を処分したりすることなく、追い払うというのが人道的でいいなと思います。
鷹匠については、江戸時代から続く古い職業であることは知っていますが、具体的にどのように依頼し、どんな効果があるのかを知りたいです。
例えば鷹匠さんがやって来て、一時的に効果があったとしても、継続的に効果が期待できるものなのでしょうか?
また、鷹匠による食害被害に地域で取り組んでいるようなところがあるようでしたら、教えてほしいのですが。
(群馬県・田中さん/仮名・60代)
伊駒啓介
株式会社グリーンフィールド 代表取締役
被害作物に対する害鳥の「執着度合い」の見極めがポイントです
鷹匠の派遣をする会社や団体は、日本に数社あるかと思われます。私どもは大阪を拠点として、全国に鷹匠を派遣しています。当社は創業11年目で、現在は9名の鷹匠が在籍しており、規模と実績に強みがあります。
鷹匠による害鳥駆除を検討される場合は、被害額や周辺環境を含め、総合的に判断されるのが良いと思います。
岡山県の総社桃生産組合さんと実施した事例をご紹介いたします。桃は単価の高い品目であり、被害があった場合はその額も大きくなります。費用対効果の面で、双方の条件が合致した事例のひとつと考えています。
カラスは賢く、作物がもっともおいしい収穫時期を理解しています。一般的に 1シーズンで10回ほど駆除を行うことが多いのですが、周辺環境によっても必要回数は変わってきます。
そこで、作物への「執着度合い」を調査するプロセスが重要になってきます。要は、鳥にとってその作物が「主食なのか、おやつ程度なのか」を見極めることです。
例えば、山の中でとある牛舎を狙うカラスがいたとします、山中なので、その場所以外にはエサ場がないということになります。この場合は、執着度合いが高いので、駆除のためには何度か鷹匠派遣をする必要があるということです。
ご興味を持っていただいたら、お問い合わせいただければと存じます。
秋山陽太郎
JA総社桃生産組合 組合長
被害削減につながりますが、単純に鷹を飛ばすだけでは効果はあがりません
カラスによる鳥害は、ひどい年だと個人で100万円規模、産地全体だと1000万円の被害がありました。
そして岡山では、2018年の西日本豪雨の後の河川整備により、一級河川の中洲エリアなどで営巣していたカラスが行き場を失い、山地など圃場の近くへのカラスの飛来数が増えている傾向があります。
鷹匠による対策に興味を持ったのは、音や光を使った既存設備だと住民への配慮も必要で、既存設備での追い払いには限界を感じてのがキッカケです。
初年度は鳥害対策へのクレームが多かった地域を中心に、数カ所の桃園に十数回派遣してもらい、結果としては90%以上の被害削減につなげることができました。
ただし、単純に鷹を飛ばすだけで効果を上げたわけではありません。
一般的に鷹匠というと、鷹が飛び立ってカラスを追い払うようなイメージですが、実際は違います。
カラスも最初は警戒して近づかなくなりましたが、賢いので1カ月ぐらいすると慣れてしまうのです。そのため、単に同じサイズの鳥が一緒に飛んでいるような光景になってしまいました。
そこで鷹匠とも相談し、夜明け前に飛来するカラスに対して、鷹の危険性を刷り込むため、事前に捕獲したカラスをおとりにして「カラスが鷹に喰われているシーンをカラスに見せる」という取り組みを行いました。
また、「カラスが襲われている声を録音して定期的に流す」という対策も加えて、より効果をあげることができました。
費用対効果は業者と産地の距離(移動費)などが影響します。また、カラスの執着度合いによって飛ばす回数や必要な対策が変わります。
対策を行った地域の場合、半径1㎞以内でも効果の差がありました。それに、カラスへ危険性を刷り込ませる効果はあくまでも個体単位になるので、危険性を認識していない新たな若いカラスがどこかから来て被害をもたらすこともあります。
地域での継続的な取り組みを併行して行う必要があるので、その手間も考慮して検討してみてください。