長野県でシャインマスカットをはじめ、クイーンニーナや種なし巨峰などの数種類のぶどうを育てています。
土にこだわり、農薬もできるだけ減らして高糖度な大きな粒の品物を作ることを心がけています。
いま悩んでいるのは、ぶどうのさび果を減らすことです。
花カスはブラシで丁寧に落としています。ブロアも併用しつつ行っていますが、なにせ数が多いため、かけ忘れなどが起きてしまいます。見落としてしまい、ブラシがどうしてもおろそかになってしまうようです。
シンプルな作業ですが、けっこうな手間がかかるのも悩ましいところです。
自分なりに対策を考え、現在はブラシ2本を使ってぶどうを挟むようにしてブラッシングする方法をやっていますが、他にもっといい方法はないかと模索してます。
(長野県・渡辺さん/仮名・30代)
宮田宗武
株式会社ドリームファーマーズJAPAN(宮田ファミリーぶどう園)代表取締役
ブラシはサポート的に考え、まずは生育バランスを整えることに注力しましょう
さび果(さび病)は消毒での予防が重要です。そして、さび果は花カスだけが原因ではありません。
つまり、ブラシのかけ忘れだけの問題ではないのです。
そもそも、生育バランスが整っていれば、花カスはそんなに付かないものです。
「花カスを落とす」のではなく、「花カスが付かない」栽培に着眼してみてはいかがでしょうか? 水洗いや消毒でも、工夫すれば花カスが付きづらくなりますよ。
私のところでは、「まず水で洗う→エアーコンプレッサーで洗う→消毒する→最後にブラシを使用」の流れでやっています。
ブラシはあくまでもサブ、補助的な役割を果たします。
通常の作業で、ぶどうは房を残したり、残さなかったりしますが、ブラシを使うのは、最後に残った「やり残し」を処理するときだけ。
エアーコンプレッサーは、電源となる発電機などの大がかりな装置を必要としますので、導入できない農家さんもいらっしゃいますよね。
その場合、エアー作業の工程が省略されるので、花カス掃除はブラシがけが中心になります。
ここでは、ご相談者さまの農園でエアーが使えないことを前提にお話します。
私は2015年にJAで花カス取り専用のブラシを購入しました。
U字型の持ち手の間にふたつのブラシがついていて、ぶどうの茎を間にはさんでスーッと下におろすだけで花カスが落ちる構造で、片手で使用できるのでとても便利です。
私の場合、ブラシのかけ忘れはありません。先程も申し上げたとおり、残った房の花カスを手ではなく、ブラシでフォローして落としているだけですから。
すべての木にブラシで対応するのは効率的ではありませんし、労力がとんでもなくかかります。
また、病気がついている果実に使用したブラシをほかの果実に使用すると、病気がうつってしまいます。
あくまでもブラシはサポート的に考え、生育バランスを整えることに注力していってください。
積山真一
ツミヤマ株式会社
さび果の発生軽減、防除作業時間を削減できる「花冠取り器」があります
さび果の発生原因は、灰いろかび病に感染した花冠です。防除方法は開花期に花冠を除去することです。
一般的には開花期に穂軸上部を弾く、手や刷毛でしごく、結実後に花冠をコンプレッサーやブロアーで吹き飛ばす、ブラシで掃き落とす、などの方法がとられています。
ご相談者様もブラシ2本を使っているようですね。しかし開花期は農繁期のために作業が遅れがちになったり、作業に手間がかかることがネックです。
その作業を少しでも軽減させるために農研機構が特許を取得し、弊社が販売を担当しているのが「花冠取り器」です。
これは、ジベレリン浸漬用のカップ上部にブラシの毛体が容器中心に向くようブラシを配置した器具で、無核栽培のジベレリン処理と花かす落としを同時に行うことが可能です。
使用方法は、大粒ぶどう満開期(満開直後から3日まで)の花穂を上下に3~6回往復させるだけです。
作業時間を3割程度削減でき、収穫時のさび果発生率も1/3~1/2に抑えられることが判明しています。
灰いろかび病の二次感染、裂果防止にも活用できます。この商品は大粒種(種なし栽培)での使用に限定されますが、今後はぶどう以外の他の果実や花などにも適用可能の「花冠除去機」を販売する予定です。