100頭ほどの乳牛を飼っている酪農家です。
最近、ネズミによるエサの食害がなくならなくて困っています。
侵入しそうなところには殺鼠剤を置いたり、粘着シートや捕獲用のカゴを仕掛けたり、壁の隙間なども塞いだりしているつもりですが、それでも給餌器や飼料置き場まで侵入してきます。
ネズミをどうにかしたいので、少しでも対策になればと、近所をうろつく野良ネコを畜舎周辺で餌付けしています。
ネコが畜舎内に入るのはまずいので中までは入れさせませんが、餌付けした野良ネコが畜舎周辺をうろつくのは衛生管理上、問題ないですか?
(栃木県・丸山達夫/仮名・50代)
加藤武市
加藤技術士事務所
牛舎周辺でネコを飼うのは、トキソプラズマの感染リスクがあるので、やめるべきです
農水省が2021〜2022年に行った豚熱に関する疫学調査によると、豚熱が発生した茨城や栃木、群馬、三重、奈良などの養豚場で、ネズミ、猫、鳥などの糞から豚熱のウイルスのPCR陽性が確認されており、感染経路になった可能性があると指摘されています。
農水省は疫学調査検討会の報告を受けて、豚舎周辺に猫がいる場合は、すべての「防疫作業が無駄になるので農場から至急排除する」よう指導しています。
ご相談者さんの場合は、乳牛ですが、牛舎で猫を飼育する場合のリスクについても、東京大学大学院農学生命科学研究科と森林総合研究所、および岐阜大学が2022年9月に研究成果を発表しています。
研究報告によると、鹿児島県・奄美大島の徳之島でハブの侵入防止のために、餌付けしている猫(とクマネズミ)がいる牛舎周辺では、トキソプラズマ感染リスクが高まる傾向があるので、感染リスク低減のために、牛舎周辺での猫を飼育しないよう管理を徹底するようにと結論づけています。
このことから、畜産農家では、ネズミによる食害対策として、ネズミ取りもしてくれるので、問題なければ、猫を飼うという甘い考えはやめるべきです、トキソプラズマが感染した時、これを根絶するのに多大な経費と年数を要するからです。