ハウスで、トマト、ミニトマト、きゅうり、いんげん、ブロッコリーなどを中心に栽培しています。
できるだけ化学農薬や化学肥料は使わず、土作りからこだわっています。
もちろん害虫に対する防除薬剤も使用していません。
しかし、きゅうりにアザミウマ類やコナジラミ類が発生し、被害が出ました。
対策としてIPM(総合防除)を導入しようかと考えています。
天敵になる生物を調べてみると、スワルスキーカブリダニとリモニカスカブリダニが代表的のようです。
温度により活動量が違うようですが、関東だとあまり気にしなくてもいいのでしょうか?
きゅうり栽培の場合、天敵の特徴や導入のタイミングなど、基本的な天敵防除について教えてください。
(神奈川県・金子さん/仮名・40代)
上野高敏
九州大学大学院 農学研究院 生物的防除施設 天敵昆虫学分野 准教授
きゅうりの天敵はカブリダニ類が効果的ですが、導入には気温条件や時期が重要です
どちらのカブリダニも、アザミウマ(幼虫)やコナジラミ(卵や若齢幼虫)、ハダニ類、ホコリダニ類、ガ類の卵などを捕食してくれます。基本的に温暖な環境において最も効果を発揮します。
とくにスワルスキーカブリダニは施設栽培でずいぶん普及しました。
この天敵昆虫はとても優秀なのですが、気温が低い時期になると防除効果は落ちてしまいます。その弱点を補えるのが低温条件下でも活躍できるリモニカスカブリダニです。
しかし、リモニカスカブリダニも、気温が冷涼になると難しくなります。
どちらのカブリダニも湿度の低い乾燥した環境では著しく生存率が低下しますし、最低気温が5度〜氷点下になりやすいような環境では定着できません。
天敵昆虫の導入には気温条件が重要となります。ほぼ閉鎖型のきっちりと閉じた温室であれば、夜間の気温が大きく下がることはなく、日中の温度は高めになるでしょうからスワルスキーの方がよいでしょう。
もしも夜間などに室内の温度が大きく下がる(たとえば10度ほどの温度差)ような温室や栽培時期(晩秋から春にかけての時期など)であれば、リモニカスカブリダニの方が天敵として期待できそうです。
どちらを導入するにしても、こまめに観察してください。両者とも体長が0.2〜0.3ミリ程度しかありません。裸眼だと確認しにくいので、拡大鏡などを使って定着の様子などをチェックしてください。
例外として、きゅうりにおいてはカブリダニ類では防げない害虫が出ます。
また、カブリダニ類が効果を発揮するとはいえ、地域によってはアザミウマやコナジラミが媒介するウイルス病が問題となる場合があります。
天敵の導入に加えてUVカットフィルムや防虫網、粘着板なども組み合わせ、さらに害虫の発生源となるような植物や残渣を排除して温室まわりをきれいに保つことも重要です。