会社勤めを辞めて、40代後半に就農しました。露地で野菜を多品目栽培して、主に直売所と地元スーパーに出荷しています。
30アールほどの畑をフル回転させて栽培しているため、常に後作との相性を考えながら植え付けています。
ナス科のトマトとアブラナ科のキャベツは輪作の相手として相性が良いというので、春夏にトマト、秋冬にキャベツを同じ畝で長年栽培していましたが、昨年からネコブセンチュウの被害が出始めました。
輪作していたので、「まさか!」と驚きました。相性が良い作物同士でも、長年同じ場所で栽培すると、こうした連作障害が起こるのでしょうか?
(群馬県・新井俊朗さん/仮名・50代)
豊田剛己
東京農工大学 農学研究院 生物システム科学部門 教授
輪作しても、ネコブセンチュウ抵抗性打破能力を持つセンチュウがいます
日本の伝統的な輪作体系というと、「稲〜麦〜大豆」です。輪作体系には必ず水稲が入ります。
これは、水稲を栽培すると、土壌に酸素が足りない還元状態となり、そのために病原菌や植物寄生性のセンチュウが死滅し、連作障害が発生しにくくなるためです。
ご相談者さんは、トマトとキャベツの輪作を行っていたということですが、その両方で増えるセンチュウとして、サツマイモネコブセンチュウが知られています。
したがって、両方の作物を輪作する過程で、徐々に病原体の生息密度が増えた、と考えられます。
紛らわしいことですが、トマトに関しては、多くの品種、例えば大玉トマトの「桃太郎」や「麗夏」などには、サツマイモネコブセンチュウに対して抵抗性があると宣伝されています。
ところが実際には、日本各地で、サツマイモネコブセンチュウに対するトマトの抵抗性を打破する能力を持つセンチュウが存在することが報告されています。
したがって、抵抗性があると思ってトマトを栽培しても、サツマイモネコブセンチュウの被害が増えるということは十分に想定されます。
サツマイモネコブセンチュウが寄生しない作物はイチゴや落花生など、非常に種類が限られています。
キャベツでは、ネコブセンチュウ害が発生した報告例はほとんどないのですが、ある程度はネコブセンチュウが増えると思われますので、ご相談者さんの場合も、トマトとキャベツの輪作を続けるうちに、少しずつセンチュウの密度が増えてきたと考えられます。
今後の対策ですが、マリーゴールド、クロタラリア、ギニアグラスなどの緑肥を取り入れることで、サツマイモネコブセンチュウの密度を減らす効果が知られていますので、これらを輪作体系に組み込むことでセンチュウ密度を低く維持し続けることが重要だと思います。
ご相談者さんのトマトとキャベツの栽培期間が正確にはわかりませんが、緑肥を栽培した場合、おそらく、どちらかの作物を栽培できなくなってしまうでしょう。
たとえ、そうであったとしても、今後も安定して栽培を続けていくには、必要な管理法だと考えられます。
というのも、緑肥の栽培は、サツマイモネコブセンチュウ密度を減らすだけでなく、土壌の炭素含量を高めることで、土壌の物理性、化学性を広く改善することが知られています。
また、クロタラリアのようなマメ科緑肥を栽培すると、次作の窒素肥料を2~3割程度削減できることも知られています。
緑肥の導入が難しい場合、ネコブセンチュウ密度を削減する方法は
・トマト栽培時に「ネマトリンエース粒剤」や「ビーラム粒剤」などの殺線虫剤を使用することと、
・作付け前に燻蒸剤を用いて土壌消毒を行うこと
などが挙げられます。