年間通じて多品目の野菜を育てて直売所で販売しています。
私は毎年、キャベツを夏まきで育てていますが、その苗の植え付けに関する質問です。
セル苗は幅約50cmの畝に1条(株間は約30cm)で植え付けています。
その方が土寄せなどの作業がやりやすいのですが、2条植えに比べると、その分、多い面積が必要となります。
しかも、2条植えの方が結球する玉が大きくなるという話を仲間から聞いたことがあります。
今年はすでに例年通り1条で植え付けてしまいましたが、2条植えの方がよいようならば来年からは考え直してみようと思います。
キャベツ苗の畝への植え付けは1条か2条か、どちらがよいでしょうか。
(三重県・伊藤啓吾さん/仮名・40代)
イチロウのゼロイチ農業(旧さいこうやさい)
キャベツを最大限に育てるには、株間を一定にし、水はけの良い畝高を作ろう
三重からのご相談ですね! 僕も、伊勢神宮を訪れた機会に、田んぼや畑を眺めながら産地の想像を巡らせていますが、土壌は水持ちのよい粘土質のイメージが強いです。
水田から転作して野菜を作られている方も見られていますので、そのあたりを踏まえると、三重の土質での栽培の参考になるかもしれません。
まず、ご相談者さんの相談内容から、ポイントをまとめました。
▼多品目の露地栽培、販売は直売所。
▼キャベツは夏まき、株間30cm、1条植えのメリットは土寄せがしやすいが、デメリットは面積が必要。
▼2条植え(畝幅80cm)は、結球する玉が大きくなると聞いた。
▼1条と2条のどちらがいいのか? ということですね!
ご相談者さんの目指すポイントを言い換えると、
①直売所で販売するキャベツを今より大きい玉にしたい。
②1条植えまたは2条植えで、玉の大きさ、定植数を最大にしたい というふうに理解しました。
①の場合、直売所用のサイズなら、1箱に「9玉入り」か「8玉入り」が一般的でしょうし、限りある面積で最大限に多く、ついでに作業効率も良くしたいというのは、どんな生産者にも共通した目標だと思いますので、これから一つひとつ、僕の経験を踏まえて解説していきます。
解決までのポイント
①9玉~8玉のキャベツをどう豊作にするか〜株間を揃えよう
僕が経営している「さいこうやさい」では加工用のキャベツがメインですが、株間は33cmにしています。
メインは6玉を中心に栽培することになります。
サイズは、植える圃場の水はけの良しあしで変わります。砂質の土壌で水はけがよい場所では5玉中心になり、水はけが悪いところでは6玉~8玉の6玉寄りになります。
株間を一定にそろえず、その年によってバラバラだと目標の収量が望めません。理想的な収量には測定データが必要ですから、株間は一番うまくいった時のデータを参考にし、できるだけ変えないようにします。
もちろん、さらによくするための実験は欠かせませんので、毎年、1畝だけ株間35cmでやってみようと試すことはあります。
ご相談者さんのサイズですと、僕の場合、株間27cm~30cmでうまくいった経験があります。限りある面積で多くの苗を植えるには、ご相談者さんが今やっている株間30cmの定植間隔を、まずは端から端まで綺麗に揃えることが大切です。
②株間を揃えるために何が必要か?
必要なのは、
A 水はけをよくすること
B 肥料を均一に効かせること の2点です。
端から端まで揃えて植えることができたうえで「1条」か「2条」かという問題になりますが、その前に気になるのは、30cmの株間で植えているのに、もっと玉を大きくしたいということは、「理想とする肥大ができてない」というのが本来の課題かなと想像しています。
そのためには肥料を適切に施用しなければなりません。
③肥料の適切な施用とは?
有機栽培や、自然農法は別にして、慣行栽培において、キャベツの玉ぞろいを均一にするのであれば、次の2点がポイントです。
C 肥料切れを起こさない。
D 生育がわるい玉に合わせて施肥を増やす。
そのためにも、先述したA、Bの水はけをよくすることと、肥料を均一に効かせることが基礎になります。
④1条植えか2条植えか?
いよいよ本題です。僕らさいこうやさいの圃場は、水はけが悪い農地のほうが圧倒的に多いため、高畝が作りやすい2条植えだけで栽培しています。
相談内容によると、「栽培できる苗の数が多いのは2条では?」とありましたが、僕の畑で行った計算では、1条のほうが面積当たりの栽培本数が多く、2条では少なくなります。
現在は2条植えでも1条と同じ株数に到達しています。ブームスプレイヤーが踏みつぶしてしまう部分は植えることができないため、通路を除くと同程度まで追いついています。
ご相談者さんが今、1条で植え付け本数が少ないのであれば、畝間が広すぎる可能性があります。
売上高が良いことが条件ですが、仮に現在の畝間が30cmなら、試験的に狭い畝間(25cm~20cm)で試し、うまくいけば20cmの畝間対応可能な管理機をいれることで、30%苗の植え付け本数を増やすことが可能になります。
ちなみに、三重県がある紀伊半島は台風が多い場所ですので、水没を防ぐためにも、30cm以上の高畝ができない場合があります。
その場合、僕が使っている鋤柄農機さんの「スーパーエイブル平高畝成型機」は40cmの高畝を作ることができるのでオススメです。
このくらい高畝だと、品質が揃った豊作が望めます。台形畝の頂部にあたる天場を80cm幅でとってもうまくいかない場合、90cmに広げるのも良いと思います。
キャベツの玉ができたときに株が転ばず、秀品率があがり、豊作になるからです。
④農地によって条数を変える
ご相談者さんと同じ三重県内で土壌環境が似ている先輩農家がいて、理想的な収穫ができているのであれば、その方を参考にしてみるのも良いでしょう。
土壌条件が同じなら、1条のほうがいいものが作れると思います。④でも説明しましたが、土壌と作る畝の質で、今よりもっと豊作が望めます。
うまくいくことをお祈りしています!