2年ほど前から、肉用でホルスタインの飼育を始めました。
それまでは和牛の肥育をしていましたが、飼育方法がまったく異なるので、毎日勉強しながら飼育しています。
ホルスタインは和牛に比べて体格が大きいため、お腹にガスが溜まる鼓脹症の事故が多いようです。
和牛の時はほとんど経験しませんでしたが、ホルスタインに切り替えて2年弱の間に、3頭もの牛を鼓脹症で死なせてしまいました。
腹部のガスの影響で起き上がれなくなり、朝になると死亡していたというケースがほとんどです。
夜間の見回りを強化するなどして対策はしていますが、未然に防ぐ方法はあるのでしょうか?
(宮崎県・廣畑重行さん/仮名50代)
安藤達哉
酪農学園大学 生産動物医療学分野 生産動物内科学ユニット 准教授
誇張症の予防は、第一胃内の状況をより良い状態にコントロールするための健胃剤を使いましょう
誇張症とは、牛や羊などの反芻(はんすう)動物に起こる病気です。牛は4つの胃を持つことで知られますが、全体の8割を占める第一胃は「ルーメン」と呼ばれます。
ルーメンは、消化器官では分解できない繊維質の成分を微生物の力を借りて消化する役割を担っていて、分解中には大量のガスが発生しますが、過食などが原因で反芻中に体内からガスを排出することができなくなることがあります。
第一胃の内部でガスが膨満してお腹が張ると、反芻できなくなったり、呼吸困難などを引き起こす恐れがあるのです。
ご相談者さんは、ホルスタインに切り替えたら鼓膨症が増えたと危惧されていますが、ホルスタインが特別たまりやすいということはありません。
そもそも、乳用牛および肉用牛ともに、鼓膨症による事故は通常はそれほど多くないからです。
鼓膨症で死に至る状況が散見される場合には、共通の問題点がある可能性があります。
例えば、牛床に傾きやくぼみ、あるいは釘などが飛び出ているなどがあり、牛が何かのきっかけで起立に制限が出てしまうといった要因が考えられます。
ある一定程度以上に第一胃にガスが溜まってしまうと、自分の力で起立できなくなりますので牛舎施設の点検が必要です。
もうひとつ考えられるのは、粗飼料の不足です。
前述のように、第一胃内の異常発酵が発生すると鼓膨症のリスクは高まります。できるなら粗飼料はいつも切れることがないようにしておきたいところです。
予防に関しては、第一胃内の状況をより良い状態にコントロールするための健胃剤が数多く販売されています。
一般的な治療法としては、胃の洗浄、第一胃の切開、植物油・シリコンの内服による制酵や消泡などの治療法が一般的です。
また、酵母や天然ミネラルあるいは天然由来の植物副産物などを活用しても良いと思いますが、販売店やメーカーなどとよく相談をし、自分の牛群によりあったものを選択するようにしましょう。