就農して5年になります。運良く東京都内の住宅地で農地を借りることができ、現在は少量多品種生産で、オーガニック野菜作りに挑戦している状況です。
わからないことだらけで失敗しながら栽培を続けていますが、キャベツの収穫時期に大量に発生するナメクジに悩まされています。
敷地内は除草や掃除もしっかりやっているので、ナメクジが発生するような場所はありません。
どうやら隣の敷地に住む老夫婦の古い木造家屋が発生源になっているようです。
高齢者ですので庭の手入れも放置状態で雑草も生え放題ですし、朽ちかかった倉庫などもあります。
実際、畑まで距離はそれなりにあるのですが、きっと移動してきているのだと思います。
土地の境界線部分に竹酢液などを使ってみましたが、あまり効果がありませんでした。ほかにいい対策方法があれば教えて欲しいです。
(東京都・篠崎さん/仮名・20代)
イチロウのゼロイチ農業(旧さいこうやさい)
キャベツ栽培時にナメクジが発生しにくい環境づくりを。雑草を生やさないように取り組んで
ご相談者さんは、新規就農してまだ数年ということで、真剣に農業に取り組んでいらっしゃることと想像しています。
ナメクジの被害はとても深刻で、きちんと取り組む方法がありますので、順を追って解説していきますが、まずは、農法ごとに基本的な考え方を押さえておきましょう。
・有機JAS栽培…梅雨前後の時期は、ナメクジ対策には適していないので取り組まない。
・減農薬栽培……減農薬で対処できるならラッキー。管理が上手ならば可能です。
・規定通り農薬を使う慣行栽培……この時期はちゃんと対策を取ります。高品質なキャベツを出荷するためです。
対策のポイントですが、ナメクジの発生は5月以降が特に多くなるので、この間は、無理な作付けをせず、ロスを減らして、利益を残していきます。
キャベツのナメクジ、カタツムリの被害は、1日ずつ利益が失われていくので深刻な問題です。
発生源はそれぞれありますが、自分の手の届く範囲で改善できます。
カギを握るのは環境づくりです。
僕の経験ではナメクジの対処療法は、コストがかかるわりに、たいした効果は感じられませんでした。やはり「予防」×「予防」がベストです。
ここからは、上記のポイントを詳しく解説していきます。
あくまでも僕が取り組んでいるやり方なので、読者の皆さんは、ご自身の環境にあわせて、できる範囲で取り組んでいただけると、利益が残るキャベツ栽培が可能だと思います。
繰り返しますが、ナメクジは毎日のように被害が続くと、ゆくゆくはとても深刻な状況に発展します。
例えば、被害が1日1畝あると、10日で10畝、つまり1反まるごとナメクジにやられて、出荷できなくなる心配もありますよね。それでも手段はいくつかあります。
まず発生源ですが、ご相談者さんは古い木造家屋を疑っていますが、僕自身は特定する意味はあまりないのではないかな?と思っています。なぜなら、「ナメクジにやられないような環境づくり」が有効な対策になるからです。
ナメクジの温床にならない環境とは、次の3つです。
(A)雑草が生えない管理をする。
(B)ナメクジが侵入できない環境をつくる。
(C)常に畑に手を入れられる環境の準備。
これから順に解説していきますね。
(A)「雑草が生えない管理」について
3月~6月の気温が高い時期の雑草はとてもシビアです。ナメクジは4月末~6月のキャベツ収穫の時期にどんどん数が増えていきます。特に「やばいなあ」と感じるのは、5月以降、収穫が始まる時期です。
キャベツも旺盛に育つので、この時期はとことん雑草が繁茂しないよう手を入れてください。
具体的な方法は次の4つ
①雑草が生える前に抑制する除草剤「ゴーゴーサン」などの使用。
②キャベツを順調に生育させて、外葉を大きく育てることで雑草の発生を抑制。
③キャベツの株元には必ず土寄せして耕すことで、雑草の発生を抑制。
④それでも生えてくる雑草は、見つけ次第、手で除草します。しんどい作業なので、できるだけ①〜③の管理方法で雑草が生えないよう、技術を磨いてください。
これらの一連の作業によって、問題になるほどの被害はなくなるはずです。
次に(B)「ナメクジが侵入できない環境づくり」ですが、要は畔に生える雑草を収穫が終わるまで無くすことが重要です。
雑草は可能な限り枯らせてください。畔なので、グルホシネート系の除草剤「バスタ」などを使うのが安全です。この作業を怠ると、まず外周の2畝ほどがナメクジにやられます。
(C)の「常に畑に手を入れられる環境」とは、要するに「トラクターを常駐」させることです。
収穫が終わった畝は、すべてその日のうちに耕うんし、葉をすべてすき込んでしまうことで、ナメクジの移動はかなり抑制できます。
これを行うには、生育状態を揃えることが重要になりますので、管理の際には「順調に生育させること」が必要です。
順調でない場合は、いろんな手段を用いてしっかりと生育が止まらないように育ててあげてください。
ここまでが僕が管理する具体的な作業手順ですが、どうですか?片手間ではできないですよね?
ちなみに、ナメクジ駆除剤として「スラゴ」などの毒餌も知られています。僕自身、スラゴは使ったことがありませんが、有機JAS対応の類似資材を使った経験があります。
結論をいうと、栽培面積が広いので量を必要とするため、たくさん使うとコストが高くつくわりには、殺虫剤のように即効性を感じることもなく、やはりナメクジが発生しにくい環境づくりが重要だと思いました。
キャベツのように、広い農地が必要な野菜には、コストパフォーマンスが悪いと思います。
最後に大事なポイントですが、栽培面積を、利益がちゃんと残すような規模で抑えることです。つまり、「無理な規模拡大はNG」ということです。
100万円儲けたいから、面積を広げるという発想でやると、売上は60万円で、40万円分はナメクジ被害でハネ(規格外)品になり、結局何をやりたかったのか、わからない結末を迎えることもあります。
この問題は、金額ばかり追いかけるとよく起こります。
先ほどの例え話で、40万円分を失敗すると、かかった経費がそのまま赤字になります。したがって最初から無理せずに、60万円分のキャベツをしっかり作って、ロスを無くしたほうが利益が残ります。
6月、7月は雨も多く、難しい時期ですので、無理なく利益を残して終わるのが一番いいと僕は感じています。
冬作とは全然違うので、そのところを踏まえて乗り切っています。
どうしてもナメクジが発生してしまった時の対処法は、僕のブログ「キャベツの栽培方法【完全ガイド】プロ農家の種まきから収穫まで」に記載してありますので、こちらも参考にしてください。
この方法も、できるだけ早めの対処が効果を発揮します。畑全体の面積の10%でナメクジを見つけたら、この最終手段をとってください。
シビアですが、僕はこんなふうに対処しています。いい結果になることをお祈りしています。