有機栽培でキャベツやにんじんを中心に旬の野菜を育てています。土づくりは牛糞と油粕、緑肥をすき込んでいます。
とくにキャベツは年間を通じて作っていて、味も悪くないと思っています。しかし、夏まき栽培に比べると、秋まき栽培の方は味が薄いように感じます。
年間を通じて追肥は油粕が中心です。与えている量も同じ程度です。
大きな違いといえば、追肥する回数で、同じ量を夏まきは3回に分け、秋まきはとう立ちを避けるために早めに2回に分けて行っています。
現状で秋まき栽培の方の味が薄いように感じるのは追肥の仕方に問題があるからなのでしょうか?
(千葉県・鈴木さん/仮名・30代)
イチロウのゼロイチ農業(旧さいこうやさい)
キャベツの味が薄いと感じる場合、品種を見直してみましょう
千葉県は全国有数のにんじんの産地ですね!ステキです。私の取引先からも千葉の素晴らしい産地の話を聞いています。
牛糞と油粕を使って土づくりを行い、緑肥をすき込んでいらっしゃるとのことですが、発酵を大切に考えているのが伝わる素晴らしい取り組みだと思います。
キャベツの葉の柔らかさや味を重視して作ってこられたということから、葉が柔らかく、味が良いとうたわれている品種を選んでこられたんだろうなと想像できます。
有機野菜を望むお客さまにも、とても人気があるでしょうね。
早速ですが、夏まきのキャベツに比べると、秋まきは味が薄いような気がするので、季節ごとに追肥設計を変えるべきか?という相談にお答えしていきましょう。
私は年間100トンのキャベツを契約栽培で出荷していますので、その経験からお答えします。
私の場合、1玉2kg~6kgの大きなキャベツを作っているのですが、味が薄いと感じた経験はほとんどありません。これは、必要なサイズのキャベツに育てるうえで、肥料の量が十分に足りていることを意味します。
ご相談者さんのように「味が薄い」と感じる場合、原因は次の2点が考えられます。
1、育てている品種が「求める味ではない」(季節にあっていないかもしれない)
2、微量栄養素が不足しているため、品種本来の味が引き出せていない
そこでまずは実験として、作付けの1割程度のキャベツの品種を変えてみてはいかがでしょうか?
他の季節の出来が、基準に達している味であれば、「特定の時期だけ適していない品種」の可能性が十分にあります。
一般的に、市場ニーズが高いのは「寒玉系の固いキャベツ」ですが、これはスーパーに一年中流通しているタイプです。
これに対して、相談者さんが栽培している柔らかくて味の良いキャベツは「春キャベツ」にあたります。
春キャベツは収穫適期がタイトで、1週間から頑張っても2週間で品質が著しく劣化してしまいます。柔らかく痛みやすいからです。
こういった理由から、寒玉系に比べると春キャベツは「安定的に、高品質で、大量に出荷しにくいという理由から」利益を見込みにくいため、種自体品種の流通量が、寒玉系に比べると少ないのです。したがって生産者は、春キャベツの栽培に本来は適していない時期も、最適な品種が見つからないまま、ずっと作り続けるしかないという問題があります。
別の見方をすれば、柔らかく味が良い(春キャベツ系の)品種は、家庭菜園向けである可能性が考えられるため、種屋さんでは相談者が欲しい品種が見つからない場合もあるのです。
ここからは私からの提案なのですが、ご相談者さんはそれほど丁寧にキャベツを作れる生産者なのですから、春キャベツの栽培に適さない時期は、寒玉系にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
適切に選べば、寒玉系でも柔らかい品種はありますし、味も良いものを追及できると思います。
私が生産するキャベツはすべてが寒玉系ですが、取引先の飲食店のシェフの方々からは、「かなり美味しい」と評判で、わざわざ指名買いに来てくださるほどですから、ご相談者さんもきっと満足ゆくキャベツができますよ。
秋まきならば「初夏」が寒玉系の春どり品種ですが、私の経験上、美味しくできます。
2番目に、微量栄養素を与えてみてはいかがでしょうか?微量栄養素のうち「苦土・ホウ素・マンガン」の3つを含むものが適していると思います。
肥料を吸収してサイズが大きくなっても、微量栄養素の欠乏によって、光合成による植物の同化作用がうまくいかず、味が引き出せないという経験があります。
私は今、いちご農家から直接指導を受けて、1坪ほどのハウスで「章姫」の味の改良実験を行っていますが、微量栄養素が不足して光合成がうまくいかないと、タンパク質(アミノ酸)の生成にも影響して、味が悪くなります。
最後に繰り返しますが、満足いくキャベツを作るために一番手っ取り早いのは品種の見直し、次に微量栄養素を与えること。
このふたつを見直して、健全な生育をしていることで、キャベツの味が良くなります。どうぞ、ご相談者さんが望む結果に近づけることを心よりお祈りしております。