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キャベツ栽培で、苗を定植前に根切りした方が活着が良くなると聞きました。どれくらいカットすべき?

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キャベツ栽培で、苗を定植前に根切りした方が活着が良くなると聞きました。どれくらいカットすべき?

埼玉県で30種類くらいの品種の野菜を露地栽培しています。

主力作物のひとつであるキャベツの定植方法について教えてください。

今まで、苗は定植前からたっぷり給水させ、根を育てたまま畑に植えていました。

根はできるだけ多い方が栄養を吸収してくれると考えていたからです。

しかし、先輩農家から、キャベツはそのまま植えるよりも、定植前に苗の根をごっそり切った方が活着が良くなると聞いて、驚いています。

とくに寒い時期に栽培する秋まきは、その方が良いと聞きました。

根切りするにあたって、どれくらいカットすればいいのか、加減を教えてください。
(埼玉県・小林さん/仮名・30代)

イチロウのゼロイチ農業(旧さいこうやさい)

セルトレイ育苗が主流の愛知県では、キャベツの根張り良くするために根切りはしません

埼玉で少量多品目栽培をされているということは、都市型農業の典型ですね。とても関心があります。

ご相談は、主力作物のキャベツについて、「定植前の苗の根を切ったほうが、特に秋まきの場合は苗の活着がよくなると聞いたが、この場合、どれくらいカットするべきか?」という内容ですね。

僕は愛知県知多半島で年間100トンのキャベツを生産・収穫していますが、その経験をもとにお答えします。

「苗の活着を良くしたい」というご要望ですが、この場合、①活着に問題があるか②活着作業を省力化したいか、の2通りの考え方があります。

さらに付け加えれば、根切りしたことで、秋まきキャベツの出来にどのような効果があるのか?も気になるところです。

全国のキャベツの生産量を見てみますと、1位は群馬県、2位は僕ら「さいこうやさい」が営農している愛知県で、ご相談者さんのいる埼玉県は12位になります。

ここで押さえておかなければならないのは、野菜の生産は、それぞれの地域によって育苗や植え付けの方法に違いがある点です。

愛知県では、育苗用に開発された「セルトレイ」という小型ポットを連結させたトレイで育苗します。

一方、埼玉に近い隣の群馬県嬬恋では、セルトレイ育苗と、畑に直接種をまく地(育)苗の2通りのやり方があると聞いています。

このため、愛知県では、地(育)苗での知見がないので、ここでご紹介するのはセルトレイ育苗の方法に限ることを最初にお断りしておきます。

1、苗の根をカットするかどうか?  この問題ですが、結論からいうと、僕はカットしない方法で活着を促進させています。

根切りしないで苗を活着させるには、
①苗を植えつける前に、たっぷり潅水させます。

②潅水する際には、水にアミノ酸入りの液体肥料である「AGメットスタート」を加えています。以前、かぼちゃの苗を植え付けた時に使ったところ、とてもよく活着した経験があるからです。

他にも、亜リン酸とカリウムに特化した「ホストップ」という液肥もあって、植え付ける前の苗に500倍に希釈した水を与えたことがありますが、これもとても効果を感じました。

植物の成長に必要なリン酸とカリウムが原料ですから、発根や生育を促進する肥料成分のため、植え付けた翌日に苗から根が0.5cmほど伸びて、スッと畝に入っていきました。

この2種類は混用しても大丈夫です。僕自身は根を伸ばすために「ホストップ」が有効だと考えています。2種類使うことで、植えつけた後の葉も、生育が1日ほど早くなる印象を受けました。

ちなみに、ナス栽培に「ホストップ」を使った時の記事もありますので、参考にしていただければ幸いです。

僕の場合は、「ホストップ」を1日おきで2回(1000倍希釈)にしたものと、JAで扱っている窒素系液肥「くみあい液肥2号」を2000倍の濃度に希釈したものを毎日与えています。

さらに、苗の生育時にはあえて灌水しないことで、苗にストレスを与えて根張りをよくしています。

亜リン酸液肥と、窒素系液肥と灌水の管理の3つを行うことで、セルトレイの根をしっかりと多く張らせて、本葉が3、5枚から4、5枚まで、30日間で育てます。

また、僕はクボタの全自動定植機を使って、自動で植え付けているため、根切り作業は一切やりません。

2、活着速度について

ここまでセルトレイを使った僕のやり方をお伝えしてきましたが、それによって根の活着速度はどうなるか?についてお話しします。

前提として、育苗した苗を植え付ける際、僕は最初から根の少ないものは廃棄し、根が多いものを植えるようにしています。

ご相談内容に反するような回答で申し訳なく思いますが、苗を選別することで、年間収量100トンを実現させている方法をお話ししますね。

① 定番の夏植えについて
夏場の植え付けは、めちゃくちゃ暑いですから、最も早く植え付ける8月10日頃だと、苗を植えてから2時間で枯れ始めます。誰もが覚えのある経験ですよね。そのためにも、植え付ける前にできるだけ根が多いものを選ぶのが重要になるのです。

② 活着までの散水方法(植え付け時期別)
・苗の定植後、葉がしんなりする頃を見計らって、畝間がベチャベチャになるくらい、散水します。
・8/10前後の猛暑時は、定植から1週間程度は根の活着のために灌水管理を行ってください。
・ある程度、猛暑がおさまってくる8/20以降であれば、水管理は3日間〜1週間程度で結構です。
・9月に入ってから植え付ける場合、水やりは3日〜4日間程度
・秋植えの場合、雨が降ったり、高温になりすぎない場合は、運が良ければ1日で活着しますが、通常は3〜4日間程度は灌水してください。

これまで僕はキャベツの苗をいかに早く活着させられるか、さらに作業効率をどれだけ省力化できるかに着目して、さまざまな方法に挑戦しました。先にご紹介した、灌水に液肥を加える方法もそのひとつです。

その結果、得られた結論としては、散水の手間を省くことより、十分に時間をとって散水する方が、最終的に苗がほぼ生き残り、欠株率を下げることができるとわかりました。つまり、儲かるのです。

農作業をするうえで、省力化は重要ですが、最終目的である「稼ぐ」「豊作にする」を実現するためには、必要と割り切って、時間と予算と人員を割いています。

最後になりますが、ご相談者さんの「根を切るか」というご質問には、「根切りせず、できるだけ根が多い苗を選び、活着させるための方策をとる」と回答します。

僕の場合、上記の作業を全て徹底することで、植え付けした翌日には根が0.5cm、4日目には2cmほどに成長します。

灌水期間が長いため、圃場ですぐに使えるよう灌水装置を常設するなどの準備は必要になるでしょう。

植え付けた苗が活着し、葉がしんなりすると根は伸びます。苗が水を求めているタイミングで十分に散水することで、根はしっかりと畝の中に伸びて行きます。

さらに苗の植え付け本数、活着時期による収穫量、収穫サイズの安定化を行うことで、利益の予想が可能になります。

あくまでもセルトレイ方式のため、ご相談者さんが地育苗の場合は、あてはまるかわかりませんが、参考になれば幸いです。

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