脱サラで地元に戻って就農して7年ほどになります。実家は農家ではありませんが、香川県で自然を満喫しながら季節の野菜を栽培中です。
主な作物はブロッコリー、オクラ、ナス、枝豆などです。農地規模はさほど大きくなく、家族で無理なく暮らせていける程度の収入で続けていきたいと思っています。
妻がブロッコリーが大好きなので、とくに力を入れて育ててきていました。
他の作物以上に気をつけていたのですが、根コブ病が発生してしまいました。
発生後は、薬剤による土壌処理、消石灰を使っての土壌pHの調整、緑肥(ソルガム)の活用、作期の移動などの対策をしてきました。
しかし、完全に防除するには程遠い状況です。
以前のようなブロッコリー作りがうまくできないので、妻もがっかりしています。もうブロッコリーを諦めるしかないのでしょうか。
完全に防除できなくても、少しでも軽減したいです。なにか効果的な対策はないのでしょうか?
(香川県・吉田さん/仮名・30代)
鈴木雅智
ブロ雅農園
ブロッコリーの根コブ病対策は、転炉スラグを使って土壌のpHを調整しましょう
こんにちは。神奈川県三浦半島でブロッコリーを中心に、100種類ほどの栽培をしているブロ雅農園の鈴木です。
ブロッコリーいいですよね。わが家も母親と妻が大好きでたくさん作っています。神奈川県はそこまでブロッコリーが有名ではありませんが、わが家では一時期、神奈川で一番広い面積で作っていたこともありました。
ブロッコリー農家にとって、根コブ病は避けては通れませんよね。
私の地域も、根コブ病が大問題になり、大学ではその課題を解決する糸口を見つけるため、土壌研究室に所属し、根コブ対策の研究をしていました。
初歩的な確認ですが. まずは、コブのつき方によって、根コブ病かネコブセンチュウかを見分ける必要があります。
根コブ病はコブが大きく、ネコブセンチュウは細かい粒のようなコブができます。
根コブ病とわかったら、覚悟をして、原因を探るのが大切です。まず、土壌分析をしましょう。
根コブ病の原因のひとつにリン酸過剰があります。
日本では、リン酸神話と呼ばれるくらいに、リン酸が多少過剰の方が良い作物が作られていたと言われている時代がありました。
科学的に過剰になっている成分がないか、チェックしましょう。
つぎは、現場のチェックです。
例えば、わが家が一番根コブ病がひどい畑は横に小さな川があるのですが、根コブ病の原因の病原体は水を渡ってくるので、上流で病気のブロッコリーをたくさん捨てていたということが明らかになったこともあります。
根コブ病は感染することから、発生したことを言わないまま、近隣の圃場に蔓延(まんえん)する場合があります。
土からもうつるので、同じ長靴で畑を移動しない、土を払うなど、注意が必要です。
さて、原因などがある程度絞り込めたら、次は対策です。
畑に資材を投入しましょう。根コブ病は土壌のpHを上げると発症しにくくなります。
ただ、一般的な方法だとすぐ元通りになってしまうので、私の研究室でやっていた方法は製鉄所で鋼を製造する過程でできる副産物の「転炉スラグ」を使って、pHをあげる方法です。
この方法は初期費用がかかりますが、10年近く根コブ病の発生が防げるという研究成果があります。我が家でも実際に導入したところ、10年間発生はありませんでした。
育苗がセルトレイならそこまで気にされなくても大丈夫ですが、地床の場合は太陽熱処理を行う方が効果的です。
連作障害なども抑えられるので手間はかかりますが、おすすめです。
根コブが起こるとショックも大きいですが、あきらめる必要はありません。
産地ではどこも悩ましい問題なので、しっかり対策をして苦難を乗り越えましょう。
余談ですが、根コブができたブロッコリーは、根が水分を吸うのを抑えられるので、非常に美味しいというのはご存じですか?
ブロッコリーの実は小さいですが、決して処分せず、プレミアムなブロッコリーとして、お付き合いがある飲食店などに提供してみてください。感動されます。