夏場の作物としてズッキーニの栽培をはじめたのですが、実が大きく育たない株が散見されます。
自然交配しているので着果のばらつきはあるのは確かですが、ここまで差があるのは経験したことがありません。
昨今の猛暑も影響している可能性があると思うのですが、なぜ実が大きくならないのでしょうか?
ほかにも考えられる要因はありますか?
夏場の作物としてズッキーニの栽培をはじめたのですが、実が大きく育たない株が散見されます。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
ズッキーニの実が大きくならないのは受粉不良と高温が原因
ズッキーニの収穫適期
ズッキーニはウリ科の1年草で、雌雄同株異花(一つの株に雌花と雄花が別々につく種類)です。雌花と雄花は別々に咲き、受粉することで雌花の下部の子房(果肉)が急成長します。
ズッキーニは開花後1週間以内の未熟果を収穫します。
一般的な円筒形品種については、開花から5日前後で、長さが15〜20センチ前後、果重が200〜300グラムになった頃が収穫適期です。
また、未熟な花着きの幼果を花ごと収穫するもの(花が咲く前の花がついた状態や実が成長する前の花のついた状態)は、花ズッキーニと呼ばれ、花に肉詰めする料理などに用いられることが多いです。
球形果の品種は未熟果でも品種固有の大きさ(6〜7センチ)になって収穫します。
それぞれの品種の特性を調べて収穫適期の目安を決めておくのが良いでしょう。
ズッキーニの実が大きくならない理由
ズッキーニは、低温や高温など環境の影響により、花粉に何らかの異常をきたし、受粉しても果実が大きくならないこともあります。
露地栽培では降雨の影響により花粉が流されて、受粉が上手くできないことがあります。
果実を大きくするには受粉が不可欠
定植後20〜30日で雌花の開花が始まります。開花初期には雌花しか開花しないことが多いです。
そのため、直まき栽培時のポイントは、確実な受粉のために雄花を確保するべく、播種時期を一部早めることです。
また、ポット育苗する場合は、意図的に老化苗を作ることで受粉に必要な雄花を確保することができます。
そのための苗を余分に仕立てておくと良いでしょう。
春先など、気温の低い時期で株が小さい時は雌花ばかりが咲く傾向があります。
授粉用の雄花(花粉)がない場合はホルモン剤散布により果肉を大きくできますが、種子はできません。
ズッキーニ果実を確実に大きくするためには、受粉による着果が不可欠です。
受粉を確実なものにするためには、人工受粉が必要になってきます。
受粉作業は、朝に行うのが原則です。
ズッキーニは早朝に開花するので、9時頃までには受粉を終わらせましょう。それ以降は、徐々に花がしぼんでしまいます。
高温による影響
近年のように、夏場の猛暑が続くと高温の影響を受けやすくなります。
夜間の気温度が30°C以上になると、雌花の開花が著しく抑制されてしまいます。
多くの地域での露地(外での)栽培では、定植後に夏期高温下での生育となるため、受粉不良と思われる先細り果や、果長10cm以下の短果といった規格外(奇形)果が発生して、収量が安定しないこともあります。
受粉不良と見られる規格外果は、受粉後(収穫日の3日前)の気温が30℃以上で発生がみられます。
規格外果の発生を抑制するには、遮光することです。
また、地温上昇抑制型のマルチを使用して遮光すると、規格本数も多くなり、収量も増します。
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。