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白紋羽病はどうやって治療すればいい?

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白紋羽病はどうやって治療すればいい?

梨の栽培をしている果樹農家です。先日、梨の圃場で白紋羽病のような症状が出ている樹を発見しました。

果樹の栽培では、白紋羽病に注意が必要だと農家の先輩から聞いていましたが、実際にどのように治療を行えばよいのかわかりません。

白紋羽病に効果的な治療方法について教えてください。

李 哲揆

データサイエンティスト

白紋羽病は農薬や温水で治療できますが、早期治療を心がけましょう

白紋羽病の症状


白紋羽病は、リンゴやナシ、ブドウ、イチジクなど多くの樹木に感染する病気です。

白紋羽病に感染すると、発病初期には症状を示しませんが、被害樹は次第に衰弱して、新梢(新しく伸び出た枝)の伸びが悪くなったり、葉色が淡くなるなどの症状がでます。

そして、発病樹の根を掘り上げると白色の菌糸がつき、症状が進行していくにつれて根が腐敗していきます。

特に若木は、成木に比べて突発的に症状が出ることも多く、初期発見が難しい病気です。発病すると2、3年で枯れる場合が多いです。


白紋羽病の3つの治療方法


農薬での治療


白紋羽病は、フロンサイドSCやトップジンMなどの農薬で治療することができます。

農薬による治療方法は土壌灌注と掘り上げ灌注の2種類があります。

1、掘り上げ灌注は休眠期に樹の周りの土壌を掘り、腐敗した根を除去してから薬液を潅注する方法です。労力がかかり、断根による樹勢の低下があるものの、白紋羽病への治療効果は高いです。
2、土壌灌注は生育期に土壌潅注器を使用して、薬液を潅注する方法は、樹勢の低下はありませんが、薬液の浸透にムラが出ると、効果が劣る可能性があります。


薬剤を用いた治療は、それぞれの薬剤のラベルをよく読んで正しく実施してください。


温水での治療


前述のとおり、農薬を使う治療は根部掘り上げに大きな労力がかかります。

白紋羽病の35℃以上の熱に弱い性質を利用した、温水による治療法も効果的です。

この温水治療は専用の機械で木の周りに50℃の温水を点滴し、地下 30cm が 35°C、あるいは地下 10cm が 45°Cを超えるようにします。農業用ビニール等で被覆して地温を約45℃で4〜6時間処理することで、白紋羽病を死滅させます。

比較的気温が高い6月から10月に処理するのが効果的です。

しかし、温水による過剰処理は樹木自体にダメージを与えるので、注意が必要です。

ぶどうの場合は地温45℃で6時間までだと、障害が発生しないとわかっているので、この時間を目安に処理を行いましょう。

この方法は梨、リンゴ、ぶどうに対する治療効果と安全性は確認されていますが、その他の果樹については未確認ですので、注意が必要です。

詳しくは「白紋羽病温水治療マニュアル」を参考にしてください。


拮抗作用のある微生物での治療


トリコデルマ菌などの拮抗作用のある菌を樹の周りに散布することで、白紋羽病の治療が可能です。

しかし、白紋羽病の病原菌の菌密度が高い場合には、治療効果が薄い可能性もあります。

そのため、拮抗作用のある微生物を使った治療では、温水治療との組み合わせがおすすめです。

温水治療で病原菌の菌密度を低下させ、根に拮抗作用のある微生物を感染させることで、より高い効果が期待できます。


白紋羽病の治療で気をつけること


早期治療を心がける


白紋羽病の治療は、早期発見・早期治療治療が原則です。症状が重くなってしまうと治療が困難になります。

もし、白紋羽病に罹患したら、被害樹の周りの樹も感染していないか確認しましょう。

外見に変化が現れていなくても、根が感染している可能性があるため、枝挿入法(果樹の枝を樹の周りに挿して感染を確認する方法)で見分けることができます。


樹勢の回復に努める


白紋羽病に感染した樹木は根が痛むことで樹勢が弱っています。したがって、治療中は着果の負担を減らしたり、過度な剪定を避けるなど、樹へ負荷がかからないように注意しましょう。

また、白紋羽病の症状が重い場合には、数年間は着果数を減らして樹勢の回復を優先させます。


白紋羽病の治療方法を知り適切な治療を行おう


白紋羽病は農薬や温水、拮抗作用のある微生物などを使用して治療が可能です。

しかし、重症の場合には治療が困難になるため、早期治療を心がけましょう。

また、白紋羽病は発見するのが難しい病気で、健全そうに見えていても根では病気が進行している可能性があるので、普段から樹木を観察し、兆候が現れていないか確認しましょう。

このお悩みの監修者

李 哲揆

データサイエンティスト

名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士(農学)を取得。東北大学、東京大学、理化学研究所などを経て、2018年からは東京農工大学生物応用システム科学府にて助教を務める。主な研究テーマは土壌微生物を用いた環境に優しい農法の開発。2021年4月から民間企業でデータサイエンティストとして働く。

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