兵庫県の丹波篠山にある自然豊かな農村で、旬の野菜や米を栽培しています。
なかでもイモの栽培に力を入れており、特産品である「山の芋」を丁寧に育てています。
自然に囲まれた環境なので、中型動物の被害が多く、防護柵や罠は設置しているのですが、最近になってアナグマの被害が目立ちます。
アナグマは巧妙に柵の下を掘って農地に入り込み、好き勝手に荒らしていくので、非常に悩ましいです。
現在は、知り合いの猟師に相談して、駆除を手伝ってもらっています。しかし、被害は一向に減る気配がありません。
このまま被害が増えていくのをなんとかして食い止めたいです。アナグマを狙いうちする駆除方法や対策があれば教えてください。
(兵庫県・藤原さん/仮名・50代)
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
アナグマ対策は、被害が出る前に食べ物と営巣環境を無くしましょう
アナグマは対策が難しい動物です。
イタチの仲間なのでタヌキやハクビシン、アライグマなどに見られるような執拗な探査行動を行いません。
また、一度美味しい食べ物があると知ってしまうと、侵入防止柵などの障害物に対しての探査行動を一切行わず、自分が得意な掘る作業ばかりを優先します。
アナグマ対策で重要なことは「食べられてからでは遅い」ということ。
ご相談者さんの畑の近所に生息している形跡があるなら、被害が出る前からの準備を心掛けてください。
もうひとつは、電気柵を設置しても、一般の段張り方式では防ぐことが難しい点です。
段張り方式の場合、漏電のリスクから地上からの1段目がどうしても高くなります。この部分の間隔が、10cm以上になると間違いなく、ここを狙われます。
電気柵を導入する場合は、このコーナーでも何度かご紹介している埼玉県の農業技術研究センターで開発した「楽落くん」方式の複合柵が良いと思います。
被害が出る前に設置できれば、一定の効果は得られると思います。なお、金属や樹脂ネットを使った物理柵であっても「被害が出る前」の考え方は同じです。
物理柵は、電気柵と違って心理的な衝撃である「痛み」がありません。アナグマが食べたいと思ったら、侵入行動はどんどんエスカレートするので注意が必要です。繰り返しますが、アナグマの被害を防ぎたかったら「本気にさせない」ことです。そのためには事前準備が最も重要ですね。
アナグマ被害を将来的に減らしていくためには、総合的な対策が必要です。動物が定着するためには「食べ物」と「休息・繁殖場所」が必要です。つまり「畑を守って食べ物をなくす」「畑周辺に生えているヤブなどの雑草を刈り払って、巣穴を掘れる環境を無くす」ことが重要なのです。
それでも畑に食べ物を依存している個体が存在する場合は、捕獲となるわけです。アナグマは捕獲も比較的難しい動物です。とくに巣穴周辺ではなかなか捕獲できません。畑に食べるものが豊富にあれば捕獲は進みません。
捕獲を優先してしまうと、アナグマの個体数が増加するスピードに、捕獲が追い付かなくなります。野生動物対策には優先順位があります。アナグマ対策にはとくに重要です。