福岡県でアスパラガスの栽培を行っています。
現在は産地直送の販売店に卸していて、地元の方にアスパラを購入していただいています。
アスパラガスの栽培はまだ2年目で、アスパラガスが好きという理由でスタートしましたが、夏場の雑草対策に悩んでいます。
いまは敷き藁を敷いて対応していますが、土壌が原因なのか、どうしても雑草が生えてきてしまいます。
知人に相談したところ「除草剤使えば?」と言われましたが、なるべく除草剤などは使用したくありません。ほかに何かいい方法はないでしょうか?
(福岡県・上重さん/仮名・40代)
後藤啓介
YOZE FARM
コストはかかりますが防草シートや選択制の除草剤で対処することも可能です
少しコストはかかりますが、畝以外の部分の通路やハウスの裾に防草シートを敷くという対策が農繁期の作業負担を減らすには一番かと思います。
私も実際にそうしております。
また、アスパラの芽が動き始める前に、ロロックスやセンコルなどの選択制の除草剤を畝全面に散布することで雑草の発芽を抑制できます。
さらに、冬場の片付けの時期に堆肥を畝に乗せ、灯油バーナーで十分に畝を焼却すれば雑草の発芽を抑制できます。
除草剤を使わないという選択肢を選ぶ場合は、覚悟を持って草を手で処理するしかないということを念頭に置きましょう。
三谷英嗣
香川県畜産試験場 養鶏担当 主席研究員
ニワトリの放し飼いで除草作業の効率化を行った事例を紹介します
アスパラガスにはさまざまな栽培方法がありますが、北海道や長野県など東日本では露地栽培、西日本では雨よけのハウス栽培が一般的です。
そして、一定期間春芽を収穫したのち、その後は1株あたり数本を成長(立茎)させて、夏から秋にかけて収穫します。
播種してから収穫できるまで成長させるには時間がかかりますが、3年目以降は長期にわたって収穫できるようになるので、私が滞在する香川県でも人気の品種です。
夏場のハウス内でしゃがんで行う除草作業は非常に過酷です。相談者さんもご存知の通り、除草剤を使ってアスパラガスに直接かかると障害が起こるため多くの農家が人の手を使って草取りをおこなっています。
参考までに、香川県では2003〜2004年にかけて除草作業の効率化をはかるために、ハウスに放したニワトリに除草作業をさせる実証実験のご紹介をします。
実験に使用したのは香川県の採卵用の讃岐コーチン7羽(81日齢)です。
ニワトリは2003年と2004年の初夏からその年の終わりにかけて全19カ月間、3連棟式のアスパラハウス(面積1000平米)に放されました。
その結果、当初は繁茂する雑草が多かったところ、夏以降、スギナ、メヒシバ、スベリヒユ、ツユクサなどの雑草をほぼ完全に取り除くことができたのです。
実験期間中に、除草剤は一切使っておりません。また、ニワトリが雑草を食べることで下記のようなさまざまな効果が現れました。
注意していただきたいのは、鶏は草だけでは生きていけないので計算された採卵鶏の飼料も適度に与えることが必要だということです。これにより体の維持と安定した産卵を保つことができます。ただし、飼料を与えすぎると満腹になってしまって除草しなくなるので、観察することで適切な給与量を調整してください。
1、草中に埋もれていたアスパラの新芽を誤って刈り取るミスが減少
2、ヨトウムシなどの害虫が隠れる場所がなくなったことで殺虫剤の防除効果が高まり、薬剤の使用自体が減って減農薬野菜として売れるようになった
3、7羽から出たフンは1カ月あたり約24kgになり、堆肥として利用可能
4、7羽をハウス内で飼育することで、毎日、新鮮な卵が収穫された
また、作業中にニワトリと触れ合うことで、作業者の心の潤いにもなったのも嬉しい効果の一つです。
その一方で、ニワトリの飼育に伴い餌代や野犬を防ぐための電気柵の設置、ネットを内張りするなどの経費がかかってしまう面も見受けられました。
また、ニワトリが土中のミミズや虫をとるために、畝に穴を掘ったり、アスパラの根を露出させたり、歩き回ることで土の表面を踏み固めてしまうなどといったデメリットも報告されています。
この実証実験におけるアスパラの収量については、最初の年はほぼ平年並みでしたが2004年は減少しました。ただし、ニワトリの放し飼いが原因かどうかは検討する余地があります。
私たちが実験したのは、香川県が改良した讃岐コーチンだけなので、他のニワトリでも応用できるかどうかは別途検討する必要があります。
また、野犬からの保護のための初期投資がかかるのが課題になっておりますが、この農法を取り入れた農家の中にはハウスの外側に建てた鶏小屋とハウスの間をトンネルでつなげるという対策をとった方もいます。
夜は鶏小屋の中で保護することで経費削減に繋がったと言います。
ご参考になれば幸いです。