今までやってきた作業を振り返ったり、残存肥料を調べたりするために、10年前から農業日誌をつけ始めました。
その頃から書き方や記録内容など、自分なりにいろいろ試しているのですが、まだ上手に農業日誌をつけられません。
具体的にどんな項目を書き残せば、栽培方法を改善するための記録になるでしょうか?
また、将来のために残しておいた方がいいことはなんでしょうか?
私ひとりで農業をしているので、できるだけ手軽に記録する方法があればとても助かります。
日誌や記録をつけていらっしゃる方、どんな方法で記録していますか?
記載すべき項目を細かく教えてもらいたいです。
使いやすいノートや、最近ではスマホやPCで記録する人も多いのでしょうか?
(北海道・木村さん/仮名・30代)
伊東悠太郎
水稲種子農家
ゴールから逆算して書いてみましょう。Z-Gisなどのシステムを使うのもおすすめです
まず「どんな項目を入れれば良いか」からスタートするのではなく、「どんなことを知りたいのか、改善したいのか」というゴールから逆算していく方が良いのではないかと思います。例えば、「代掻き(しろかき)から田植するまでの日数をもう少し短くしたい」というゴールであれば、「代掻日」と「田植日」を記録しておけばいいわけです。
「どんな記録が将来の役に立つのか」というご質問も同様で、何を改善したいのか次第かと思います。そのためにも、
1、栽培から収穫までの必要な作業を大項目
2、1に関連する作業を小項目
というように区分しておけば、自分の頭も整理できますし、改善したいことが見つかった時に、いつ、何を実行すれば良いかも分かると思います。
手軽に記録するには、手書きよりパソコン、スマホの方が良いと思いますが、ご自身のやりやすい方法を優先させてください。私の場合は、圃場の白地図をたくさん準備しておき、作業ごとに、日付や銘柄、数量などの情報を記録します。それを、時間があるときにパソコンでExcel(表計算ソフト)にまとめて管理しています。
また、記録はご自身だけのものではありません。家族や関係者などと共有しやすい状態にしておくと、後々まで役立ち、改善もしやすいのではないかと思います。私のおすすめは、全農の営農管理システム「Z-GIS」です。地図とエクセルが合体しただけのシンプルな作りで、記録しておきたい項目を自分で自由に設定できます。
他にも「アグリノート」や「アグリハブ」「KSAS」「豊作計画」などがありますが、ご自身で使いやすさを比較してみてください。
村山邦彦
伊賀ベジタブルファーム株式会社
日誌をつける目的を考えて、それを意識しながら記録しましょう
日誌をつける目的を明確にすると、記入すべき内容も自ずと決まります。記録をとる際には、何のために情報(データ)を集め、それを どのように活用、分析するのか、意識することが大切です。
考える前に、自分の農場経営に関して何を改善していく必要があるのか、そのためにはどの辺りを詳しく把握しておきたいのか、そのために必要となるデータは何か、といった具合に考えるのが良いと思います。
栽培に関しては、例えばある肥料の効果があるのかないのか、水はどのくらいの量を与えたら良いかなど、技術的な判断材料が欲しい場合が多いと思います。こうした判断を迷いなくできるようなデータを残すことが大事です。
例えば、ある肥料と別の肥料を比較したければ、きちんと区画を分けて、生育の様子を写真で比較したり、収穫の際も区画ごとに重量を測るなどして、できれば一回で明確に判断ができるように工夫をします。そんな風に毎回データを活用して、しっかり分析、改善を行い、一歩一歩前に進んでいく農業者は頼もしいものです。
経営に関わる指標を見る場合、それはもっと顕著になります。例えば「利益率を上げるために経費を削減したい」という目的なら、「売上」「資材費」「労働時間」などを集約して、記録しておく必要があります。
いくつか生産している作物があり、その生産品目ごとの利益率を知りたいのであれば、作業時間や肥料、資材の使用記録を品目ごとに整理しておく必要があるでしょう。
実際にそれらを記録し始めてみると面倒くさいと思われるかもしれません。でも、明らかに収益率の劣る品種がデータではっきり示されれば、翌年はもう作らない、といった対応をスムーズに進めることができますよ。