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ヤギの糞を牧草地に撒くと寄生虫が増えそう。どう対策すべき?

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ヤギの糞を牧草地に撒くと寄生虫が増えそう。どう対策すべき?

有機栽培で多品目の野菜を栽培している農家です。数年前に自然を取り入れた暮らしに憧れてサラリーマンを辞め就農しました。

昨年から搾乳目的で子ヤギ(日本ザーネン種5頭でオス1頭、メス4頭)を飼い始めました。

今年種付けして、来年から搾乳し、カッテージチーズなどの加工も検討しているところです。

ヤギは舎飼いですが、天気のよい昼の間は飼料作物を栽培する畜舎脇の畑に放しています。

ヤギの糞は畜舎の脇に山積みになっている状態ですが、近々これを牧草地に撒きたいと思っています。

ただ、寄生虫の発生が気がかりです。一応、寄生虫予防のために駆虫処理は5月から10月まで月1回ずつ行っています。

糞を牧草地に撒くと寄生虫が牧草地に広がる可能性はあるのでしょうか? また、牧草を食べるヤギたちが寄生虫の被害にあわないようにするには、どういった点に気をつければよいですか?
(福島県・安斎大介さん/仮名・40代)

加藤武市

加藤技術士事務所

牧草地の寄生虫の汚染を防止するには、堆肥作りによって寄生虫を殺す必要があります

ヤギを放牧する際に起こりやすい疾病には、牛に寄生する糸状虫(牛には障害を与えない)がヤギの中枢神経系統に迷い込む「腰麻痺(脳脊髄糸状虫症)」などの外部・内部寄生虫症をはじめ、熱中症、消化器障害、有毒植物による中毒などがあります。

日本在来種のシバヤギやトカラヤギと、南方系品種のヌビアンや、沖縄に導入されたボアには、腰麻痺に対する免疫(抵抗性)があります。

一方で、ヨーロッパ原産のザーネン、アルパイン、トッゲンブルグなどは、病気に対する抵抗力を持たないため、駆虫が必要です。なお、前者と後者の品種を交雑することで、病気にかかるリスクを小さくすることができると言われています。

ヤギにとっての代表的な有害植物には、アセビ、ツツジ、ナンテン、チョウセンアサガオ、ヒガンバナ、キツネノボタン、スイセン、イチイなどがあります。

本題からは脱線しますが、子ヤギが野犬に襲われることもあるので、電気柵を使った対策も必要があります。「全国山羊ネットワーク」の「山羊の飼い方」に詳しくまとめてありますので、参考にしてみてください。

ヤギは、特に多頭飼育をしている場合、内部寄生虫対策が重要になりますので、農場に寄生虫汚染実態に応じた投薬プログラ ムが必要です。

長野県の伊那家畜保健衛生所では、ヤギ牧場で死亡した子ヤギから重度のコクシジウム寄生が確認されたことから、寄生虫症の低減に向けた取り組みを行なっていますが、その報告書によると、ヤギに「トルトラズリル製剤」を投与することでコクシジウムの症状悪化に対する改善効果が認められています。

一方、「イベルメクチン製剤」の注射では、抑制効果は確認されなかったとありますが、「塩酸レバミゾール製剤」という駆虫薬を経口投与したケースでは、一定の効果が報告されていますので、万が一、発生した場合の参考にしてください。

次に畜舎環境について考えてみます。寄生虫感染が確認された子ヤギと接触することで、複数の畜舎で感染が拡大する恐れがありますから、感染拡大を抑制するために子ヤギだけ独立させた飼養スペースの確保にくわえて、転換放牧など管理方法面での改善を行うことが考えられます。

また飼料の中身についても、栄養面の改善や、弱い個体も食餌にあぶれないようにすることで、農場全体の免疫力をアップするようにしてください。

ポリフェノールの名前で知られる「タンニン」を多く含む植物は、内部寄生虫の抑制効果とともに、軽い下痢や軟便のヤギに与えると症状が改善される場合があると言われています。ヤギはタンニンの苦味をあまり気にしませんので、タンニンを含む桜などの枯葉を好んで食べます。
 
さて、ここからが本題に入りますが、寄生虫の汚染を防止するには、堆肥作りによって寄生虫を殺す必要があります。堆肥は発酵すると約71℃まで上昇するので、主な病原体を殺すには十分な温度です。以下、ヤギ糞の堆肥の作り方をご紹介します。

▼ヤギ糞堆肥の作り方

家畜の糞尿を主体に、敷きわら、稲わら、オガグズなどを混ぜて、堆積して十分に発酵させます。この時に米ヌカを利用すると、微生物のエサになるので、発酵が促進されますから、オススメです。

具体的には、稲わらと腐葉土を層状に積んでいき、その際に米ヌカを散布してよく絡め、水をかけることを繰り返します。

ちなみに、どれくらい水をかけるかというと、水が混じったものに圧力をかけると、ジワッと水が染み出しますが、決してボタボタしたたり落ちない程度です。

握ってみた時に、手を広げると、形が崩れず、塊状になるのが目安です。全体の材料に対して、含水率60%を目標に潅水量を調節してください。水を加えるのは、ヤギの糞は元々、水分含有量が60%程度と少ないからです。

1)積み込みのコツ
ヤギ糞と敷きわらを1:1の割合で混ぜて、30cm程度の高さに積んだら、よく踏み込みます。この時に必要に応じて少量の水を加えます。これを繰り返し、1.8mの高さまで積み上げます。

堆肥用の温度計を利用して発酵温度70 ℃程度まで上げるようにします。先述したように、堆肥は71度まで上昇しますが、雨水がかかると、発酵速度や堆肥の出来に影響するので、雨除けにビニールが必要です。
 
2)切り返し
積み込み後は発熱に注意して、2週間後に1回目の切り返しを行って、酸素をよく行き渡らせます。その後、3週間後に2回目の切り返しを行います。夏季で 2カ月、冬季で 4カ月で堆肥ができあがります。

ヤギの糞は、同じ反芻動物である牛の糞と同じく、炭素と窒素の比率(C/N比)における炭素の割合が高いので、土づくりに効果があります。鶏糞に比べて窒素が少ないのです。

繰り返しになりますが、寄生虫が放牧場全体に広がらないよう、堆肥作りは寄生虫を殺す温度管理がカギを握ります。

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