瀬戸内の多島美を望むしまなみ海道。離島が連なる広島県と愛媛県の県境近くに、「大三島(おおみしま)」があります。
2015年、川田(かわた)さんはこの大三島で醸造用ブドウの栽培を始めました。
現在は島内でワインを製造販売する「大三島みんなのワイナリー」の栽培・醸造責任者として、契約農家とともにメルローやマスカット・ベーリーAなどの品種を育てています。
柑橘類の産地でもあるしまなみ海道ですが、川田さんが栽培をはじめるまで、大三島で醸造用ブドウを栽培した実績はなかったそうです。
大三島は花崗岩が風化してできた「真砂土」の土壌でした。
「水はけの良い場所のほうがおいしいワインができるので、最初に見たときには「これだ!」と思った」という川田さん。
しかし、いざ育て始めてみると、それが逆に大きな課題となることに…。
保水性が弱く根張りが浅い土壌の影響で、着色と糖酸度バランスに問題が…
真砂土の土壌は保水性が弱く、肥料の持ちも悪いという特徴があります。水が必要な生長段階で作物に水不足が起こると、思うように生育せず、元気な果実が付きません。
川田さんはこれまで、牛糞を入れて耕し、木を砕いたチップをすき込むなど工夫をしてきましたが、土壌改善の効果が出るには時間がかかってしまいます。
また、土壌中の水分が表面の層にあるので、「根の張り方が浅くなってしまう」という課題も。
根の張りが浅いと、ブドウが土壌の中から吸い上げる栄養のバランスも偏ってしまい、ワインの風味に影響してしまいます。
さらに、収穫時に直面したのが、ワインの品質の肝となる「着色」と「糖酸度バランス」の問題です。
醸造用ブドウの品質評価は、生食用のブドウとは正反対で、皮が厚く、種がしっかりしていて、水分が少ないものが理想的です。
しかし、大三島で実ったブドウは、皮の着色が弱いという特徴がありました。
ブドウの果実は、収穫前の昼夜の温度差によって成熟が進み、糖度が上がって酸度が下がり、色を付けます。
ところが、島の気候は夜温が高いため、生理障害が起こって着色不良が発生するということがわかりました。
糖度が低いと発酵が進まず、アルコール度数が低いワインになってしまいます。かといって、成熟を待ちすぎると酸度が過度に下がり、酸味が乏しいものになってしまうというジレンマに、川田さんは頭を悩ませていました。
レコルトの効果で果実の成熟が進み、着色と糖酸度が改善!
ある時、九州の先輩ブドウ農家さんから腐植酸苦土肥料「アヅミン」を使ったところ、生育に効果があったと聞いた川田さん。
さらに、液状複合肥料の「レコルトを散布すると成熟が進んで収穫が早くなる」という話を聞いて、腐植酸資材に興味を持ち、果実の糖酸度の変化を測定してみようと考えたそうです。
はじめに、メルローの畑に試験区画を設けて、アヅミンとレコルトを別々に散布。
アヅミンは直接根に作用させるため、7月に4区画・合計48平方メートルへ5キログラムを施肥し、レコルトは500倍に希釈して、8月と9月の2回、合計24メートルの区画に葉面散布しました。
その結果、特にレコルトを使った樹の果実には、あきらかな効果が現れたそうです。
(左)1区 レコルト施肥区 (右)2区 対照区
(左)3区 レコルト施肥区 (右)4区 対照区
「何もしなかった区画より明らかに全体的に果実の糖度が上がり、滴定酸度が下がっていました。実の色も目に見えて濃くなっていたんです。果実の成熟が進んでいたのは確かです」と話してくれた川田さん。
さらに、着色や糖酸度バランスの改善だけでなく、さらなる効果も。
樹勢が弱いという課題もアヅ・リキッドの散布で、ブドウの樹が元気になった
大三島のブドウは、川田さんが研修などで見てきた県外のブドウよりも、樹勢が弱いという課題がありました。
例えば、マスカット・ベーリーAは樹勢が強いという特長がある品種です。ところが大三島では「垣根仕立てもいけるぐらい低い」とのこと。
樹の高さは品質そのものには関係しませんが、収穫可能な段階まで生長するのに時間がかかるのは、農家にとってダメージです。
そこで川田さんは、1年目と2年目の苗木に、1000倍に希釈した液状複合肥料の「アヅ・リキッド」を散布してみることに。
対象は、アルバリーニョやメルローなど合計120本。7月と8月の2回、1本あたりおよそ4リットルの量を与えました。
アヅ・リキッド施肥区(アルバリーニョ)
対照区(アルバリーニョ)
すると、アヅ・リキッドを与えていない樹は葉が黄色く変化し、落ちているものも多かったのに対し、施肥した樹には11月でも葉が落ちずに残っていたそうです。
「これまでに見たことがないほど青々としていた」と驚いた様子で伝えてくれた川田さん。
アヅ・リキッドが根にも素早く作用し、植物生理に働きかけることで果樹の生きる力を助けたのです。
他の産地にもノウハウやデータを共有して、国産ワインを盛り上げたい!
川田さんは「特にレコルトの即効性が興味深かった。今後は『冬~春先にアヅミンを撒いた場所で夏にレコルトを葉面散布する』といった合わせ技で、さらに効果が見られるかどうか試してみたい」と考えているそうです。
今後の目標については、「醸造設備で生産できる最大量の年間20,000本を生産すること。日本ワインは世界に比べればまだまだなので、日本の産地全体で盛り上げたい。そのために必要なノウハウやデータは積極的に共有していきたい」と笑顔で語ってくれました。
野菜と比較すると変化が現れるまでに時間がかかる果樹にも、着実に効果をもたらした腐植酸資材。
果樹の生育や土壌改良に困っていることがあれば、今回の事例を参考に試してみてはいかがでしょうか。
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【問い合わせ先】
・購入先はこちら
https://denka-agriproducts.tayori.com/faq
・アヅミンの詳細はこちら
https://denka-azumin.jp/
・アヅ・リキッドの詳細はこちら
https://www.denka.co.jp/product/detail_00067/
・レコルトの詳細はこちら
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