神奈川県の三浦半島で農家をしています。三浦半島は寒暖差があり、海から潮風で運ばれてくるミネラルの影響で、栄養価の高い野菜が栽培できます。
しかしここ数年、タイワンリスの被害が急激に増えてきて困っています。
とくにサツマイモ、キャベツ、大根や果実が食い荒らされ、木造倉庫に侵入されて巣を作られたこともあります。
少しでも繁殖を防ぎたいので、あえてタイワンリスの好物であるゆずや金柑などを栽培するとともに、市から捕獲用の箱罠を借りて捕獲しています。
近隣の農家と一緒に頑張って、結構な数を捕獲して駆除してきましたが、一向に減る気配がありません。
被害を少しでも減らすために、どうしたらいいのか、専門家の先生に助けていただけないでしょうか。
(神奈川県・佐々木さん/仮名・50代)
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
タイワンリス対策は、地域ぐるみで複数の箱わなを樹上に設置する必要があります
タイワンリス(正式名:クリハラリス)ですね。とても修敏な動き(人の目でみると瞬間移動)をするので、電気柵などでの対策事例は記憶にありません。
どの程度の学習能力なのかも解明されていません。柵上電気柵などは上部を移動する行動特性があるので効果は期待できると思いますが、柵上電気柵による個体数の減少事例は報告されていません。
実際、私も実験をしたことがありません。対策の成功事例としては、エリアを絞った捕獲により根絶させた事例があります。しかし、生息数が100頭未満の増加初期段階の地域です。
神奈川県では、横須賀市、鎌倉市、逗子市、三浦市、葉山町の4市1町で捕獲対策を行っています。横須賀市「外来生物バスターズモデル事業実行委員会」が発行したリーフレットによりますと、三浦半島では北は横浜市緑区から、西は大磯町まで全域の樹林に分布しています。
気になるのが、相談内容にあったキャベツや大根まで食べるかどうかです。クリハラリスが野菜被害まで起こしているとしたら要注意です。
現在の対策としては、防護柵の成功事例が確認できない状況では捕獲の強化しかないかもしれません。
無駄と思われるほどの複数の箱わなを樹上に設置して、年間を通じて捕獲作業を実施する必要があります。
横須賀市のリーフレットによると、タイワンリスは目で餌を確認してから寄ってくるので、箱わなを藪に隠したり、カモフラージュする必要はありません。
よく使われている餌は、種のある柑橘類、落花生、スナック菓子など…。ただ、これもご相談者さん個人で対応するのは限界があります。
地域ぐるみで行わなければ供給が上回ってしまう結果となりますね。
横須賀市では、小型の箱わなを無料で貸し出して、個体の回収から殺処分を指定の業者が行っていますが、ご相談者さんも神奈川県環境部に、最寄りの自治体の対策を確認できると思います。
実際、すでに畑の物を食害しているのでしょうか?そこが気になりますね。畑を荒らしているとなれば対策技術を開発しなければならないと思います。