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Editor’s Eyes 農機具のプロがオススメする!あると便利な水田グッズ3選

Editor’s Eyes 農機具のプロがオススメする!あると便利な水田グッズ3選

YUIME Japan公式コメンテーターとして、各地の農家から寄せられた農機具の悩みに答える東 直斗(ひがし なおと)さんは、全国でも珍しい農機具の宅配レンタルサービス事業を展開する農機具の専門家です。

本格的な田植えシーズンが始まるこの時期に、準備しておくと便利な、水田作業用のアイテムをご紹介します。

水稲農家だけでなく、ビニールハウスで育苗する生産者にも役立つ道具もありますよ!

東さんがオススメする水田作業用アイテム
・苗の運搬が劇的に効率化!育苗のお供/ホクエツ ナエローラー
・安くて手軽に使えるエンジンポンプなら工進のハイデルスエンジンポンプ
・刈払機に取り付けて部分除草しながら酸素供給もできる美善の水田カルチ

稲藁を刈り取り、そのまま穂先だけ脱穀できるコンバインは、米の収穫にかかる時間を飛躍的に短くした稲藁を刈り取り、そのまま穂先だけ脱穀できるコンバインは、米の収穫にかかる時間を飛躍的に短くした

農機具は地域や耕地面積によってニーズが異なる

こんにちは、農機具・農業資材専門の通販サイト「アグリズ」を運営している藤原農機の東 直斗です。前回の「耕うん機」に続いて、早くも4回目の登場です。

和歌山県を拠点に、「全国向けの農機具の宅配レンタル」という一風変わったサービスを運営しているプロとして、普通の農機具屋さんやメーカーとは異なる視点で農機具をオススメしてほしい!という編集部からの要望に応えるべく、今回は、水田作業用のアイテムをご紹介します!

田植えの時期といえば、ほとんどの地域では毎年5月〜6月ごろに作業される方が多いと思います。皆さんのなかにも、3月後半になってくると、そろそろ本格的に準備を始めないと、とソワソワし始める読者も少なくないのではないでしょうか。

一般の日本人が考える農作物の主役といえば、お米というイメージがあります。

しかしプロの視点で見ると、同じ作物を栽培するにしても、使用する農機具は、地域や耕作面積によって、サイズや仕様も大きな違いがあるのです。

ちなみに私が住む和歌山県は、耕地が少ないので、昔から山あいの傾斜地を活かしたみかんや梅、柿や桃などの果樹栽培で知られています。

そのため、傾斜地に作られた狭い農地ではトラクターやコンバインは小回りが効く方が使いやすく、多くの農家が小型の機種を選びます。一方、北陸や東北地方の米どころを訪れると、巨大な農機が広い圃場を走るようすを目にしますし、県外の生産者からお問い合わせを受けた際には、地域によって需要が異なることを感じます。

昔ながらの稲架掛けのようす
昔ながらの稲架掛けのようす
和歌山県の場合、山間部の棚田が多い地域では、自走式の「バインダー」を使って、1条とか2条分の稲を刈り取るのが一般的です。その後は、昔ながらの丸太を使った「稲架(はさ)掛け」で、束ねた稲を天日干しさせてから、脱穀は「ハーベスター」という専用の機械で行うやり方もまだまだ残っているのですが、こういった農機具は米の生産量が多い地域では、あまり見かけることがありませんね。

農機具の地域性の考察もおもしろいのですが、この連載は全国のさまざまな地域の生産者に読んでいただいておりますので、今回は、全国どこでも使える水田向けの便利アイテムをご紹介したいと思っています。

苗の運搬が劇的に効率化!育苗のお供ならホクエツのナエローラー

ナエローラーと別売のスタンドの組み合わせ(ホクエツ提供)
ナエローラーと別売のスタンド(脚部)の組み合わせ(ホクエツ提供)
最初にご紹介したいのが、田植え前に行う播種・育苗作業関連のアイテムです。

毎年の作業とはいえ、重い苗箱を数枚持ってハウスや播種機を移動したり、用水路を越えて育苗箱を移送する負担を考えると、また今年もあの時期が来たか…と憂鬱な気分になる読者も多いのではないでしょうか。

播種機からの移動や、ハウス内の移動のためにローラーコンベアーを設置すれば、非常に効率的になりますが、ローラーコンベアは重いうえに、設備投資にもお金がかかります。

そこでオススメしたいのが、株式会社ホクエツの「ナエローラー」です。

ものづくりの町として知られる新潟県燕市を本社とするホクエツは、農業機械や農業資材の開発・販売を中心とした事業を展開されていますが、米どころの企業だけあって、とりわけ稲作に関する製品の開発に優れています。1973年設立ということですから、今年2023年は、ちょうど創業50周年にあたります。
ナエローラーは1.8mが2本でセットになっている(ホクエツ提供)
ナエローラーは1.8mが2本でセットになっている(ホクエツ提供)
「ナエローラー」は、育苗箱サイズを搬送することに特化した商品で、軽くて安価な樹脂製のローラーを使っています。1.8メートルが2本1組になっていて3.6メートル。

ワンタッチで何本でも接続可能ですし、移動や設置が楽な軽量設計なので、しゃがんだり、中腰姿勢で作業することが多く、腰痛の悩みを抱える農家さんにとって、強い味方になります。

表と裏の両面が使用できるのも特徴のひとつ。ローラー軸を挟む左右のガード板の距離は32センチとなっているので、一般的な幅30センチ程度の育苗箱であれば表面を使います。

幅が32センチ以上の大きな荷物を運ぶ場合は、ローラー面を裏返して使います。ローラーが側面のガードの上にはみ出す構造なので、運搬可能です。

ローラーの間隔内ならば、育苗箱以外でも運べますから、田植えシーズンが終わっても農機具の運搬など、さまざまな用途に使える便利なアイテムなんですね。
2020年3月に導入した宮城県の農場のハウスの様子(ホクエツ提供)
2020年3月に導入した宮城県の農場のハウスの様子(ホクエツ提供)
こちらのハウスのように、足場代わりに収穫用コンテナなどを使うのも良いですし、オプションでナエローラースタンドもされているほか、育苗箱を置くと自動で送り出してくれるコンベア専用の「楽走(らくそう)」という製品(手前の緑色のフレームの部分)も開発されています。

ナエローラー3.6M/株式会社ホクエツ

外形寸法 長さ180cm×幅36cm×厚さ6cm
ローラー部分の幅 18cm
重量 15kg(180cm×2)
材質 スチール(ロール部分は塩ビ製)
標準価格(税込) 3万8,500円
以下は別売のオプション
・ナエローラースタンド4-MR(4脚セット)1万4,300円
・電動苗送りコンベア楽送NRS-15A 14万8,500円
▼製品に関する問い合わせや購入は、最寄りの農機具販売店まで。
 メーカー公式サイト
藤原農機「アグリズ」での購入先

安くて手軽に使えるエンジンポンプなら工進のハイデルスエンジンポンプ

ハイデルスエンジンポンプ。戦後、さまざまなポンプ開発から発展した歴史を持ち、「ポンプは工進」という呼び名も高い(工進提供)
ハイデルスエンジンポンプ。戦後、さまざまなポンプ開発から発展した歴史を持ち、「ポンプは工進」という呼び名も高い(工進提供)
次にご紹介するのは、工進株式会社の「ハイデルスエンジンポンプ SEV-40X」です。ガソリンを燃料としているエンジンポンプは、用水路や池、川などから水を汲み上げ、田畑に灌水したり、農機具にこびりついた泥の洗浄などに使われます。

水の管理は田んぼで最も重要ですから、水稲農家にとっては一般的な農機具です。

工進の製品は、この連載2回目の動力噴霧器にも登場していますが、同社は1948年の創業以来、もともと“ポンプ一筋”で製品開発をしてきました。

農家であれば、誰しも一度は「ポンプは工進」というキャッチフレーズを耳にしたことがあるかもしれません。農業用エンジンポンプの製造販売では、国内トップクラスのシェアを誇り、世界160カ国以上で販売されている大ベストセラー商品なんです!
工進オリジナルの4サイクルエンジンを搭載(工進提供)
工進オリジナルの4サイクルエンジンを搭載(工進提供)
そんな工進のエンジンポンプのなかでも、SEV-40Xは「インチ半」と呼ばれる機種です。エンジンポンプは、吐出口の口径の規格に合わせて、俗に「1インチ(約25mm)」「インチ半(約40mm)」「2インチ(約50mm)」と呼ばれますが、こちらは口径40mmのホースで水を吐き出すタイプです。

水の吐出量は使用するホースの長さでも変わりますが、最大で1分あたり約340ℓを吐き出しますので、水田で使うには充分なクラスになるかと思います。

最大の魅力はやっぱり価格です。一般的にこのクラスの性能を持つエンジンポンプとなると、本体だけで10万円近くになりそうですが、このSEV-40Xは非常にお手頃で3万円台で購入できるお店がほとんど。

エンジンポンプというと一家に1台は持っておきたい必需品ですが、1年間にそんなに頻繁に使うものでもないので、手頃な価格で製造販売してもらえるのは非常にありがたいのではないでしょうか。
エンジンポンプの部品名(工進提供)
エンジンポンプの各部品名(工進提供)

ハイデルスエンジンポンプSEV-40X/工進

本体サイズ 長さ53.9cm×幅39.1cm×幅41.3cm
重量    26.5kg
ポンプ口径 吸入・吐出口径 40mm(G1 1/2)
接続ネジ  管用平行ネジ(Gネジ)
全揚程(※注1) 33m(0.33Mpa)
最大吸入揚程(※注2) 8m
1分あたりの吐出量 340ℓ
エンジン 空冷4サイクルガソリンエンジン 
排気量 179㎤ 
定格出力 3.1kW(4.2馬力) 
最大出力 3.5kW(4.8馬力) 
燃料   自動車用ガソリン 
燃料タンク 3.6ℓ 
始動方式  リコイルスターター付属品
※注1:揚程とはポンプの水を垂直上に運ぶ限界値のこと。この場合、吐き出す高さは最大で33mという意味。
※注2:水源から水を吸い込む時のポンプまでの垂直距離のこと。
▼お問い合わせは、最寄りの販売店まで。
 メーカー公式サイト
藤原農機「アグリズ」での購入先

刈払機に取り付けて部分除草しながら酸素供給もできる美善の水田カルチ

最後にご紹介したいのが、株式会社美善が開発した「水田カルチATC-315S」という刈払機に取り付けるアイテムです。

こちらも、米どころの山形県酒田市で1950年に創業。高齢化する農家が抱える課題や、作業時間が限られた兼業農家の困りごとを直接聞きに訪れることで、「こういうものがあったらいいな」という声から、一風変わったユニークな製品を開発しています。アイディア農機具メーカーとして知る人ぞ知る存在なのです。

そのうち、今回ご紹介するのは、「刈払機AT水田カルチ/ATC-315S」と言って、手持ちのエンジン式刈払機に取り付けることで(※注3)、水田の除草を可能にするアタッチメントです。

例えば、代かきで田んぼの中に高低差ができてしまった結果、田植え後に同じ場所だけ雑草が出てしまっている風景を見かけたことはないでしょうか?

そんな時に活躍するのがこのアタッチメントで、軽トラックに積んでおけば、田んぼの見回りなどをしていて、ちょっと雑草が気になった際、その部分だけスピーディーに除草ができる優れモノなのです!

30cmごとに植えた株間を縦横自在に除草しているという山形県の農家(美善提供
30cmごとに植えた株間を縦横自在に除草しているという山形県の農家(美善提供)
最近は除草剤も年々効きづらくなっているという声も聞きますので、雑草が伸びやすい時期には、このアタッチメントを使って、定期的に水田の撹拌をすることで、除草にくわえて水を濁らせて雑草の光合成を防いだり、根元への酸素の供給量を増やす効果も期待できるのです。

手持ちの刈払機からギヤケースとチップソーなどを取り外して、このアタッチメントを取り付けるだけ(美善提供)
手持ちの刈払機からギヤケースとチップソーなどを取り外して、このアタッチメントを取り付けるだけ(美善提供)
農機具は「農作業を楽にしてスピードアップするもの」とイメージがありますが、ただ作業を楽にするだけでなく、「農作物の成長を促進する」という効果もある部分が、この水田カルチが優れていると私が感じる部分です。


やはり、ただ作業の省力化のためだけに高額な設備投資をするのはなかなか難しいので、こういった付加価値がある農機具がこれから選ばれるようになってくるのかもしれませんね。

刈払機アタッチメント水田カルチATC-315S/株式会社 美善

本体幅 83cm
重量 5.2kg(ギヤケース含む)
回転直径 24cm(爪高4.5cm)
付属品
・スプライン(回転軸)アダプター
・厚さ調整スリーブ
本体価格 5万7,200円(税込)
※注3:アタッチメントを取り付ける刈払機は、背負式が推奨されており、電動式やモーター式は使用できない。
また刈払機のパイプ径24mm/25mm/26mmは付属のスリープを使用することで使えるが、パイプ寸法が24.5mmや25.5mm、28mmなどは適合しないので、購入時は販売店で現在使用中の刈払機の回転軸のサイズや歯数などの形状を確認すること。
取り付けについては、美善ホームページで動画が紹介されている。
▼お問い合わせや販売は同社公式サイトか、カタログ提供店にて  
メーカー公式サイト
藤原農機「アグリズ」レンタルページ


次回は、農家の方の主力アイテム「刈払機」を取り上げる予定ですので、お楽しみに!

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