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Editor's Eyes 農機具のプロがオススメする!動力噴霧器の選び方

Editor's Eyes 農機具のプロがオススメする!動力噴霧器の選び方

YUIME Japan公式コメンテーターとして、農機具の悩み相談に答える東 直斗(ひがしなおと)さんは、全国向けに農機具の宅配レンタルサービス事業を展開する農機具の専門家。

日ごろから地元・和歌山県のみかん農家さんを相手に、さまざまな要望に応じる"農機具のプロ”が、本格的に芽吹き始めるシーズンを前に、準備しておきたい防除グッズをご紹介します。

連載2回目は、年間を通じて大活躍のエンジン式動力噴霧器(動噴)です!

東さんがオススメする防除まわりの道具3選
・作物や農地に合わせてノズルから選ぼう/ヤマホ工業
・エンジンセット動噴の元祖/丸山製作所
・背負式の決定版!除草剤から防除まで圧力調整可能/工進

防除・除草・水やりと大活躍!農業の王さま

こんにちは!前回の「運搬車」に続いて2回目の登場です。

私が働く藤原農機では、農機具・資材全般を取り扱っていますが、中古農機具の販売・買取り、メンテナンスでは70年の実績があります。そのなかでも私は、販売専門の通販サイト「アグリズ」で「全国に農機具をお届けする宅配レンタルサービス」を担当しています。

「全国向けの農機具の宅配レンタル」という一風変わったサービスを運営しているプロとして、一般的な農機具屋さんやメーカーとは異なる視点でオススメの農機具を紹介してほしい!という要望に答えて、今回は「防除用品」をご紹介します。

一言で防除用品と言ってもさまざまな種類がありますが、今回は通称「動噴」ことエンジン式動力噴霧機をご紹介します。防除はもちろん、除草から水やりまで、幅広い用途に対応できる「農業の王さま」のような農機具なので、一度は見たり、使ったりしたことがあるのではないでしょうか。

藤原農機は戦後すぐに和歌山県で創業した農機具専門店
戦後すぐに和歌山県で創業した藤原農機は、レンタルのほか、メンテナンスや中古農機具の販売まで行う
「冬場は、病害虫も雑草も少ないのに、なぜ動噴なの?」と思われるかもしれませんが、実は今の季節は、お手持ちの農機具をメンテナンスしたり、翌シーズンに向けて新しい機械の準備をしたりと、意外と動噴に関する相談が多い時期なんです。

エンジン式動噴って複雑そうな見た目をしていますが、機械の構造自体は意外とシンプル。動力を使って吸水ホースで水路や貯水タンクから水を吸い上げ、ピストンの動きによって高圧で水を噴射する仕組みになります。

「どんなものを選べば良いのかわからない」という声にお答えして、用途が幅広く、奥深いエンジン式動噴の世界を紹介していきますので、シーズン前の点検・確認も兼ねて、ぜひ最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

まずは作業目的から!動噴用ノズルならヤマホ工業

動力噴霧器のノズル
使用目的によってさまざまな形がある動力噴霧器のノズル(ヤマホ工業提供)

お客さまから「どんな動噴を選んだらいいのかわからない」という問い合わせをいただいた時に、必ず確認するのが「どういうノズルを使いたいですか?」という質問です。

エンジン式動噴は、やはり高額な買い物になりますから、本体をどれにするかを悩みがちなのですが、実は「どういうノズルを選ぶか」「どういう防除作業をしたいか」によって、選ぶ動噴も180度変わってくるのです。

そこでご紹介したいのが、防除用ノズルを専門に作っているヤマホ工業です。

どんな動噴を選べばいいかはわからなくても、「どんな作物」で、「どういった現場」で「どんな作業をしたいか」については、イメージしやすいと思います。

このヤマホ工業のWEBサイトはとてもわかりやすいのが特徴で、デジタルカタログに加えて、それぞれのノズルの使用風景が動画で解説されているのです。

ノズルの種類別噴霧パターン
代表的なノズルの種類別噴霧パターン(ヤマホ工業提供)
上段 霧のノズル 1新広角タテ2頭口、2ウキアガリズズラン、3キリスター果樹2頭口
中段 キリナシノズル 4キリナシESノズル 、5キリナシKS-P2頭口、6強力キリナシプラ2頭口
下段 除草剤用ノズル 7キリナシ除草P-2頭口、8ラウンド25人力1頭口S型

どんなノズルを使いたいのかがわかったら、先ほど述べた「水量」と「水圧」のキーワードに注目してみてください。

ノズルの性能をよく見てみると、「噴出量」や「適正圧力」といったキーワードがありますよね。その内容がそのままエンジン式動噴本体に求める水量と圧力になるので、ノズルの性能と本体の性能を照らし合わせて、ノズルよりも高性能な動噴を選んでおけば概ね間違いはないだろうという考え方ができます。

弊社がある和歌山県のみなべ町は、南高梅の発祥地として知られる梅の里ですが、ヤマホ工業のアルミズームシリーズの人気が高く、防除の時期は大活躍。細かな霧状の粒によって、ムラなく均等に葉面散布することが可能です。

アルミズームシリーズ6型は、先端部分が透明な樹脂材なので、薬剤を目視できますから、使用後に液剤や水を抜き忘れる心配が無くなり、破損の原因である凍結や腐食の防止にも役立ちます。

アルミズーム6型シリーズ 上から全長127cm、95cm、69cmの商品
アルミズーム6型シリーズ 上から全長127cm、95cm、69cmの商品(ヤマホ工業提供)

アルミズーム6型シリーズ/ヤマホ工業株式会社
噴出量 5.8〜7.2L/分
適正圧力1.0〜1.5MPa
到達距離 約4〜8m
散布幅 約15〜80cm
全長 69cm、95cm、127cmの3タイプ展開
希望小売価格(税込) 9900円、1万450円、1万1440円
▼問い合わせや販売価格については、最寄りの農機具販売店、JA農協、ホームセンターまで。 
   メーカーサイト
藤原農機での購入先

エンジンセット動噴の歴史と共に進化を続ける丸山製作所

さて、使いたいノズルが決まったらいよいよ動噴本体を選んでいきたいのですが、そこでオススメするのが、丸山製作所です。

1895(明治28)年に創業した老舗メーカーで、1933(昭和8)年には日本で初めて横型三連式動力噴霧機を開発した歴史があります。現在、畑でよく見かける「エンジンセット動噴」は、ほとんどがこちらのタイプとなっており、日本初で、かつ現在も最先端の技術開発を続けるメーカーというわけですね。

上級者ならば、「単体動噴」と呼ばれるポンプ部のみ購入して、エンジンやセット台を自分で組み立てることも可能ですが、そうでなければ「(エンジン)セット動噴」と呼ばれていて、エンジンと単体動噴がセットになったタイプを選んでおくのが無難だと思います。

選ぶ際には水量と圧力をチェックして!

ポイントは、「給水量(L/分)」と「最高圧力(水圧=MPaメガパスカル)」を見ておくと、使いたいノズルに必要な性能を満たしているかどうかも確認できますよね。

複数の吐出口を使って2人で作業する場合は、動噴側の給水量と水圧はその分、多めに見ておく必要があります。

例えば、吐出量が毎分5.8Lのノズルを2人(2本分)使用することを想定した場合、毎分11.6L以上を吐き出せるスペックの動噴が必要になります。

メーカーのホームページを見る際、商品ごとに異なる給水量が並びますが、この「給水量」はあくまでも1分間でポンプが汲み上げられる薬剤の量のことであって、「吐出量」ではない点に注意が必要です。

動噴の構造上、たとえ10L給水したところで、その全量を吐出すことはできないからです。給水量のうち約20%は余水として薬液タンクに戻す必要があります。そのため、水量を確認するときは、カタログの給水量の8割が吐出量と考えて、ノズル2本分11.6Lを吐き出すには、給水量が毎分15L以上必要だと考えなければなりません。

次に水圧の確認時も要注意です。動噴の吐出口からノズルまではスプレーホースでつなぐため、ホースが長くなればなるほど、ノズル先端での圧力は低下します。一般的に、ホース100mあたり、だいたい0.8MPa降圧します(直径8.5mmホースを基準とした場合)。

一般的な最高圧力4.0MPaの動噴であれば、0.8MPaの圧力低下で、ノズルの先端で3.2MPaの圧力がかかることになります。

日本で初めて横型三連式動力噴霧器を開発した丸山製作所
日本で初めて横型三連式動力噴霧器を開発した丸山製作所のセット動噴(同社提供)
藤原農機で扱っている丸山製作所のセット動噴は、最初から噴霧ホースを付属している地域特注品ですが、標準仕様のモデルには付属されていないので、購入時は、「吐出用ホース」「ホース巻取機」に加えて、必要な場合は、貯水タンク、巻取機と動噴をつなぐ「元ホース」、手元で吐出のON/OFFが切り替えできるコックなどを用意しておくと良いでしょう。

また、ネジの規格も「G1/4」や「G3/8」とサイズが展開するので、動噴とノズルのネジ径が適しているかは必ず確認しておいてください。そういう意味では、一式セットされた動噴は便利だと思います。

手前味噌になってしまいますが、藤原農機ではノズル以外の用品とエンジンセット動噴がまとめ買いできるものも用意していますので、用品選びに失敗したくない人は、そういったセットを選ぶのもオススメです。

エンジンセット動噴「MS317EA(スタンダードモデル)」/株式会社丸山製作所
サイズ(cm) 長さ54.5×幅52.0×高さ38.0
本体重量 28.8kg
給水量 20L/分
最高圧力(MPa) 5.0(50kgf/㎠)
エンジン定格出力(kW)2.3(3.1馬力)
メーカー希望小売価格(税込)27万2,800円
▼問い合わせ先や販売価格については、最寄りの販売店まで。
 メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」では、長さ100m(φ8.5mm)のホースやコック、ホース巻き取り機などのセットを取り扱う。 
 購入先 

背負式の決定版!除草剤から防除まで圧力調整可能な工進のガーデンスプレイヤー

左:消毒時は縦型二頭口噴口を使用 右:除草時はカバー付泡状除草噴口を使用(工進提供)
左:消毒時は縦型二頭口噴口を使用 右:除草時はカバー付泡状除草噴口を使用(工進提供)
最後に、背負式のエンジン動噴を紹介します。背負式タイプは先述のエンジンがセットされた動噴と異なり、ノズル・ホース・動噴・タンクがすべてオールインワンになっているのが特徴です。

薬液の入ったタンクを背負いながら作業できますので、取り回しやすいのが最大のメリットのひとつ。その反面、真夏の暑い時期などは大変ですから、コロコロと転がして使う専用のキャリーを用意しておくなど、作業方法を工夫してみると効率が良くなると思います。

また、エンジンセット動噴に比べれば水量が劣るため、遠距離型のノズルを使って薬液を遠くに飛ばしたい時には性能不足を感じることもあります。基本的には、身体の周辺で防除や除草をする作業時にオススメします。

背負式動噴の最大のメリットは、なんといっても圧倒的に「安い!」ことにつきます。

特に、今回ご紹介する工進の背負式エンジン動噴シリーズは、エンジンセット動噴一式に比べて、3分の1から4分の1程度の値段で購入できるのが魅力です。ホームセンターでも広く流通していますし、こちらで紹介するES-15PDXは手頃な価格のわりに、消毒用と除草用に2種類の噴口が備わっていて、ダイヤルによって水圧を6段階に調整できるなど、性能・品質が優れているので、過不足なく作業できます。


背負いエンジン動噴ES-15PDX(ES-15PDX-AAA-0)/工進株式会社
本体重量 7.1kg
タンク容量 15L
給水量 5.2L/分
最高圧力(MPa) 3.0(30 kgf/㎠)
噴霧量 縦型二頭口(高圧時)3.5L/分、カバー付泡状除草時 0.63L/分
エンジン最大出力 0.5kW(0.67馬力)
オープン価格
▼お問い合わせは、最寄りの販売店まで。
 メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」での購入先 

農家さんのなかには、過剰に性能が高いオーバースペックな機械を選びたがる人もいるのですが、せっかくの機能も使わなければ、コストが余計にかかります。まずは「どうやって作業したいのか?」という観点で、今の畑に最適なエンジン動噴を選んでいただきたいなと思います。

今回は、シーズン前から防除の準備を始めていただくために、エンジン式動噴の選び方をご紹介しました。次回は、こちらも農作業には欠かせない「耕うん機」を予定しております。お楽しみに!

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