2023年もまもなく年の瀬を迎えます。
11月に入っても25℃以上の夏日が観測されたりすると、つい忘れてしまいそうになりますが、今年もそろそろ年末に向けた大掃除に備えなをければならない季節です。
農家の場合、どれだけ広い倉庫スペースがあっても、ふだんの整理整頓を怠れば、農薬や肥料、資材、農機具類がすぐにあふれてしまうもの。
肝心の作業の時に必要な道具がなかなか見つからなかったり、ようやく探し当てたら、同じようなものがいくつも出てきたり、次回からはきちんと整理しようと反省するのが、ちょうどこれからのシーズン。
今回は、作業現場を整え、作業効率や生産効率を上げるために頼りになるお掃除アイテムを農機具選びのプロ、東 直斗さんがご紹介します。
東さんがオススメする優れものの掃除グッズ3選
・樹木を一気に粉砕して作業スペースを確保!/共立 ウッドチッパー KCM123S
・落ち葉やホコリを吹き飛ばしてメンテも兼ねる/ハスクバーナのバッテリー式ブロワー525iB Mark II
・農機も洗えるハイパワー高圧洗浄機。工進のエンジン式高圧洗浄機 JCE-1408UDX
広くても、いつのまにかスペースが足りなくなる倉庫
こんにちは!チェンソーを特集した前回から、定番のスタイルを一新した「クリアー」の東 直斗です。
この連載を以前より読んでくださる方は、「あれ?東さん転職したの?」なんておっしゃるかもしれませんね(笑)。
和歌山県を拠点に、農機具や農業資材を取り扱う通販サイト「アグリズ」を運営している藤原農機で、全国向けに農機具の宅配レンタルサービスを展開していた経験をもとに、2023年10月からは農家の事業開発や経営サポートをスタートさせたばかりです。
普通の農機具屋さんとは、ひと味違ったプロの視点から、さまざまなジャンルの農機具を紹介する本シリーズも、今回で1周年を迎えました。12回目にあたる今回は、年末の大掃除に向けて「現場環境を美しく整えてもらいたい」という願いを込めたお掃除アイテムの特集です。
テーマを聞いてもなんのこっちゃ?と思われるかもしれませんが、日ごろ農家のお客さんと話をしていて、ちょいちょい耳にするキーワードからとして、例えば肥料や農薬を配達するときなど「倉庫に空きがないからちょっと待って」というワードをよく聞くことがあります。
農業に限った話ではありませんが、倉庫や作業スペースというものは、不思議なことにどれだけの広いスペースがあっても常にいっぱいになるものなのです。
倉庫の大掃除なんかをしていると懐かしのグッズが出てきたりして、「そういえばこんなこともあったね~」なんてみんなで話をしたり、「この工具、ここにあったんだ」なんていう発見があったりもしますが、よくよく考えてみると普段から整理整頓がきっちりできている環境ではこういう話は出てこないのではないか?と毎年筆者自身も反省するところがあります。毎日きちんと整理整頓していれば、そもそも大掃除なんてやる必要はありませんものね(笑)。
話が少しそれましたが、今回のテーマは「現場の環境を美しく整える農機具」なので、農機具なら単純に整理整頓をするだけではなく仕事の生産性も上げたいといことで、「農業の生産性を上げるための整理整頓」について色々な観点から農機具を紹介していければと思いますので、最後までお付き合いよろしくお願いいたします!
樹木を一気に粉砕して作業スペースを確保!「共立 ウッドチッパー KCM123S」
現場環境を整えるために、まずご紹介したいのが、やまびこジャパンから共立ブランドの 「ウッドチッパー KCM123S」です。“粉砕機“や“チッパー”など名称はさまざまですが、いずれも、投入した木材をこなごなに砕いて、細かいウッドチップにするための機械です。
最近では、バイオ燃料用のウッドチップを作るための使用も増えてきましたが、果樹園の場合などは、剪定した枝を粉砕して堆肥にする使い方が可能です。
切った枝や幹は産業廃棄物として自治体の事業ゴミに出すとコストもかかりますし、昔のように野焼きもできなくなりました。そういった意味では、エコやSDGsについて考えさせられる農機具だと思います。
投入できる木材の最大径は120mmなので、竹の粉砕なども可能です。注意しなければならないのは、水分を含んだままだと排出口が詰まるなどのトラブルが発生する可能性があるので、無理のない投入や、あらかじめ十分に乾燥させてから使用するなどの工夫も必要になります。
さて、ここからは本題の「現場環境を美しく整える」について触れていきます。
私が考えるチッパー使用の本質的な目的は、「スペースを広く確保するため」です。
もちろん、堆肥として使うために廃棄物を細かくするというエコ的な使用は重要なのですが、それよりも、剪定した枝や木材が畑や倉庫の中でいつまでも場所を取っている状態は望ましくないからです。
切った木材は「いつか使うかもしれない」とか「そのうち時間的余裕ができたら片付ければいいや」とつい考えて、後回ししてしまいがちです。
しかし、作業スペースや倉庫スペースを広くしておくことは、例えば畑や倉庫内の導線を確保しやすくなったり、急な荷物への対応ができるようになったりと、生産性の向上にもつながります。
たった1分程度の短縮でも、1日に10回通る場所なら10分、100回なら100分短縮できるなら、これは大きな成果だと思います。
ただ注意したいのが、チッパーは非常に高額な機械であるという点です。
1台あたり最低でも100万円以上を投資することになるので、「削減できる経費(時間)÷購入金額」という計算式で、前述の生産性をよく計算してみてください。もし、年に数日だけしか使用しないというのであれば、レンタルの活用なども検討してみてはいかがでしょうか?
共立ウッドチッパーKCM123S/やまびこジャパン
本体サイズ(cm) 幅73×長さ162×高さ127
重さ(kg) 340
最大処理径(mm) 120
1時間あたりの処理能力 2.2㎥/h
エンジン最大出力(kW) 7.3
ナイフ数(枚) チッパーナイフ2、受刃1、シュレッダーナイフ8
粉砕部送り方式 油圧モーター走行方式
クローラー自走式
メーカー希望小売価格 155万1,000円(税込)
▼問い合わせや販売価格については最寄りのJA農協、販売店まで。
メーカーサイト
▼藤原農機「アグリズ」でのレンタル先
落ち葉やホコリを吹き飛ばしてメンテも兼ねる/バッテリー式ブロワー525iB Mark II
続いてご紹介したいのが、この連載ではすっかりお馴染みのハスクバーナから、「バッテリー式ブロワー 525iB Mark II」です。同社のバッテリーシリーズの性能については、チェンソーや、刈払機など、これまでにも触れてきましたので、あらためて多くを語る必要はないかもしれません。
このブロワー「525iB Mark II」も、他のハスクバーナ製品と同様、バッテリータイプながらエンジン式と比べても遜色ないパワフルさが魅力です。燃料を買う必要もないので、コスト的にも大きなメリットがあります。
ブロワーというと、道路掃除や落ち葉掃除などで使われる機械というイメージがあります。もちろんそういった使い方がメインですが、今回ご紹介するのは、バッテリー式ですから排気ガスが出ず、屋内での使用が可能なのです。
つまり、農業用の倉庫内でも使えるので、チリ取りでは取り除けにくいような、四隅や農機具の後ろに蓄積したホコリを吹き飛ばすこともできるんです!
ホコリの除去というと、地味に聞こえますが、これがあながち馬鹿にはできません。
例えば、コンバインのように1年のうち使用期間が限られた機械の場合、「収穫でしか使ってないから」とメンテナンスを怠ると、いつの間にか堆積したホコリが詰まって、いざという時には使えなかったり、故障の原因となります。
だからと言って水洗いすれば、内部がさびたり、電気系統にトラブルをきたすおそれもあるため、ホコリはエアーで吹き飛ばすのが一番なのです。
またエンジン式ブロワーだと、アイドリング状態でも、多少は風を吹き出してしまうため、細かいホコリのようなものを吹き飛ばす際にはかえって作業しにくいのですが、バッテリータイプならば、スロットルを離せば、完全に送風停止になりますから、細かい部分の清掃がしやすいのもメリットのひとつです。
ブロワーで倉庫・農機具を掃除するというと、たいしたことのない地味な作業に思えます。
しかし万が一、機械が故障したときにかかる修繕コストや無駄な時間を考えると、普段からホコリを吹き飛ばしておくだけで、それらのリスクが軽減できるならば大きな意味を持ちます。
さらに、現場環境を清潔に保っておくことで、そこで働く人のモチベーションを維持したり、従業員教育にも結びつくので、単なる掃除以上の効果をもたらします。年末はぜひ細かい部分の清掃まで目を光らせてみてはいかがでしょうか?
バッテリー式ブロワー525iB Mark II/ハスクバーナ・ゼノア
本体重量(kg) 2.5
バッテリー電圧 36V
容量 ハウジング内の風量 12.8㎥/m
風量 11.33㎥/m
最大風速 48/s
騒音(耳元騒音レベル)85dB(A)
振動(等価振動レベル)2.5/s²
メーカー希望小売価格 5万7,200円(税込)
▼製品に関する問い合わせは、最寄りの販売店まで。
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」での購入先
農機も洗えるハイパワー高圧洗浄機。工進のエンジン式高圧洗浄機 JCE-1408UDX
最後にご紹介したいのが、工進の「高圧洗浄機 JCE-1408UDX」です。工進も、この連載ではたびたび登場するメーカーですが、ポンプのスペシャリストが開発したエンジン式高圧洗浄機とあって、電動式に比べると水量や水圧などが段違いにパワフルです。
動力噴霧器やエンジンポンプもそうですが、大量の水を必要とする農機具に関しては、出力の問題もあって、まだまだバッテリー式よりエンジン式の方が根強い人気があります。
トラクターや軽トラックなどの泥落としはもちろん、パイプ内部や床や外壁洗浄にも活躍すること間違いなし。
またポンプが専門のメーカーですから、高さがある用水路からも給水可能ですし、エンジン式なので場所を選ぶことなく使えます。
僕個人の考えではマストではないけれど、一家に1台あったら超便利になること間違いなしの農機具ランキングの1位だと思っています。
この連載で紹介してきた農機具は、生産性の向上やコストメリットを重点に選んできましたが、農業をやるうえで忘れてはならないのは、「見た目の美しさ」も重要だと私は考えています。
良いものを作って、たくさん売って儲かればOKだという考えもありますが、そもそも、そういったことを実現するには「美意識」という観点が必要不可欠だと私は思います。
というのも、農機具店に修理に持ち込まれる機械を見ていると、故障の原因は「メンテナンス不足」や「ふだんから無茶な使い方をしている」場合がほとんどなのです。日常的にちょこちょことケアしていれば、こんなに高い修理料金を支払わなくても済むのになあと、プロとしては残念な思いがします。
繁忙期は忙しさに紛れて、メンテナンスを怠りがちですが、必要なのは機械に対する高い美意識。ここで紹介した高圧洗浄機やブロワーを使うことで、それまで目につかなかった汚れやキズを早い段階で発見できれば、いざという時に使えないとか、目の飛び出るような修理料金に涙することも減ることでしょう。そしてそれはきっと、一緒に働く従業員にも伝わることだと思います。
これからはぜひ、農機具への“美意識”をもって、現場をピカピカにしただければと思います!
エンジン式高圧洗浄機JCE-1408UDX/工進
洗浄機 ポンプタイプ:三連プランジャー式
ノズルタイプ:①直射ノズル、②15°拡散ノズル、③25°拡散ノズル、④40°拡散ノズル、⑤洗剤吸引用ノズル
ホースの長さ:吐出10m、吸入3m、余水3m
圧力調節:無段階(圧力調整バルブ)
常用圧力:14MPa=140kgf/㎠
給水量:8L/分
最大吸入陽程(ポンプから水源までの垂直距離)1.5m
オイル量:120cc
直射距離目安:高圧直射2〜3m、到達距離7〜8m
(※給水した水を7〜8m噴射できるが、距離が長くなると水圧が落ちる。ノズル先端から2〜3mまでは高圧での使用が可能)
エンジン 空冷4サイクルガソリンエンジン
始動方式:リコイルスターター方式
排気量:179cc
連続定格出力:3.1kW(4.2PS)/3600回転毎分
最大出力:3.5kW(4.8PS)/3600回転毎分
燃料:自動車用無鉛ガソリン
燃料タンク容量:3.6L
燃料消費目安:約2時間
オイル容量:600cc
本体重量 32.5kg
付属品(各1) ガン、ストレーナー、洗剤吸引ホース、吐出ホース(10m)、水道直結用ホース(3m)とバンド、ノズルクリーナーピン、吸入ホース(3m)、余水ホース(3m)
オープン価格
▼お問い合わせは、最寄りの販売店まで。
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」での購入先
2022年12月に始まったこの連載も、読者の皆さまからの応援のおかげで1年間続けることができました!いつも楽しみにしてくださってありがとうございます。
「農機具のプロがオススメする」シリーズは、今回で最後になりますが、次回からは「利益が増える農機具の選び方」をテーマに、再び農機具をご紹介していきます。
この記事の執筆