和歌山県を拠点に、全国に向け農機具の宅配レンタルという一風変わったサービスを展開する藤原農機の東直斗さん。
農機具・農業資材専門の通販サイト「アグリズ」の運営管理者として、さまざまなメーカーの農機具に精通しています。
前回の水田用品に続いて、5回目となる今回は農家のマストアイテム「刈払機(草刈機)」をご紹介。
農機具のプロが「使ってみたい!」と唸るのは、この3機種です!
東さんがオススメする刈払機
・3.2kgと軽い、軽い!軽さならこれに勝るものはなし!共立のエンジン式刈払機
・一度使ったらやみつき!ハイパワーなのに作業はラクラク!ゼノアの背負式草刈機
・面倒なフェンスの際の草刈りにもバッテリー式が登場!ハスクバーナ325iLK + RA850
刈払機はハンドルの形で選ぼう
農業シーズンが本格化する春は、今年1年がんばろう!とモチベーションも高まりますが、一方で、気温の上昇とともに雨の日が増えるので、雑草を刈った先から次から次へと成長するのでうんざりします。
草刈りは、作物の成長を支えるためにも必要不可欠な終わりなき戦いです。病害虫の駆除と並んで、農家を苦しませる永遠の課題と言っても過言ではありません。
一言で草刈りと言っても、畑の環境や地域、育てている作物によって作業方法もさまざま。
例えば、刈払機のハンドルには、主に3つの種類があるのをご存知でしょうか?
1つめは、アルファベットのU字型をして両手でつかむ「両手ハンドル(U字ハンドル)」。地面が平らな場所では操作しやすく、重さも感じませんが、傾斜地では足元を踏ん張って体を安定させながら、斜面の角度に合わせて振り回す必要があるため、操作しにくいという難点があります。
そういう人がU字ハンドルと上手に使い分けているのが、2つめの「2(ツー)グリップハンドル」です。コンパクトなので傾斜地や山地で振り回しやすい反面、平地の作業には向きません。
3つめの「ループハンドル」は、半円形の持ち手が特徴で、平地でも凸凹の多い起伏地や傾斜地でも、オールマイティーに対応できます。もしあなたが新規就農者で、刈払機を初めて購入するならば、ご自分の農地の形状に合わせて、ハンドルの種類を選んでみてください。
さらに、刈払機には一般的な肩掛け式だけでなく、エンジンを備えたタイプもあります。
私が働く藤原農機にも、「今はどこのメーカー製がいいの?」とか「最近、バッテリー式の性能がとても良いらしいけれど、本当のところどうなの?」などといった問い合わせが連日のように寄せられます。
これからのシーズン、刈払機は休みなく使う機械だからこそ、自分なりのこだわりを持って作業したいですよね。
そこで今回は、プロの私が思わず使いたくなるような、ユニークな機種を紹介していきたいと思います。単なる製品紹介にとどまらず、生産者である読者の皆さんが、刈払機を使う作業について、いろいろな角度で考えてみるきっかけになればいいなと思います!
3.2kgと軽い、軽い!軽さならこれに勝るものはなし!共立のエンジン式刈払機
刈払機を長時間振り回し続けるのは、腕や腰など全身への負担が大きく、ベテラン農家であっても、年齢を重ねるほど、疲労が重くのしかかります。
刈払機を選ぶ際に重視するのは「本体の軽さ」と「パワー」なのですが、この二つは本来、相反する要素です。
刈払機は、エンジンの回転をドライブシャフトと先端のギアケースを通して刈刃に伝える構造なので、排気量が大きい機種ほどパワーが強く、本体が重くなる傾向にあります。つまり、一般的に軽い機種は刈払機のパワーが落ちやすくなる点を前提として選ばなければなりません。
この点を踏まえたうえで、「とにかく軽いものが欲しい!」という方にオススメなのが、「共立 SRE2230GT」です!
“ちょっと軽すぎやしませんか?”というキャッチコピーどおり、本体の重さは3.2kg。エンジンを構成する素材や形状をひとつ一つ見直したり、軸の厚みを減らしたりすることで、グラム単位で軽量化を施しており、必要な耐久性を維持しつつ、従来機より600gも軽量化に成功しました。
たった600gか、と思われるかもしれませんが、600gのステーキ肉を想像してみてください。その重さをずっと持ち続けていなければならないことを考えると、軽量化による負担軽減は、はかりしれないものですよね。
一方、注意したい点は、他のプロ向け機種に比べると、軽量化を果たすために、耐久性を少し犠牲にしている部分があること。
家庭用には5年間、プロ向けには2年間の保証期間がありますが、山林などで必要以上にハードな使い方を続けると機械がダメージを受けやすいという点を考慮して、使用するのは、土手や法面の草刈りなどの機動性が必要な場面が向いています。
また、パイプの長さが同社の一般的な機種よりも8cm短いので、身長の高い方にとっては、少し操作が大変かもしれません。逆に身長の低い方は取り回しがしやすいと思いますので、このあたりのメリットとデメリットをしっかり理解しておきたいところです。
共立 軽量刈払機 SRE2230GT/やまびこジャパン株式会社
サイズ(cm)全長169.2×幅22.2×高さ24.6
重量 3.2kg(※燃料、刈刃、肩掛けバンド、飛散防止カバーを含まない重さ)
排気量 20.9㎤
ハンドル 2グリップ式
操作棹 軽量アルミ
使用燃料 混合燃料[ガソリン:2サイクルオイル](※やまびこ純正2サイクル専用オイル、またはJASO性能分類FC・FD)
燃料タンク 0.41ℓ
付属バンド シングルバンド
標準付属刈刃 230mm
メーカー希望小売価格(税込)6万2,700円
▼問い合わせや販売価格については最寄りのJA農協、販売店まで。
メーカーサイト
▼藤原農機「アグリズ」
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一度使ったらやみつき!ハイパワーなのに作業はラクラク!ゼノアの背負式草刈機
「とにかく軽い」刈払機に続いて、今度はとにかくパワーがあるゼノアの「BKZ315L」をご紹介します。エンジン式刈払機というと、前述の共立製品のような肩掛け式をイメージされる方が多いと思いますが、こちらはパイプ部とエンジン部がホース状の部品(フレキシブルシャフト)でつながっている構造で、エンジン部をリュックのように背負えるのが特徴です。
排気量が約30ccクラスですから、一般的にエンジン回転数が落ち込みやすいナイロンカッターを使用していても、軽々と作業できるハイパワーが頼もしい。
エンジンが大きいと作業が大変そうなんて心配されるかもしれませんが、実は、パワーのある刈払機を使って、短時間で雑草を刈り取ってしまう方が、作業時間も短く済んで、体への負担も少なくなりますので、そういった方にもオススメの機種。
本体重量が8.4kgと、肩掛け式刈払機に比べると2倍ほどになりますが、エンジン部をリュックのように両肩で背負えるので重さは感じにくくなっています。また、パイプ部とエンジン部はそれぞれ独立していますので、パイプ部が非常に軽く、振り回す際の負担も肩掛け式に比べるとかなり小さいため、一度使ったらやみつきになること間違いなし。
他社製品でも、背負式刈払機は存在しますが、ゼノア製品は少し特殊な構造をしています。「くるくるカッター」という特許を取得している技術で、エンジン部分だけが回転するのではなく、連結している“スイベルギヤケース”も一緒にクルクル回転します。他社製品に比べると、操作竿の可動範囲が広く、自由自在に動かせるうえ、振動を押さえられるのが特徴です。
パイプは体の右脇、左脇のどちらにも回せますから、利き腕を選びません。プロ向け機種のなかでも耐久性はかなりのものですので、広大な敷地の草刈り作業にぜひ一度使ってみていただければと思います。
ゼノアBKZ315L/ハスクバーナ・ゼノア
サイズ(cm) 全長265.5×幅30.5×高さ37
重量 8.4kg(※燃料、刈刃、刈刃カバー、飛散防止カバーを含まない重さ)
排気量 29.5㎤
ハンドル ループ式(L)
使用燃料 混合燃料[ガソリン:2サイクルオイル](※ゼノア純正オイル)
燃料タンク 1.1ℓ
標準付属品
刈刃(チップソー255mm、40枚刃)
刈刃カバー、保護メガネ、刈刃収納バッグ、背負いバンド、ツールセット、ソケットレンチ、六角レンチ、ドライバー、吊りバンド、スロットルレバーガード、ボルト
メーカー希望小売価格(税込)10万6,700円
▼製品に関する問い合わせ先は最寄りの販売店まで。
メーカーサイト
▼藤原農機「アグリズ」
レンタル申込
面倒なフェンスの際の草刈りにもバッテリー式が登場!ハスクバーナ325iLK + RA850
最後にご紹介するのは、ハスクバーナ325iLKと、トリマーアタッチメントRA850です。弊社にも最近、「刈払機をエンジン式からバッテリー式に買い替えようか検討している」という問い合わせが増えています。
36ボルト(V)の高電圧バッテリーを使う刈払機は、出力面だけを見ると、排気量の大きなエンジン式の機種と同等以上のパワーで作業できることが大きな特徴です。
ただ、バッテリーの充電がネックとなっていて、エンジン式のように燃料が無くなったら補給してすぐに作業に戻るというような使い方ができないのが悩みのタネ。1回のフル充電時に、高速回転させると30分程度の稼働で充電切れとなるので、長時間作業したい場合は、バッテリーを複数台持っていなければなりません。
さて、この「ハスクバーナ 325iLK + RA850」は、2022年4月に発売した商品。本体部分「325iLK」と、刈刃部分「RA850」がそれぞれ独立していて、2つを組み合わせて使います。パイプ部が分割式になっているので持ち運びしやすいのも最近のトレンドで、これはバッテリー機ならではの大きなメリット。
刈刃の「RA850」は刃が2枚重ねになっているのが特徴で、この2枚の刃が往復して、それぞれがハサミのような動きをして草を刈る仕組みになっています。
通常の刈払機のように一方向に回転しないので、石跳ねが非常に少なく、フェンスなどにぶつけてしまった際のキックバック(跳ね返り)が起こりにくい安全設計です。
砂利道や水際・フェンス際など、これまでの刈払機では難しかった場所でも、楽に安全に草刈りできて、エンジン部のメンテナンスもいらず、誰でも使いやすいのも嬉しいポイントですよね。
バッテリーは他のハスクバーナ機種と共通ですので、本体のみ購入することも可能です。こちらもレンタルなどで一度お試しいただければと思います。
バッテリー式グラストリマー325iLK+トリマーアタッチメントRA850
サイズ パイプφ24mm×全長90cm
重さ 3.8kg(バッテリー除く※325iLK本体は2.9kg)
ハンドル ループ式
バッテリー電圧 36V(リチウムイオン)
メーカー希望小売価格(税込) 325iLK4万8,400円、RA850 4万2,900円
▼ハスクバーナ製品に関する問い合わせ先は最寄りの販売店まで。
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」
レンタルページ
次回は同じく草刈り関係で、更に広大な敷地を一撃で刈り取っていく「乗用・自走式草刈機」を取り上げる予定ですので、お楽しみに!