収穫の秋を過ぎると、果樹農家にとっては不要な枝を切り取り、日当たりや風通しを良くする整枝剪定作業が待っています。
そんなときに活躍するのはチェンソーです。山を所有している農家や、庭木の剪定にも活躍するアイテムですが、ノコギリのように枝を切断する道具ではなく、エンジンやモーターの回転によって、刃がついたチェーンで削り取る仕組みです。
果樹農家には必須なアイテムですが、使用時には騒音や振動、木くずが発生するので、安全衛生上の特別教育を受講する必要がありますが、使い方を覚えれば、とても便利なアイテム。
選び方を教えてくれるのは、いつもの東直斗さんですが、この10月、藤原農機の子会社を立ち上げて、株式会社クリアーの代表となられました。
東さんがオススメする優れもののチェンソー3選
・分割式だから持ち運び自由!高い位置の太枝でも手軽に剪定できるハスクバーナのポールソー
・地中の木の根もカット!超強力な根切機 ゼノアRC6200P
・エンジン式と変わらない!超強力50Vバッテリーなのに超軽量ECHOのBCS510T/25HCE
農業で使うのは小型タイプがオススメ
こんにちは、クリアーの東 直斗です!
いつもは藤原農機が運営する農機具・農業資材専門の通販サイト「アグリズ」の紹介から始めますが、2023年10月、子会社の代表となりました。新会社では、農業者や小規模事業者を対象に、事業開発のサポートを行なっていきます。
藤原農機では、「全国向けの農機具の宅配レンタル」という事業を立ち上げましたから、そのサービスを通じてつちかった農機具のプロとしての視点を活かして、経営や収益性の改善などに取り組んでいきます。
このシリーズも早いもので連載開始からまもなく1年が経過しますが、今後は新しい仕事からの視点もプラスして、より一層、農家の皆さんの役に立つ情報を発信していきますので、引き続きよろしくお願い致します!
これまで10回にわたって、さまざまな農機具を紹介してきましたが、今回は「チェンソー」です。筆者自身ですら「あれ、まだ書いてなかったっけ?」と不安になるぐらい、農業には身近な機械で、刈払機などと同様、「一家に一台」は持っていたい必需品です。特に、これからのシーズンは樹木の剪定や伐採作業で大活躍します。
冒頭でも触れていますが、チェンソーというと、そのいかつい見た目からノコギリのように樹木を切断するイメージを持たれている方もおられます。
つまり、“切断”ではなく“切削(せっさく)”になるため、他の農機具と比べても、十分な注意が必要です。「労働安全衛生規則」では、林業や造園業など、樹木の伐採を行うすべての業種を対象に、チェンソーを扱ううえで、安全衛生特別教育を受講する必要があるとしています。チェンソーに限らず、機械を扱う作業では、きちんとマニュアル・取扱説明書を読んで理解するということは基本です。
少し怖いけれど使いこなせれば抜群に役立つチェンソーですが、農家が選ぶのは、林業で使うタイプと比べると、排気量が25~40ccクラスの比較的小型の機種が一般的です。しかし、今回の記事ではそういった普通のチェンソーとは違う、用途や性能面が優れた一風変わった機種をご紹介しますので、最後までお楽しみに!
分割式だから持ち運び自由!高い位置の太枝でも手軽に剪定できるポールソー
最初にご紹介する「ハスクバーナ バッテリー式ポールソー 120iTK4-P」は、見てのとおり、柄が長いパイプ式のチェンソーです。専門的には「ポールソー」と呼ばれるもので、高枝の剪定などに威力を発揮します。筆者が住む和歌山県は、梅やみかんなどの果樹農家が多く、台風被害も毎年発生する地域なので、風の力を軽減するため、畑の周辺を防風林で囲う農家も少なくありません。その剪定で使うのがポールソーです。
このポールソーですが、バッテリー充電式なので手軽に使えるだけではなく、ポール部分が分割式になっていますので、持ち運びや保管が非常に便利なんです。
従来型のポールソーと言うと、とにかく長い、刈払機より長い…と、持ち運ぶのもひと苦労でした。かといって中途半端な長さでは役に立たないし、と不満を持つ人が少なくありませんでした。
しかし、この120iTK4-Pは最大長さ3mまで伸縮可能なうえ、ポール部分を大胆に分割したことで、運搬や保管のスペースを取らず、手軽に使えることを実現してしまったのです。
エンジン式の場合は、エンジン部分と先端のギアケースをつなぐ「ドライブシャフト」が付きますが、バッテリー式ではそういった部品は使用せず、先端にモーターを取り付けた構造になります。
バッテリー式なので、作業音が静かですし、稼働中の二酸化炭素排出量を減らすことが可能です。
刈払機などでは、パイプ分割式のものも最近多く見かけるようになってきましたが、ポールソーでこういった構造を実現した機種は、筆者も初めて見たので、「こんな機種があるのか!」と驚いて、発売後すぐにメーカーに注文したほど。
さらに驚きなのは、税込2万5,300円という価格です!
バッテリーと充電器は別売なので、型式によっては別途4、5万ほど必要になりますが、すでにハスクバーナのバッテリー機器を使っている人は共通で使えますので、追加購入する必要もありません。
たとえ追加で購入したとしても、ポールソーで、しかもバッテリー式がこの値段で買えるのは他社メーカーを探してもなかなかありませんから胸を張ってオススメしたい。
高所での剪定作業をする際、脚立に乗ってチェンソーを使うのは非常に危険です。定期的に高所作業を行う方は、ぜひこの機会に手軽なポールソーを検討してみてはいかがでしょうか?
バッテリー式ポールソー 120iTK4-P/ハスクバーナ
本体最大長さ 304cm
重量 3.55kg(バッテリーおよび刈刃 <バー・チェン> 除く)
バッテリー リチウムイオン二次電池
電圧 36V
最大出力時のチェン速度 10m/秒
耳元騒音レベル 80.6dB(A)(※走行中の地下鉄や電車の車内くらい)
メーカー希望小売価格 2万5,300円(税込)
▼製品に関する問い合わせは最寄りの販売店まで。
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」購入先
レンタル申し込み
地中の木の根もカット!超強力な根切機 ゼノアRC6200P
「ゼノアの根切機RC6200P」は、地上に露出している樹木を切るのではなく、その名のとおり、地中に埋まった根っこの部分を切削する特殊なチェンソーなんです。
一般的なチェンソーには、切れ味を重視した刃(ソーチェン)が使われているのに対して、このRC6200Pには、あえて切れ味を落として耐久性に特化した刃を使っています。
また、一般のチェンソーはエンジンの回転を刃に直接伝える構造であるのに対して、RC6200Pは、切断時の抵抗によって回転が低下しないよう、最初から回転速度を落とす構造にする代わりに大きなパワーを獲得しています。
要するに、ここまで刃の構造を頑丈にしないと、一般的なチェンソーでは、地中に埋まった木の根を切ることなどできないんですね。
ちなみに、この根切りチェンソーを使って、普通のチェンソーのように樹木を切断しようとしても切れ味が劣りますからオススメしません。藤原農機のレンタルサービスを利用したお客さまからは、ときどき「全然切れないよ!」と苦情が寄せられることがありますが、その点だけご了承ください。
根を切ることに特化したチェンソーということはご理解いただけたかと思いますが、そもそも、どういった場面で使われているのかというと、主に造園業者が街路樹の撤去や植え替え作業に使用することが多いです。
そのため、農業ではあまり使われることが少ない機種なのですが、土の流出を防ぐ波板と呼ばれるプレートを差し込むための溝を作ったり、畑に残ったままになっている邪魔な切り株を撤去したりするといった限定された作業の場合、「あったら助かる」という機械で、「なければ困る」ものではありません。
けれど私は、農作業を楽にするためには「アイディア」が大事だと思っています。
そのアイディアを生み出すためには、まずは「こんな機械があるんだ!」という基本的な知識が必要です。
柔軟な発想とアイデアはそういった知識の積み重ねの先にあるものだと思いますので、ぜひ一度、この根切りチェンソーをさまざまな場面で活用してみていただければ幸いです!
根切機 RC6200P/ゼノア
本体サイズ 長さ59.5cm×幅27cm×高さ29cm
重さ 7.9kg
排気量 62㎤
キャブレター ダイヤフラム式バタフライバブル
燃料タンク容量 0.67L
メーカー希望小売価格 43万7,800円(税込)
▼製品に関する問い合わせは最寄りの販売店まで。
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」購入先
レンタル申し込み
エンジン式と変わらない!超強力50Vバッテリーなのに超軽量ECHOのBCS510T/25HCE
10年ほど前ならバッテリーを充電して使えるだけで、ちょっと変わったチェンソーと言われていました。しかし最近は、性能が劇的に良くなったこともあって、バッテリー充電式のチェンソーも市民権を得ました。
BCS510Tが誇る特徴は、バッテリー式だけではありません。現在国内に流通している充電式チェンソーのなかでは、最高出力クラスの“50Vバッテリーが搭載されているプロ仕様”である点が注目ポイントです。
先述の通り、現在では国内外問わずさまざまなチェンソーが電動化されてきましたが、パワーの面でエンジン式に劣る機種が多いのも事実です。軽くて手軽に使えるのはバッテリー式の大きなメリットですが、出力が弱くて作業に時間がかかったり、そもそも切りたい木が切れなかったりというのでは話になりませんよね。
バッテリー式のメリットというと、燃料を必要とせず動作音も比較的静かで手軽にいつでもどこでも使えるのは大きな魅力ですが、従来の機種や電動工具メーカーが作るチェンソーではプロが作業で使うためにはパワーが不足していたという面もありました。
今回ご紹介するこのBCS510Tはそんなメリットをそのままに、デメリットであったパワーの部分を大きく解消したチェンソーと言えるのではないでしょうか。
敢えてデメリットを挙げるとすると、燃料を必要としない分、バッテリーの充電が必要になりますので長時間の使用には、予備バッテリーを準備しなければならない点が挙げられますが、1回の充電で50mmの角材を212本カットできるため、十分すぎるくらいの作業ができるのではないでしょうか?
先述の通り、バッテリー式のチェンソー自体は市民権を得たものの、プロが使えるバッテリー式はまだまだ多くありません。今回ご紹介したBCS510Tを筆頭に、今は一風変わったチェンソーが10年後には当たり前のものになっているのかもしれませんね。
エコーチェンソーBCS510T/25HCE/株式会社やまびこ
本体サイズ 長さ25.9cm×幅18.8cm×高さ20.9cm
重さ 2.6kg(バッテリー装着時。ソーチェン、ガイドバーを除く)
推奨バッテリー 50Vリチウムイオンバッテリー1P
オイルタンク容量 0.12L
メーカー希望小売価格 9万2,400円(税込)
※付属品 1Pバッテリー、充電器
※動画check
▼製品に関する問い合わせや販売価格については、最寄りのJA農協、販売店まで。
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」での購入先