高齢化や担い手不足が深刻な農業分野で、若者に職業としての農業の魅力を広めようと、今年の春に発足した「農業の魅力発信コンソーシアム」に、このたび日本航空とANAあきんどが参画することになりました。日本を代表する航空2社が、農業の発展をめざしてスクラムを組んだとして注目を集めています。
JALとANAあきんどが同じ目標でスクラムを!
農業界では現在、高齢化で従事者が減少するのに加えて、耕作放棄地や鳥獣害が拡大していて、日本の食糧生産体制に対するさまざまな不安が高まっています。
そのため、これまで農業に縁がなかった若者世代にも、職業としての農業の魅力を知ってもらおうと、農水省と民間企業7社は今年2月、「農業の魅力発信コンソーシアム」を立ち上げました。
参加するのは、「食べチョク」を運営するビビッドガーデンや、地域の仕事を手伝いながら旅の形を提案するおてつたび、貸し農園や農業学校を運営するマイファームなどに、YUIME を加えた7社です。
9日に開かれた記者会見では、各社の代表が勢揃いして、プロジェクトに対する意気込みを語りました。これに加えて、今回新たに日本航空とANAあきんどが参画することになりました。
日本航空の本田俊介地域事業本部長は「これからの航空輸送事業は、モノや人を運ぶだけでなく、需要から作っていかなければならない。47都道府県それぞれに社員を配置し、収穫の手伝いや酒米の栽培などを通じ、一次産業が抱える課題を学んできた。また地方移住や就農に関心がある人を対象にした短期農業研修にも取り組んできた」と述べて、コンソーシアムに参画している企業と連携することで、情報発信力が高まることに期待を寄せました。
また、ANAあきんどの池田暢也地域創生部長は、「後継者不足による耕作放棄地などの諸課題を解決するために、地域の農産物を加工した機内食の提供や、収穫体験ツアーなどの機会を通じて、交流人口・関係人口の拡大をめざし、地域の魅力を知ってもらいたい」と意気込みを語りました。
発足以来、ロールモデルは100人超!
会見では、今年2月のプロジェクト発足以来、ロールモデルとなる農業者が109人に達したことも明らかにされました。
ロールモデルとは、生産・出荷するだけの従来型の農家ではなく、農業をビジネスとしてとらえ、収益性の向上や6次産業化、地域創生など、それぞれの目標に向かってイキイキとしたライフスタイルをおくっている農業経営者のことです。
記者会見では、3人のロールモデル農業者が登場して、就農のきっかけやそれぞれが考える農業の魅力についてトークセッションを行いました。
このうち千葉県の香取岳彦さん(ベジLIFE!!)は、「僕の農園では参加者の世代にあった体験授業を行っていますが、例えば大学生には作物の袋詰めから、実際に売ってもらうまで体験していただきます。社会に出て進路を考える時、人生の選択肢のひとつに農業を思い出してほしいからです」と話していました。
また、埼玉県で食べられるバラを栽培する田中綾華さん(ROSE LABO)は、「農業界は60〜70代が中心で、40代はまだ子供、私たち20代は赤ちゃん扱いです。新規就農者のうち、女性は2割程度ですが、女性農業者がもっと増えてほしい。食べチョクの購買層を見ていても、購買の決定権は女性が握っていますから、私の会社では従業員の8割が女性です」と、女性の就農希望者にエールを送りました。
全国の若い農業者が中心になって組織する「農業青年クラブ(4Hクラブ)」の会長を歴任する石川県の米農家、竹本彰吾さん(たけもと農場)は、「新規就農と同時に、これから考えなければいけないのはあとつぎ問題。農家に生まれたことが罰ゲームのような状況は変えなければならない」と述べて、ファミリービジネスとしての農業は次世代につなぐ資産だと訴えました。
コンソーシアムでは今後、イベントやメディア、SNSでの発信を通じて、若者がロールモデル農業者の姿に触れる機会を増やしていくことで、次世代の担い手を創出するきっかけにつなげたいとしています。
■農業の魅力発信コンソーシアムの活動内容に関するホームページ https://yuime.jp/nmhconsortium/