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Editor's Eyes  異常気象や資材高騰を克服する救世主 「バイオスティミュラント」始めるなら今!(入門編)

Editor's Eyes  異常気象や資材高騰を克服する救世主 「バイオスティミュラント」始めるなら今!(入門編)

この秋、新たに始まる「Editor’s Eyes」では、今の農業が抱えるさまざまな課題の解決につながる知識や技術について取り上げていきます。
毎年のように苦しめられる異常気象や台風被害に加えて、肥料や資材費の高騰が深刻な今、異常気象に強く、施肥効果を高めることも期待できるとして、バイオスティミュラント(BS)資材に注目が集まっています。
皆さんのなかにも一度は耳にしたことはあるものの、農薬や肥料と何が違うのか?どういった働きをするかを正確に理解している人は少ないはず。
第1回の入門編は、なぜ今、BS資材が熱いのか ?日本バイオスティミュラント協議会の須藤修事務局長に伺いました。

・バイオスティミュラントとは何か?
・高温、長雨、日照不足…温暖化が植物のストレスを増大させる
・バイオスティミュラントは1種類じゃない


バイオスティミュラントとは何か?


バイオスティミュラント(以下BS)は直訳すると「生物刺激剤」を意味しますが、それだけではいまひとつピンとこないもの。 ヨーロッパを中心に、北米や中南米では、農作物や土壌に良い生理状態をもたらすとして、注目されている農業資材で、日本でも今後、市場の成長が期待されています。

2018年の「日本バイオスティミュラント協議会」発足をきっかけに、さまざまな企業や研究者が普及に向けて動き出していますが、BSという名称が一般的になる以前から、日本では似た働きをする資材が使われてきました。

その代表が、有機物を分解・発酵させて作る「ぼかし」。農家だけでなく、一般家庭でも、有用な微生物群を培養した 資材を野菜クズや生ゴミなどと混ぜて家庭菜園などに使っている人も少なくありません。

窒素、リン酸、カリウムを補給するため、米ヌカや油カスに加えて、家畜の糞や水産業で出る牡蠣殻や魚粉などを材料としますが、そのレシピや配合に一定の決まりはなく、農家の数だけぼかし肥料があると言われる所以(ゆえん)です

BS技術は発展途上中



土壌改良効果をもたらすぼかしは、有機・慣行にかかわらず、広く使われてきましたが、実はBSの一種です。「一種」と述べたのは、BSの定義はまだ曖昧なところがあり、種類も多岐にわたるうえ、体系だった学問が発展途上であることから、理解の普及が遅れているのです。

しかし、農林水産省が2019年に策定した「みどりの食料システム戦略」のなかで、BSについて「化学農薬の使用量低減に向けた革新的作物保護技術」のなかのひとつのイノベーションと位置付けており、2040年ごろからの普及に向けて、さまざまな技術開発を目指しています。

背景には、地球の温暖化や少子高齢化によって危ぶまれる食料生産体制の維持があげられます。くわえて、ロシアの軍事侵攻や急激に進む円安の影響で、輸入資材や肥料の価格が高騰する今こそ、限られた肥料で生産効率を最大限に上げるBSに期待が集まっているのです。

潜在的収量とその低下及びストレスの種類(模式図)
作物が遺伝的に持っている潜在的収量を100%とした場合、さまざまなストレスの影響で収量が減少する様子を示したグラフのイメージ

高温、長雨、日照不足…植物が受けるストレス



ここで、BSの本来の意味を振り返りましょう。作物の種子にはもともと遺伝的に収穫可能な最大量が組み込まれており、これを「潜在的収量」と呼びます。

しかし生育段階で病害虫の被害(生物的ストレス)や、極端な気温上昇や長雨などといった非生物的ストレスにさらされたりすると、作物は潜在的な能力を発揮できないまま、収量が減少してしまいます。

BSは、植物の代謝効率や光合成の能力を活性化させることで、本来持っている生理機能をより良くする効果が期待されている資材です。その結果、環境ストレスに強く、収量が増えて、色や形、食味などの品質が向上し、収穫後の状態や貯蔵性が良い作物生産に結びつくと考えられています。

注意したいのは、BSは農薬や肥料とは異なるものだということ。農薬は病気や害虫、雑草を防除するため、原因生物を取り除くのが目的ですから、即効性がある反面、環境への影響はもとより、使用期間が長くなれば、薬剤への抵抗性を持つ病害虫も現れます。

気象や自然環境が植物に影響するストレスに強くなる
バイオスティミュラントの役割は…

植物の体質改善をサポートするサプリ



一方、BSは人間にたとえるならば、サプリメントや健康食品と言ったところでしょうか。

農薬や化学肥料のような即効性はないものの、ふだんから取り入れることで、環境由来のストレスに対する抵抗力を養い、植物の体質改善をサポートしてくれます。高温や低温、長雨などへの耐性をつけた結果、例えば肥料の施用量を少なくしたり、農薬の使用回数を減らすなどの効果も期待されます。

地球温暖化によって、猛暑や長雨被害が相次ぎ、肥料代や資材費が高騰している今こそ、BS資材を取り入れる良い機会ではないでしょうか?

バイオスティミュラントは1種類にあらず



BSは、環境ストレスへの抵抗力をつけて、植物が本来持っている生理機能を刺激・活性化させることで、作物の品質や収量をアップさせる効果が期待できるとお話してきました。

先ほど、ぼかし肥料もBS資材の一種だと申したとおり、このほかにもさまざまな種類が展開するBS資材について、次の記事ではBS資材を取り入れるために、どんなことを注意すべきか、日本バイオスティミュラント協議会事務局長の須藤修さんに伺います。

須藤 修    日本バイオスティミュラント協議会 事務局長
2015年よりアリスタライフサイエンス株式会社に所属。本業ではバイオスティミュラント製品群の事業戦略立案に携わり、製品開発・マーケティング業務を遂行。2018年に日本バイオスティミュラント協議会の発足をリードし、以来事務局長の立場で協議会の運営にあたる。https://www.japanbsa.com/index.html

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