山形県酒田市で農場を営む株式会社はなはなの代表 阿部浩之さんはハウス80棟、露地15haもの広大な農場を経営しています。
阿部さんが子供の頃はぶどうや柿、イチゴなど果樹栽培がメインでしたが、先代である阿部さんの父の代から花き栽培にシフト。現在ではアルストロメリアなどの花きに加え、ミニトマトやサツマイモ、サトイモなどの野菜類の栽培やサクランボの生産にも取り組んでいます。
阿部さんは、12代続く農家の長男として生まれました。専門学校を卒業後、ホテル業を経験したのちに、家業である農業を継承することに。
「もともと家が農家だったので、将来的にいつか農業はやるんだろうな、という漠然とした思いはありました。でもせっかくやるなら楽しくやりたい、というのが私のモットー。今は高齢化や遊休農地の増加、資材高騰などの暗い話題が多い業界ですが、自分なりに工夫したり新情報を調べたりしながら、おもしろいことをやっていけたら」と語ります。実際阿部さんは家業に加え、農業の独立支援や地域の農業法人と連携して、農作業やアドバイザー業も行うなど勢力的に情報を収集、発信されています。
そんな阿部さんにとって、新たな資材との出会いが訪れます。令和5年の夏に経験した、異常気象による甚大な被害がきっかけでした。
記録的猛暑や少雨で土壌が砂漠のように
令和5年の7月中旬〜8月末にかけて、日本では100年に1度の猛暑と呼ばれる記録的な猛暑が続きました。全国の農家さん同様、阿部さんの経営する農場でも大きな被害が出たと当時を振り返ります。なんと、本来乾燥に強いはずのサツマイモの葉が枯れてしまったというのです。
「夏に目立って雨が降ったのは1回くらいしか記憶にないですね。土壌が砂漠のようになってしまったんです。サツマイモは私の父の代から栽培をしていますが、枯れるのは初めてのことでした」と阿部さんは昨今の異常な気象について話します。
阿部さんが経営する農場は、山形県酒田市の砂丘地。砂丘地栽培では、肥料が溜まらないため肥料設計がしやすいといったメリットがありつつも、そもそも保水性が悪く乾燥しやすいといった弱点もあり、少雨の影響度は甚大。
「通常雨が降れば均一に土の底まで水が浸透します。でも猛暑日にスプリンクラーを2時間連続で稼働し、土壌に水を与えても、表土から5センチ程度しか濡れませんでした。これでは作物に十分な水分を与えられず、地温の上昇や極度な乾燥の原因になってしまいます。作物が育たないわけです」と阿部さん。
土壌の水分保持量アップへ。EFポリマーとの出会い
猛暑による被害に頭を抱えていたところ、阿部さんは、みらい承継農業株式会社代表の伊藤高雄氏からEFポリマーという資材があることを耳にしました。
水分を吸うとゼリー状に膨らむというこの粉末状のポリマーを使用すると、
「土壌の水分保持量が格段に上がる」
「水がない場所でも事前に散布すれば雨水を貯めてくれる」効果があることを知ります。
そもそもEFポリマーの創業者は、干害が深刻なインドの農村地の出身。作物が育ちにくい乾燥地で、苦労をしながら農作業をする両親や近隣の人々の姿から、水不足に悩む課題を解決したい、と誕生した製品です。であればこの砂漠化した農地にも効果があるかもしれない、と阿部さんは自身の農場に取り入れてみることに。
(インドの乾燥地帯での実験の様子)
EFポリマーは土に混ぜ込むことで、農作物の生育に適した吸水力(自重の約50倍の保水力)を吸収し、長時間土壌に留めることが可能。これにより土壌の保水力と保肥力が向上し、乾燥による被害を食い止める効果が期待されています。
また、土壌の中の肥料を根の周りに保持する役割も果たすため、近年資材の高騰で苦しむ農家さんにとって減肥、コスト削減、という大きなメリットも見えてきます。
さらに環境に配慮した原料にも注目。
土壌内で分解されずマイクロプラスチック化してしまう石油由来の吸水性ポリマーと異なり、オレンジの皮などの作物残渣が原料で100%オーガニック、有機JAS資材リストにも登録されています。ゆえに、完全分解性を有しているので、約1年で生分解性され自然に循環、環境負荷も大幅に軽減されます。
干ばつとはどこか無縁であるように感じていた日本でも近年、山形をはじめ北海道や新潟などの地域でも異常な猛暑や少雨の影響が深刻な問題になっています。
保水性・保肥力向上に加え、ポリマーが吸水と放出を繰り返すことで土壌の団粒構造の発達を促し、根張りや根の活着、作物の水ストレス耐性向上にも期待できる自然に優しい資材が今注目されています。
ハウス内で量を変えながら試験的な導入を開始
さっそく阿部さんは、2024年3月に自社で営むハウス内でEFポリマーを散布しました。現在は10棟のハウスそれぞれで、EFポリマーの量を変えながら試験的な導入を行っているそうです。
「まずはハウス内で試験的に散布しています。栽培する場所ごとにEFポリマーの量を変えて、どんな違いが出るかをこれから確認していきます。ハウスは露地栽培とは異なり、気象条件に左右されないため、ポリマーの効果が確認しやすいと思いますね」と阿部さん。
まだ散布して日が浅いため、明確な効果についてはこれからとしつつも、保水性の向上に大きな期待を寄せていました。
肥料の保持力アップで作業効率が向上する可能性
EFポリマーを通じて今後期待することを伺ったところ、保水性に加え、肥料の保持力にも高い期待を寄せていた阿部さん。
作物の栽培では、元肥、追肥と複数回に分けて肥料を与えますが、ポリマーを使用することで、肥料を与える量や頻度の削減に繋がる可能性があるのでは、と新たな可能性にも期待しているようです。
「今回の実験では、肥料持ちにも注目しています。土壌の水分をポリマーが吸収するのであれば、肥料分をEFポリマーに混ぜて使用すれば面白い結果が出るかもしれませんね」と持ち前のアイディアで製品の可能性を引き出します。
「追肥は大がかりな作業です。高齢化で働き手も少なくなっていますし、追肥の手間が省けるようになれば、我々農家にとって大きなメリットになりますよね。また、保水性が向上することで、育苗時の水やり作業の回数も低減されるかもしれません」と、作業効率面での負担も減らせることが判明すれば、商品の大きなポイントになるのでは、と話します。
肥料の量が減ることで、栽培時のコスト削減にも期待
EFポリマーの推奨使用量は、10aあたり2〜5キロ程度。
既存の資材と混合して散布できるほか、散布量が少ないため、既存の資材と混合して散布できます。また、自然由来の資材であるため、低コストで導入可能です。
「土壌改良剤は大きなコストがかかるものも多い中、EFポリマーは比較的安価なので、砂丘地栽培での保険として散布しておく、という考え方も今後はアリかもしれません。肥料持ちが良くなれば、使う肥料の量が減り、さらにコスト削減に繋がるかもしれません」と、日本の農業が抱えるコスト面での課題が改善される可能性も示唆します。
農業の課題を解決する希望に
異常気象や従事者の高齢化など深刻な課題を抱える日本の農業の切り札となるのか!?
土壌の保水力、保肥力、作業効率の向上や栽培コストの削減など、日本の農業が抱える課題解決策の1つとして期待されるEFポリマー。
「少雨や猛暑による水不足の備えをしておきたい」、「土壌改良資材は高価で生産コストが合わない」、「追肥や水やりの手間を省きたい」等の悩みをお持ちの方は、備えの1つとして、EFポリマーの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
【問い合わせ先】
EF Polymer 株式会社
・ウェブサイト
https://bit.ly/44lZAtN
・公式オンラインストア
https://bit.ly/3Wp8Uet