フィードを⾃分好みにする

1
2
3
4
5
6
menu
Pull to refresh
2021.07.10

どうする?農家のあとつぎ問題「事業承継はリレーのバトンパス」に学ぼう!

どうする?農家のあとつぎ問題「事業承継はリレーのバトンパス」に学ぼう!

農業に今、変革の波が押し寄せています。働き手不足や高齢化で、農業を続けるか迷う農家が多い一方、従来のように親から子へ引き継ぐのではなく、後継者を見つける動きも出てきています。水稲農家のあとつぎで、農業界初の事業承継士となった伊東悠太郎さんは事業承継をリレーのバトンパスや相撲の仕切りにたとえて説明してくれました!



ポイント
・事業承継は無限のバトンパス
・成功するか否かはタイミング次第
・呼吸を合わせるためのサポート役とは?



事業承継に一番よくたとえられるのは、「リレーのバトンパス」です。読者のあなたは、新規就農者の方ですか? では第1走者ですね。あるいは代々続く農家の○代目ですか? だとすると第○走者ですね。これからお伝えする内容は、ご自分の立場に置き換えて読んでみてください。



無限のバトンパス



あなたは今、バトンを渡す立場でしょうか? 貰う立場でしょうか?


いずれにしても次の走者がいないとリレーは成り立ちません。……だとすると、バトンを渡す人と貰う人のふたりがいれば良いと考えがちですが、バトンを貰った人は、その瞬間からバトンを渡す人に変わるわけですから、さらに次の走者を見つけておく必要があります。事業を続ける限り、「バトンパスは無限に続く」のです。



バトンゾーン、あるかないかで大違い



事業承継は、経営者と後継者が、一定期間にわたって一緒に取り組みながら進めていくことが重要です。いわゆる並走・伴走期間にさまざまなことを「見て」「聞いて」「考えること」が大事です。


バトンを受け渡す区間が長いと、並走・伴走時間はたっぷりとれますが、トップスピードにのって走っていると、バトンパス(承継)する最適なタイミングをいつにすべきかわからなくなるデメリットがあります。


一方でバトン・ゾーンが短いと、十分スピードに乗らないまま加速途中でバトンを貰うことになり、良い記録が出せません。並走・伴走期間の長さも、それぞれの経営体で考えて設定する必要があります。


また、先代が突然病気になったり、死亡した場合の事業承継は、バトン・ゾーンが無いため、後続者はウォーミングアップも加速もないまま走り出すことになりますから、非常に大変な思いをすることになります。前回の連載でお伝えしたように、事業承継の計画づくり(バトンパスの練習)は早めにスタートしておくべきなのです。



バトンを奪いとる気持ちも必要



バトンを持っているということは、良くも悪くもその人に主導権・決定権があるということです。


あらかじめ「このタイミングで渡すよ」と決めていても、実際にその人がそのときに渡すかどうかは、その人にしか決められません。


事業承継は「バトンを渡す人次第」と言ってしまえばそれまでですが、だからこそバトンを貰う側の後継者も、受け身で待っているだけではなく、「奪い取る」感覚で積極的に働きかけていくことも必要です。


一人ひとりの能力が高くなくても、バトンパスのやり方で成功する


ポテンシャルが低くても勝てる



100メートルを9秒台で走る俊足ランナー4人と、それより劣る10秒台の選手4人が勝負した場合、理屈で言えば前者が勝つのですが、どうしたわけだか後者が勝つことがあります。


この違いはなぜか? 答えはバトンパスが「スムーズ」だからという理由に尽きます。


個々の能力は劣っていても低くても、バトンパスの技術が優れていて、タイミング良く渡すことができれば、勝てるチャンスがあるのです。


リレーで優勝するためには、100メートル8秒台で走れるよう努力することばかりに目が向きがちですが、バトンパスを経営課題だと認識して取り組むことで、10秒台でも十分勝つことができるのです。



バトンパスで後ろは振り向くな!



リレー競技を見ていると、バトンパスの際、貰う人は背後を見ずに手だけを出して助走していることに気づきます。


すると、そこに完璧なタイミングでバトンが手渡されます。バトンを手にした走者は加速したまま走り出せます。このとき、バトンを渡す人と貰う人との間には、強固な信頼関係が結ばれています。


……というような話を以前、ある県の普及指導員と話をしていたら、「日本代表の選手は、アンダーハンドパスだから、渡す人が下からそっと優しく渡してあげるのも、勝てる理由のひとつかもしれないね」と分析していました。


事業承継は、相撲の仕切りから立ち会いの流れにも似ている


相撲の仕切りにも似ている



事業承継を別の角度からたとえると、「相撲の仕切り」にも似ていると思います。


制限時間の間に、東方と西方の両力士が構え、お互いの呼吸が「今だ!」と合った瞬間に立ち会いが始まります。リレーのように「よーい、ドン!」と合図があるわけではありません。これを言語化するのは難しいのですが、対決する力士同士の「空気感」で決まります。


相撲の仕切りの呼吸は、先代経営者と後継者の間にある表現し難い「空気感」に似ていると思います。どちらか一方がやる気になってもだめで、双方が今だ! とならないと成立しません。


行司の役割にも注目です。もしも、力士ふたりだったら、仕切りは成立するのでしょうか? 行司が「はっけよい」「待ったなし、時間です」と声を掛けることで、力士同士が呼吸を合わせやすくなるはず。これが事業承継になると、行司の役割は、「支援者や支援機関」になると言えます。



事業承継は人生そのもの



事業承継は、経営者にとっても、後継者にとっても、あるいはその家族にとっても、それぞれの人生をかけた大きな決断・取り組みになります。


事業承継を考えることは、人生を考えることです。簡単に結論が出るものでもないでしょうし、考えや思いが交錯し、いろいろぶつかることもあると思います。


それでも大事なのは、自分たちの未来を考えるという大きなゴールについて、みんなで意識を共有することかなと思います。時間がかかっても、最終的にみんなが納得して進めるような事業承継の取り組みをめざしたいものです。


提供:井関農機

伊東悠太郎(いとう・ゆうたろう)/水稲種子農家、農業界の役に立ちたい代表◎JA全農で事業承継支援を立ち上げて、事業承継ブックを発行。農業界初の事業承継士を取得し、全国で講演や研修を行う。現在は退職し、実家を継ぎ、本業の農業を続けながら、事業承継の啓発、研修、講演、執筆等を行っている。※事業承継ブックはJA全農のホームページでも内容を公開。現物は最寄りのJAへお問い合わせ下さい。

Loading...