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2021.07.10

6次産業化のプロに聞く!成功への道〜「加工」ではなく「付加価値」をつけるべし

6次産業化のプロに聞く!成功への道〜「加工」ではなく「付加価値」をつけるべし

ここ数年で耳にするようになった農業の「6次産業化」。当たり前のように使っているけれど、6次産業化についてあらためて聞かれた場合、きちんと答えられますか? そもそも成功しているのでしょうか? そんな疑問に、農業経営アドバイザーで、「6次産業化」のプロ、食農夢創の仲野真人さんがお答えします。


ポイント
・認定を受けると法律
・制度・資金面で優遇措置
・データで見る6次産業化
・「加工」ではなく「付加価値」




6次産業化」という言葉を聞いたことはありますか? 


農林水産業や食に携わっている人であれば聞いたことがあるかもしれません。


6次産業化とは何か?」と聞くと「生産者が収穫した際に発生した規格外の農産物をジャムやドレッシング等に加工すること」と答える人が多いように感じます。しかし、それは必ずしも正解ではありません。私はそれを改めて再定義し、「6次産業化2.0」を提唱したいと思っています。


そもそも「6次産業化」とは、地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律(六次産業化・地産地消法)のことで、20113月に施行(201012月に公布)されています。


つまり、法律では農林漁業者(1次産業)が加工(2次産業)、販売(3次産業)まで行う取り組みのことを「6次産業化(1×2×3次=6次産業化)」と定義しています。さらに「6次産業化」に取り組む農林漁業者は、農林水産大臣が定めた基本方針を踏まえて総合化事業に関する計画(総合化事業計画)を作成して農林水産大臣の認定を受けると法律・制度・資金面での支援措置を受けられるというメリットがあります。


そのような背景もあり、20113月に法律が施行されて9年半が経過して、「六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画」の認定件数は2,570件(令和21030日現在)にまで拡大しています。


データで見る「6次産業化」



ここで気になるのは「6次産業化」は成功しているのだろうか? という点です。


農林水産省が実施した「六次産業化・地産地消法に基づく認定事業者に対するフォローアップ調査結果(平成29年度)※1」によると、「認定申請時と比較した新商品の売上高の増減」については74.1%が「増加した」と回答しています。これだけ見ると6次産業化は成功しているように感じるかもしれません。


一方、「認定申請時と比較した売上高経常利益率の増減」については45.8%が「減少した」と回答しています。つまり、約半分の農林漁業者は6次産業化に取り組む前と比較して売上に対する儲けの割合(経常利益率)が減っているのです。


この数字を見てどう感じますか?さらにこの内容について深掘りしてみましょう。




経常利益率が減少している理由として半数以上が「経費の増加」と回答し、その内訳は

  1. 設備投資や機械導入に伴う減価償却費の増加
  2. 事業の拡大等における生産施設等の改修費の増加
  3. 従業員を増やしたことによる人件費の増加

と続いています。


つまり、これまで生産しか取り組んでいなかった農林漁業者が新商品を製造するためには、新たに加工設備を整備しなければならないし、加工・販売するために人員を新たに雇用しなければならない。結果的に、6次産業化に取り組む前よりも利益が減ってしまっているのです。利益が減っただけならまだ良いですが、実際には加工に取り組んだことで赤字になった、加工場を整備したのに今は稼働しておらず、結果借金だけ残ったという現場の声も多く聞いています。



産直も、6次産業化



では、「6次産業化」は失敗だったのでしょうか?


私はそう思いません。そもそも「6次産業化」の提唱者である東京大学名誉教授の故今村奈良臣氏は、「農林漁業者(第1次生産者)が生産だけでなく、加工・流通・販売等を統合的に取り扱うことで事業の付加価値を高める経営形態」が「6次産業化」であると言っています。

この「事業の付加価値を高める」ということが重要なポイントです。例えば生鮮品だけで考えても、農林漁業者が従来のJAを通した市場流通から契約栽培に切り替えて直接スーパーと取引(1×2次)をする、直売所や道の駅に持ち込んで地元の消費者へ販売する(1×3次)、「ポケマル」「食べチョク」などといったECサイトを活用して全国の消費者へ直接販売する(1×3次)といった取り組みは「加工(2次)」に取り組んでいませんが、私はこのような生鮮での販売についても立派な「6次産業化」であると考えています。



なぜなら、これまでJAを通して市場へ販売していた農林漁業者が、直接企業や消費者へ販売することで市場に出荷していた価格よりも高い価格で販売することができて農林漁業者の所得が向上もしくは経営が改善されていれば「事業の付加価値」は高まっていると言えるからです。つまり「事業の付加価値を高める」ということは、「既存のビジネスモデルからの変革」に挑戦するということなのです。




つまり、「6次産業化」とは冒頭に述べたような「農林水産物を加工する」ことではなく「事業の付加価値を高める」ことであると改めて認識していただきたいのです。


そして、「事業の付加価値を高める」ために自分の栽培している農林水産物を「どのような販売先」に「どんな商品(生鮮なのか加工品なのか)」で販売するかをという農林水産物を軸とした一気通貫型のビジネスモデルを検討・実践することが求められているのです。


本連載では、皆さんにぜひ知っていただきたい、この「6次産業化2.0」の具体的な事例を紹介していきたいと思っています。



仲野真人(なかの・まさと)◎2005年立教大学経済学部卒業後、野村證券入社。2011年野村アグリプランニング&アドバイザリーに出向、6次産業化分野を中心に地産地消や農林水産物・食品の輸出に携わり、全国の事例を調査。2019年退社し、食農夢創を創業、代表取締役に就任。「農林漁業」を「夢」のある「食産業」へ「創造する」をビジョンに全国各地で調査・研修・イベント、コンサルティング業務を行う。(ポートレート撮影:平岩亨)

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